清水宏監督の作品は、ロケーションが多いから、そこの空気、風を感じることが多い。
1950年。舞台は伊豆。電車の中で、画家(黒川弥太郎) が子どもの顔をスケッチしている絵から始まる。清水宏作品では、手紙や絵が重要な役割を果たしていることが多い。
描かれているのは、3人の子供の顔。続いて、少し離れた席で寝入っているおかあちゃん(清川虹子)。こどもがおかあちゃんといわず、おばちゃんだと画家さんに言う . . . 本文を読む
奈良の東大寺界隈を舞台にした1952年の作品。戦災孤児の少年たちが、観光ガイドをやって日銭を稼いでいる。お菓子の点数を集めて送った応募はがきに書いた自分の住所は「奈良市◇◇東大寺南大門 仁王様方 岩本豊太」親も住まいもない少年達の物語。
同じ戦災孤児で、お寺に拾ってもらい小坊主になった少年一雲から教えてもらった知識をもとに豊太たちが、観光案内をする姿から映画は始まる。(東大寺の扉が開門していくの . . . 本文を読む
小児麻痺の息子を持った父(宇野重吉)が、夜分、床で寝入った息子の足をさすりながら、妻に話す言葉「科学に限界はあっても、愛情に限界はない」
この映画ではもう一つ印象的な言葉があって「こどもは可愛いだけで、親孝行している」。やはり、親が子どもの寝顔をみながら言う。(今日観た清水宏監督『母の旅路』'58でも十代後半の娘の寝顔を見る母(三益愛子)に父(佐野周二)が口にしたセリフ)
長男有道(ゆうどう) . . . 本文を読む
寝っころがるシーンが好き。数年前に観て覚えていたのは、浮田(佐分利信)と三郎(近衛敏明)が二人とも、新米社員の朋子(木暮実千代)に魅かれていて、浮田は、親友の三郎から、想いを打ち明けられて、身を引く決心をする。そのとき眺めた空。失恋の空、それが私にとっての『暁の合唱』の記憶だった。
今回観て、たくさん発見した。1941年の作品。朋子は、天衣無縫で明るく前向きな少女。女子師範学校の試験を受けに田舎 . . . 本文を読む
のんびりした、軽快な作品にみえて、1937年という戦争直前の時代の空気、戦争の影は随所にあふれている。
そもそも行軍演習に赴く学生たちのロードムービーなのだから、戦争が題材になっているのは、当然。でも、そういう戦争の重々しさを忘れてしまいそうに、あの行軍のシーンは、さわやかでユーモアにあふれていて圧倒される。行軍演習中の学生たちは、田舎の集落で、あちこちに分宿する。夜が更けると、それぞれの家で宴 . . . 本文を読む
昼寝が大好きな学生の関(佐野周二)は、陸上の花形選手。ライバルの谷(笠智衆)からは、まじめに練習しろと怒られてばかり。関は「勝ちゃいいんだろ」と言って、競争して、勝てば、また昼寝と決め込む楽しさ。その傍らで、「俺たちゃ寝りゃいい」と言って、やっぱり昼寝をむさぼる学生服の二人は、おとぼけ者の森(日森新一)と太っちょの木村(近衛敏明)。セリフとアクションのとぼけた風味が満載で、大好きな作品。「敵は幾万 . . . 本文を読む
朝から晩までシネ・ヌーヴォで清水宏漬けの一日。節分には一日早い巻寿司を頬張りすぎて、昼過ぎ眠眠にもなったけど大満足。朝一番の『風の中の子供』1937年。すごくよかった。
通信簿に5が一つもないと言う小学1年生の三平。優しいお父さんは「子供のうちぐらいは、のびのびさせてやれ」と母に言う。
三平は、勉強が嫌いで、母に言われて、宿題をしようと座っていても、いつのまにか、机の前から姿を消して、外でター . . . 本文を読む
大阪府柏原市にある「修徳学院」が舞台。感化院、教護院を経て、今は児童自立支援施設という。非行や家庭環境等の理由で生活指導を要する子ども達が入所し、家庭(親)に代わって、専門員の夫婦と生活を共にする。子ども達の表情に釘づけになった。寝小便をして、布団を干したり、学校でささいなことで取っ組み合いの喧嘩をしたりと、いろんな子が描かれる群像劇。皆、無邪気で、はきはきしていて、さびしんぼでかわいい。実母に死 . . . 本文を読む
友達は皆、平気で、川にかかった丸太のような一本橋を走って渡っていくのに、主人公の少年は、怖くて渡れない。橋にはいつくばるようにして、四つ足になって渡っていく。
なんとか川は渡ったものの、皆は次々と木に登っていくのに、少年は登れない。上から落ちてきた、栗のいがが頭に当たって、わんわん泣いて帰ってくる。
清水宏監督がつくった短編映画。1941年。都会から養子でもらわれてきた少年秋雄が、木登りができ . . . 本文を読む
民謡「♪小原庄助さん 何で身上(しんしょう)潰した朝寝朝酒朝湯が大好きで それで身上つぶしたハア もっともだ もっともだ」の庄助さんを大河内伝次郎が演じる。牧歌的でユーモラスな世界の中に、限りなく哀切がこもっていて、胸が熱くなる。大きな樽からとくとくと酒が注がれ、「♪朝寝、朝酒、朝湯が大好きで」とあるとおり、朝ご飯のところから始まる。庄助さんは、格式ある地主の家に生まれ、人がいいから、村人たちから . . . 本文を読む
「(この場面では)どんな気持ちなんでしょうか」との女優の質問に、清水宏監督は「気持ちなし」と答えたそうだ。監督にとっては、ある空間で、どんなふうに立ったり座ったりしているかが重要だったのではないか。
1月25日からシネ・ヌーヴォで始まった清水宏監督特集。初日の『有りがたうさん』の上映後、映画評論家・批評家の上野昂志さんによる「清水宏監督の魅力」についてトークがあった。冒頭ご紹介したのは、上野さん . . . 本文を読む
清水宏監督の作品の中でも、ダントツに好きな中の1本。バスに乗って遠足にいくような気分で、いっしょに揺られながら、流れる風景を観ていた。南伊豆の乗り合いバスの運転手が上原謙。歩く人、荷台を引く人、いろんな人や車を追い抜くたびに、「ありがとう」と声をかけることから、「ありがとうさん」と呼ばれ、慕われている。
初めて観た時、カメラをバスの正面に向け、前方を歩く人に近づき、追い抜いていくところを、抜かし . . . 本文を読む
昨年のベストテンは、これから帰省の道中に考えるのですが、なんといっても、濱口竜介監督の関西での特集上映は貴重でした。『親密さ』の夜明けの橋のシーン、詩の朗読は忘れがたく、『うたうひと』といったドキュメンタリー映画もすばらしくまた特集上映が行われないか、期待したいところです。ほかには、当ブログで何度もご紹介した高畑勲監督のアニメ『かぐや姫の物語』森崎東監督の『ペコロスの母に会いに行く』が思い浮かびま . . . 本文を読む
さる土曜日の朝、神戸に、ダイアローグ・カフェの第2弾、翻訳家で英文学研究家の柴田元幸さんのお話を聞きにいってきました。おもしろかったです。最近、小説は全く読んでいませんでしたが、久しぶりに小説熱が目覚めそうです。柴田さんは、はじめにブライアン・エヴンソンの訳したばかりの短編小説「父のいない暮らし」(Life without father )を朗読してくださいました。
この短編がなかなか . . . 本文を読む