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No132「七人の弔い」ダンカン監督

ファーストシーン。
緑美しい田んぼの横の線路を列車がこちらに向かって近づいてくる。
小さな駅に降りたった親子連れ7組。
今度は、真っ白なバスに乗って、延々と山奥に連れられていく。
ダンカンのつくりだす映画の世界の奥底に連れられてゆくような導入部。

たけし軍団の個性派俳優ダンカンの初監督作品。
子どもの命と引き換えに大金を手にしようという親が夏のキャンプに参加する。
実は、子どもは皆、親から虐待を受けていた。
「七人の侍」をもじったタイトルだが、内容は如何・・。

ブラックユーモア。
気の弱い温水洋一、宗教に狂う有薗芳記、バクチに目がない渡辺いっけいと
親を演じる役者が、個性的で、存在感がある。
子どもを虐待する親は、皆、こんなふうに平然と、普通な顔をして、かげで子どもを殴っているのだろうか。

親たちの行動が、人の命を守るためでなく、
金のためで、欲望にまかせているところが、滑稽で、愚かしく、笑いを誘う。

転落した子ども2人を助けようと
気の弱いサラリーマン役の山崎一が、子どもを背負い、ロープをつたって、岩をよじ登っていく。
背中で、なぞなそ好きの息子が
「会社がつぶれて、一番困っているのは家族の中のだれ?ヒントは僕が世界一好きな人」という問いを出す。
子どもの能天気さと危機的状況とが対照的で、ぐっと踏ん張る足に、緊張感が漲る。
ふっと伸びてくるもの。
このシーンの迫力はみごとだった。

しかし、全体としてみたとき、どこかインパクトに欠ける。
ラストのどんでん返しは、まさしくブラックユーモアだ。
しかし、どこかあっさりしすぎている。
もっとひねってほしかったし、ねばりがほしかった。
ダンカン演じる謎の指導者が無色無臭すぎるからか。

子どもを、いじめる親ほど、罪深いものはない。
そんなことを、山あいから帰っていくバスの光景をみながら考えた。
音楽の雰囲気が、少したけしの映画に似ているような気がする。

満足度 ★★★★(星10個で満点)
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