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No610『カラフル』~さりげない家族の描写に深い魅力が…~

映画と映画の出会いについて考える。
そのとき、たまたま偶然、同時期に観た映画が
どこかテーマが似てたり、ってことありませんか。

E・ロメール監督の『獅子座』の浮浪者同志の友情。
ワインの瓶をがぶ飲みしながら、
友達の浮浪者のじいさんと一緒にふらふらと
街を歩いていく主人公は
なんかふっきれていて、よかった。
おっと、じいさんなんて、失礼、おっちゃんくらいなんですが、
この人が、物乞いのために披露する歌がまた絶品で驚いた。
自由でのびのびしていて、
最後は、このおっちゃんが、
去ってしまった主人公がきっと約束を守って
会いに来てくれるはずと叫ぶシーンで終わっていた。

『カラフル』は日本のアニメ映画で、監督は原恵一。
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』と
傑作を撮ってきた監督。

『カラフル』もまた友情の映画。
人間皆、いいところもあれば、
悪いところもいっぱい持っている。
でも、それでいい、そのままでいい、
自己嫌悪して、投げやりになっちゃいけない、
カラフルのままでいいんだ、
とテーマを言葉にして言ってしまうところは
少しストレートすぎる気がした。
あちこち魅かれるシーンはたくさんあって、
好きなんだけど
少しもの足りない気もしていた。

ところが、
観終わって、日常に戻ってから、何か気になる。
ずっと頭の後の方に残っている気がして、考えていた。

主人公の中学生の小林真(正確には、真の体に入り込んだ「ぼく」)
母、父、兄と、家族の表情がすごくよかったのだ。
なんだかすごくリアルで、心に残っている。

自分で映画もつくっている映画友達が、
冒頭の死者たちの足取りがすばらしいと指摘されていたが
さすが、そのとおりなのだ。
主人公が家に帰ってきて廊下を歩いたり、階段をのぼったり、
食べたり、そういう日常の仕草が
とてもリアルで、母親のものうい感じとか
表情、動きの感じが、心に残っている。
動きや言葉の余韻というのだろうか。

母が、父が、兄が、それぞれに弟を思い、
父が母を気遣う。
そういう家族としてのつながり、優しさが
しんしんと伝わってきて、
真と父との釣りのシーンや、帰りのラーメンや、
家族で鍋を囲むところで、
初めてやっと真が自分の思いを言える姿が
なんだかいいなあと思う。

真にとって、初めてできた友達の早乙女君。
二人が橋の側道の坂道を自転車を競争する、
(『キッズ・リターン』では二人乗りでした)
そんなどこにでもありそうな、でも、
なかなかなさそうな、友情と青春がきらめくすてきな瞬間、
真の表情も動きも、それまでと違う、
すごく生き生きしていて、なんだかいいのだ。

ラストをほとんど予想できなかった鈍い私では
なかなかうまく言葉にできないが、
ぜひご自分の目で確かめてみてください。

大阪弁のプラプラも、
なんか気になる、心魅かれるキャラクターなのだ。
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コメント
 
 
 
原監督は (ケンシロウ)
2010-09-04 09:40:40
オトナ帝国以前にも傑作映画いっぱい撮ってます。暗黒タマタマとか電撃ブタのヒズメとか全て大傑作です。
 
 
 
ケンシロウさん (ぱらぱら)
2010-09-04 10:35:45
ヒズメ、電撃ブタと、そこまで追いかけきれてませんでしたが、やはり、すごい人なんですね。
オトナ帝国は、ビデオで初めて観て、塔(?)のてっぺんで、しんちゃんのセリフがあんなに胸に迫ってくるのは、言葉と映像(絵)とをどう組み立ててるのか、思わず何度も再生した覚えがあります。
そういう構成力って、漫画の書き割り(角度、アップの度合い、1頁の配分、セリフの分量)にもなんだか似ていますね。
 
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