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落語に行ってきた~話芸の高みへ~

酔っぱらいにもいろんな人がいます。
天王寺に行けば、
駅には、朝から酔っぱらいがいます。

「ちょっと、お尋ねしますが、
今、空に照っている白い丸いんは、
お陽さんですか、それともお月さんですか?」
と尋ねたら、
その酔っぱらいのおっちゃん、
「いやあ、わたし、ここのもんと違うんで、知りまへん」
と答えたそうだ。

「ここのもん」じゃなかったらって、
あんた、どこのもんや?
宇宙人かと
漫才なら、つっこみたくなるところ。
これは、落語のマクラ(導入部)の一つ。

3月の終わりの日曜日、
名古屋から甥っ子たちが来たので、
おしゃべりな甥っ子の話術に磨きをかけようと
落語を聴きに、天満の繁盛亭へ行った。

昼席で、200人強の会場がほぼ満席。
昼1時から4時半近くまで、休憩20分ほどをはさんでの長丁場。
小学2年と6年の甥っ子たち、
前半は、隣り合って座っていたせいもあって、
じゃれあったりして、
他人様の迷惑になりかけたが、
なんとか、最後までおとなしく聴いてくれて、よかった。

落語も、ことわざや古い言葉をたくさん知っていないと
わからないと知った。

「糠に釘」を、だじゃれで「糠に首」と言って、話を展開させたり、
「かんてき」(七輪のこと)なんて言葉は、京阪地方の言葉らしいから、
子どもには、わからないだろう。

「鰹節」を鬼ごっこの鬼の角の代わりにして遊ぶから、
家から鰹節を2つ持っておいで、と言われても、
いまどきの子ども達は、「削り節」しか知らないから、
「鰹節」は、イメージできないだろう。

人力車で、「キタまで」と言ったら、
車屋の男は、力があり余っていて、超スピードで、
梅田を越えて箕面まで行ってしまったなんて話も、
地理感覚がないと、わかりにくい。

でも、会場中の人たちの笑いにつられて、
甥っ子達も、結構笑っていたから、ほっとした。

噺家さんの、汗だくになっての話芸、
いろんな表情に、
笑わずにはいられないという感じかもしれない。

落語に出てくるのは、たいてい、
あまり賢くなく、少しぼけてるけど、気のいい奴。
そういう愛すべき登場人物の、天然ぼけみたいなお話は
とても楽しく、大いに笑った。

ごまをするのに、台所から、
「すりこぎ」を取ってきてほしいと頼む。
でも、奴さんは、すりこぎがどんなものか知らない。
頼んだ男は、料理で手が離せないから、
おたまじゃくしや、さいばしや、いろいろ台所道具がかかっているところを見て、
「右」とか、「左」とか指図する。
でも、頼まれた男は、なかなか目的の「すりこぎ」を手に取ろうとせず、
違うものばっかり取ろうとする。
「わさび卸し」が好きなのか、
そればっかり取ろうとするから、
噺家は、汗だくで
「わっさびおろしと違う(ちゃう)」と
何十回叫んだろうか。
すごい汗だくになっていた。

子どもたちに受けがよかったのが、
ショッキングピンクの着物に、金髪の噺家の
暴力団が、経営難のために学習塾を開いた話。

英語の命令形の授業。
日本語訳がいちいち笑える。
「Run away 」は「ずらかれ」とか、
「Go to the office at once」は「事務所に顔出してこんかい」とか、
全部、やくざのような荒っぽい口調になっている。

かと思えば、夢路いとし・喜味こいしの
こいしさんの娘の喜味家たまごさんは、
木魚をチャカポコ叩きながら、
阿呆陀羅経(あほだら経)という上品な芸を披露してくれて、みとれた。

マクラで、気に入ったお話を一つご紹介したい。

「鶴の恩返し」という誰もが知っている昔話。

男が鶴を助けたあと、
美しい女が男の家を訪ねてくる。
女は、ふすまを開けないように頼んで、
隣の部屋にこもる。
ギッコンバッタンと音がしてくる。
男が不審に思って、ふすまを開けると、
女は、美しい織物を織りあげ、
鶴になって去っていったというお話。

バージョン1
男がふすまを開けると、
家財道具が一切なくなり、女もいなくなっていた。
これが、本当の「サギ(詐欺)」。

バージョン2
男が、ふすまを開けると
女が、作業着を着て家具を運び出していた。
「ペリカン」(便)

バージョン3
男が、ふすまを開けると、
女は、「川の流れのように」とカラオケを歌っていた。
「ひばり(美空ひばり)」
いや、「ひばり」なら、「不死鳥」か。

目の前には、一人の噺家さんしかいないのに、
二人の男が、ぼけとつっこみと、
生き生きと、やりとりしているのが、みえるようだ。

パンと勢いよく扇子で机を叩けば、
時間も場所も、一気に変わる。

落語って、まさに芸術だと、圧倒された3時間だった。

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