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No694『キートンのセブン・チャンス』~どこまで走る、我らがキートン!~

時代は遡って、サイレント1925年。
キートンといえば、
30年位前、NHKテレビの午後9時台に15分程度の短篇で
ロイドやらキートンやらいろいろ放映していたのを思い出す。
ちょっとみては、くつくつ笑っていた。

今回のは1時間近くの長編。
クライマックス。
百人以上の花嫁候補者に追いかけられるキートン。
走って、走って、逃げまくる!
だって、彼には、大切な恋人メアリーがいるのだから。

27歳の誕生日の午後7時までに結婚すれば、
祖父の遺産が舞い込むことになったキートン。
それを知ったのが、なんと誕生日の当日!
刻限まで12時間もない。
もちろんメアリーに告白。

ところが、「7時までに誰かと結婚すればいいんだ」と
つい「someone」と言ってしまったばかりに、
誤解が生まれる。
「誰とでも結婚すればいいわけじゃないんだ」(anyone)
とうだうだと言い訳しても、後のまつり。
傷ついたメアリーに断わられてしまう。
ここでも、字幕に、「some」と「any」のところに
いちいち下線が入ったりして、笑える。

困ったキートンは、
この際、誰でもいい、と街で会う女性に手当たり次第
「結婚してくれませんか?」と声をかけるが、
いきなり言われて、訳もわからずうなずく女性がいるはずもない。
このキートンの無鉄砲ぶりがまた笑える。

とうとう、遺産付きの話で花嫁募集の新聞広告を載せると、
今度は、集合場所の教会に、
来るわ、来るわで、入りきれないほどの
女たちがやってくる。

最前列で、横になって寝ていたキートンをよそに、
花嫁衣裳(といっても、軽くドレスを着た程度で様々。
でも、皆わりとベールをしていたような)
を着飾った、若い女性から、年増のおばさままで、いっぱい。

キートンをみつけたおばさまが、隣に座って色目を使う。
途端に、おっかなびっくり逃げ出すキートン。
人の合間をかいくぐったり、逃げ足の速さはピカイチ。
でも、追いかける花嫁軍団もすごい勢いで
しつこさは尋常を越えている。

何十人もで路面電車をのっとって、
運転手まで追い出し、自ら運転して追跡するたくましさ。
道に投げ出された運転手は尻もちついて、ただ呆然。

あるいは、工場に逃げこんだキートン。
クレーンにぶらさがって、宙に上がっていく。
「逃げたもんね~」と思いきや
花嫁たちは、今度は、クレーンを動かす運転室をのっとり、
自ら、クレーンを操作する。
その挙句に、間違えて変な場所に“愛する貴公子”を落っことしてしまい、
そこに特急列車が通過…!!
画面に「We have killed him!」(私達、彼を殺しちゃったのね!?)
みたいな字幕が出る。(曖昧な記憶で文章に自信ないです)
ショックで、落ち込んで工場を出て行こうとする花嫁たちの前に
運よく助かって、すたすた元気に歩いていくキートンが通りすがる。
再び、追跡劇の再開、

てな感じで、これがとってもおもしろい。
ああ、書いてるこちらも、キートンの走りが移って、止まらない!

圧巻は、キートンが山越え、谷越えじゃないが、
街を離れて、どんどん山の方へ入っていく場面。
荒地のような、広っぱみたいなところも、どんどん横切っていく。
走る速度は落ちず、歩幅も広いまま、走る、走る…、
小さな谷なんかは、スコーンと思い切り跳んで着地。

下り坂の斜面になったら、
駆け下りていくのだけれど、
大きな岩やら石やらが、次々とキートンを追いかけるようにして
上の方からころがってくる。
それをよけて、よけて、よけて…、

木に登れば、そのうち大きな岩がぶつかって、
根元から木が折れて倒れる始末。
大きな岩の下に隠れても、
どんどん岩が溜まっていって、とうとう崩れだすと
やることなすこと、みなうまくいかない。

やっと降りてきたと思ったら、
花嫁たちが先回りして、待ち構えている。
上からは岩が落ちてきて、
進むか戻るか、迷えるキートンの顔も真剣そのもの。

いやあ、こんな大傑作があったのですね。
劇場では、若い女性がきゃっきゃっと楽しそうにずっと笑っていて
場内に笑い声があふれていた。

上映は、神戸市新長田にある、神戸映画資料館。
珍しいフィルムの上映が多く、要チェックです。
3月12,13日には
淀川長治さんの独演会のライブ映像の上映や
チャップリンの特集上映もあります!
淀川さんの声が聞きたい!
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