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No609『フレンチ・カンカン』~若い娘たちを舞台に送り出すギャバンの渋さ~

今日は夏休みをもらって京都駅ビルでの
フランス映画祭に行ってきた。
朝、大阪駅の新快速に乗り遅れ、
『獅子座』に遅れファーストシーンを見逃した。
でも、遅れても観てよかった。
主人公の40歳過ぎの男が路頭に迷い、
ひたすら夏のパリを歩き回る。
空腹に耐えかねて、食べ物を盗もうとしたり
川に浮いている菓子の袋を拾おうとしたり、
絶望に打ちひしがれるのだが
そんな彼を心配して声をかけてくれたのは、
同じ浮浪者の男で、
友達ができるというのは、なんだかすてきだった。

ジャン・ルノワール監督の『フレンチ・カンカン』では
最後の、舞台も客席も混然となって
劇場中を駆け回っての
娘たちのカンカン踊りに、もう涙。

劇場主のジャン・ギャバンと恋に落ちた
踊りの主役のニニが、
本番の直前に、ギャバンが歌手の女性と浮気していたことを知り、
もう舞台には出ないと控室に閉じこもってしまう。

ニニの母親がきて、やっと部屋から出てきた彼女は
「じゃあ、わたしだけの恋人になって」とギャバンに言う。
「俺に君のカナリアになれ、というのか。3日も続かないぞ」
「俺が説得しようとしているのは、
一緒にやる仲間を失うのがさびしいからだし
何より観客が待っているんだ」
というようなことを言って、全員舞台の方へ行ってしまう。
ニニも、耐え切れず「私、出るわ」と言って、
友達が持ってきてくれた衣装で支度。
(セリフは、私のかなり曖昧な記憶なのでご容赦)

だから本番、
ギャバンが控室のある舞台の裏手で、
椅子に座って、舞台から聞こえてくる音楽を聞きながら
足でリズムをとっていたりしている様子と
舞台で、一生懸命、嬉しそうに笑顔で踊る踊子たちの様子とを
カットバックで交互に映し出すのには、
もう涙であった。

彼女たちを育て、舞台の上で観客と出会わせようとするギャバンの思いが
今、まさに舞台上に結実し、
若い彼女達のエネルギーがはじける!
その幸せな一瞬、世界に、私たち観客も居合わせている感じだ。

ニニも踊りの女の子たちも、本当に皆生き生きしていて
ダンスが大好きで、すごくすてきな笑顔ばかり。
ギャバンの「送り出す」側の気持ちに
どこか共感して涙腺が緩んだ。

そういえば、このエネルギーに満ちあふれた場面は
石井輝男の世界にも、ある意味で共通するのでは、と思ったり。

音楽も運動会の駆けっことかでよく流れる
「天国と地獄」の「地獄のギャロップ」
(ドー、レファミレ、ソ、ソ、ソラミファ・・・)
又は(ターン、タカタカ、タンタン、タカタカ)といえば、わかるでしょうか。
あの曲が
フレンチ・カンカンでも盛大に使われていたが、
この曲、つい最近、誰かの映画で聞いたような気がして思い出せない。
石井輝男の映画のような気がするのだけれど…。
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