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No895『騎手物語』~バルネット、万歳!ただもう拍手喝采~

土曜日から十三の七芸で始まった
旧ソビエトのボリス・バルネット監督特集!
昨日は、不覚にも一日寝倒してしまったが、
今日はやっとかろうじて昼過ぎからの上映の2本目に滑り込むことができた。

キャラのおもしろさからいってもダントツ。
省略の具合といい、話術といい、
ニワトリの鳴き声からして楽しいし、音の使い方もみごと。
競馬シーンでの音楽の盛り上げ方もうまく、わくわくしてくる。

スクリーンの中だけでなく、
スクリーンに映っている画面の外から聞こえる音、
スクリーンに映っていないけど、想像する情景、
あえて省略して描いていない情景と
こちらの想像力を、めいっぱい刺激してくれる。
これぞ映画らしい映画よ!と満面の笑みでお薦めしたい。

競馬場で、少女マリヤを一人残して
食い逃げしてしまう2人組の紳士風の男達からして憎めないキャラで
彼らに食事を運ぶ給仕も、いつも双眼鏡をポケットにしのばせていたり
ユニークな面々ばかり。

太った女医さんが最高で
田舎に似合わない高級自動車を運転するものの
まっすぐ運転できず、ちょっと進んではあちこちでぶつかって、
皆に引き上げてもらってばかり。
最初は、ロングで撮ったりしつつ、
最後は、音だけで想像させるうまさ。
このおばさん、トラブルを起こしてばかりの車に腹をたてて
道端の柵に座り込んでいるときの、むっとした表情からして、
どこかユーモアがあり、
ちょっといじわるなおばさんなのかなと思いきや
肝心なところでは、
とっても粋なセリフを残して、
歩いてすたすたと帰っていく。
そのうしろ姿のなんと粋なこと。

クライマックスは競馬場での疾走シーン。
繋駕(けいが)といって、一人乗りの2輪馬車を馬が引っ張って走るレース。
それを騎手の正面から撮ったり、横から撮ったり。
正面から撮った時の、白ジャンのおっちゃん、黒ジャンに黒眼鏡のおっちゃんと
どちらも淡々とした表情がおもしろいし、
横から撮った時の長回しといったら、尋常じゃない長さ。
応援する馬が速度を上げて、ぐんぐん他の馬を追い抜いていくかと思いきや、
今度はすうっとスピードを落とし、次々と抜かれていくのを
ワンショットでずっと横から追っかけるカメラのすごさには
息をのんだ。
なかでも、
撮影カメラを車体の上に載せた車の影が、
画面に映りこむ瞬間が数秒あって、これまた涙が出そうに感動的で
一層ボルテージが上ってしまった。

何頭もの馬が川で水浴びしている美しさ、
主人公のマリアが、いきなり高いところから飛び降りるという
奇想天外な登場の仕方をしたり、
カメラが真下を見下ろすショットのあまりに高くて怖いこと。
ホテルの回転ドアも最後まで活躍するし、
話し出したら止まらないほどの魅力たっぷりの快作。

馬もニワトリも大活躍の大興奮、
大感動の渦に巻き込まれること間違いなしの大傑作。

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
はじめまして (すかあふえいす)
2016-11-12 06:42:26
どうもはじめまして。おはようございます。
私もこの映画の素晴らしさに胸を打たれ、ネットで情報を探していたら貴方様のブログにたどり着いたしだいです。

もう本当に凄いとしか言いようがない馬、馬、馬のスピードと言ったら…!
 
 
 
そんなわけで (すかあふえいす)
2016-11-12 07:14:23
ぜひともTBさせてください!!
 
 
 
すかあふえいすさま (パラパラ)
2016-11-13 00:47:19
はじめまして。コメント&TBありがとうございます。
TB、リンクフリーですので、お気軽に。
地球の片隅でひっそり書いてるブログなので、見つけて読んでくださり、ありがとうございます!

記事、読ませていただきました。ずいぶん前に観た映画なのに、読みながら、楽しさがよみがえってきて、映画をみながら大興奮したのを思い出しました。ほんとすごい映画でしたね。馬はもちろん、映画全体にスピード感があるというか、テンポがよくて、疾走感があったように思います。
こちらもTBさせてください!よろしくお願いします。
 
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