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No566-2『座頭市 THE LAST』~全感覚を研ぎ澄ませて~

あの感動をもう一度と、確かめに行ってきました。
音だけでなく、雪もすばらしかった。

冒頭、市の激しい息遣いが聞こえる。
追手と激しく斬りあう市は、
夫婦約束をした女の命を奪われてしまう。
水が流れる音が聞こえる。

このせせらぎの音は、倍賞千恵子との別れの場面や
要所要所で聞こえてくるのに、再見して気がついた。

愛する女をなくし、行き場のない市を
激しい雨が襲う。

そして雪。
寺島進が斬られる場面でちらついていた雪は
いつしか激しくなり、
寺島の女房、工藤夕貴が泣きくれる上に
雪が激しく舞い散る。

市が、原田芳雄演じる医者の家を出る頃には、
雪も本降りになっていて
横殴りの雪が市の横面を襲う。
「弱い者を許してやってくれ」と医者の声が響く。

嘆願状を抱いてのの道行では、
朝日に輝くような雪景色。
クライマックスの殺陣が展開。

豊原功補との果し合いで、再び小雪が舞っている。

そして、命尽き果てた市の耳に聞こえるのは、波の音。
市が差し出した腕の向こうの砂浜に千鳥が止まる。

映画って、聴覚も視覚もそばだてて
全身で感じ取るものだと、あらためて思った。

市の言葉の一つひとつにも、魂が込められているように感じられ、
キネマ旬報6月上旬号での山根貞男さんの香取慎吾くんへの
ロングインタビューで
市が「すいやせん」という言葉を何度も繰り返すが、
ひとつひとつを噛みしめるようにしゃべっていたとの香取くんの
言葉も納得。

光、影、音、舞台美術、役者、演出、殺陣と
こんなすごい総合芸術について、どんな言葉でその魅力を伝えうるのか、
無力感にとらわれるばかりですが、
これこそ、スクリーンで五感を研ぎ澄ませて観るしかない映画です。
せせらぎの音、ちらつく雪、市の息遣いを全身で感じてください。

と、こんな凄い映画なのに、布施では観客2人でした。
私が上映の3分前に劇場に入ったら、
唯一の客だった若い女性客が笑顔で迎えてくれて
思わず知り合い?と思いそうになったほど。
実は、客が1人じゃなかったことに安堵されての笑顔と
後になって気付きました。

さて、この布施のラインシネマでは、客の入りなんてともかく
いい映画はきっちり上映するとの心意気で
7月9日(金)まで夜7時15分からの上映が予定されています。
大手シネコンが、日々の客の入りをうかがい、
1週間の予定をぎりぎりまで公表しないのとはえらい違いです。

今日気付いたのですが、九条のヌーヴォからでも、阪神近鉄線に乗れば
1本で布施まで行けます。駅からも近いです。
回転寿司の元祖、元録寿司の本店もありますし
遠方といわず、ぜひ、まだ未見の方、ご覧くださいませ。
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