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No1144『風の中の子供』~喜びも悲しみも体中で表す子供たち~

朝から晩までシネ・ヌーヴォで清水宏漬けの一日。
節分には一日早い巻寿司を頬張りすぎて、昼過ぎ眠眠にもなったけど大満足。
朝一番の『風の中の子供』1937年。すごくよかった。

通信簿に5が一つもないと言う小学1年生の三平。
優しいお父さんは「子供のうちぐらいは、のびのびさせてやれ」と母に言う。

三平は、勉強が嫌いで、母に言われて、宿題をしようと座っていても、
いつのまにか、机の前から姿を消して、
外でターザンのように「アーワワー」とか叫んで
友達を遊びに駆けだしている。
机の前にいなくなるシーンから、道を走るシーンへのつなぎが、
少しぼかしも入って、なんとも見事。

兄弟の絆、両親と子供の絆が描かれていて、
クライマックスの親子の相撲シーンでは、
客席の熟年男性の間からも鼻をすする声が聞こえた。
若い人に観てもらいたいと思いつつも、
こういうシーンのよさが心底胸にしみるのは、年をとった人かもしれない。

気のよい父親は、社内の陰謀により、無実の罪で
警察に拘留されることから、一家の危機が始まる。

三平と善太(葉山正雄)の兄弟は、
映画の冒頭では、何かといえば、喧嘩ばかりしていたけれど
お父さんがいなくなって、友達も遊んでくれなくなり、
兄弟が仲良くなる。
お母さんが不在の留守を守る間、
布団の上でオリンピックの競泳ごっこをして遊ぶ姿のなんて楽しいこと。

しかし、家計も行き詰り、
とうとう三平は、遠方のおじさんちに預けられる。
玄関に着いて、おじさんに教えられたとおり、挨拶はできたものの、
家が恋しくて仕方がない。
高い木に登って家を眺めようとしたり、
たらいに乗って川を下ったり、
池に河童に会いにいったり、大騒動ばかりで、とうとう家に戻される。
この三平を演じる横山準(爆弾小僧)がすばらしい。
いたずらっ子で、ガキ大将で、喧嘩っ早いくせに、
純情で、甘えん坊でもあって、つい泣き出したりする。

たらいで流されるシーンは川の流れが速くて、びっくりするほど。
三平を助けにいくおじさんの阪本武もすてきで、馬に乗っていたりする。
河童に会いにいくシーンでの、画面からあふれる寂しい感じといい、
あふれだす詩情にひたすら涙。

お兄ちゃんはお兄ちゃんで、弟もおらず、ひとりで家に残された時
ひとりでかくれんぼをして遊ぶ。
もういいかい、もういいよ、という応答をひとりでやって、ひとりで遊ぶ。
しまいには、ひとりでお父さんの服に隠れて泣き出してしまう。
もうかわいくて、悲しくて、こちらまで泣きそうになる。

三平がおじさんちに連れられ、離ればなれになって、また戻ってくる。
その時、二人が同じ木に登って、嬉しそうにして、
降りるなり、また、なんなんだって感じで、
なぜか、取っ組み合いの喧嘩が始まる。
言葉にならない嬉しい気持ちが、表情から伝わり、
観ていて、たまらない気持ちになる。

お父さんが帰ってくると聞いた時、
二人は、部屋で並んで、でんぐり返りをして喜ぶ。
子どもって、喜びがそのまま、動きになるんだと思った。

お父さんが帰ってきた時、車の後ろから追いかけ、
両親とおじさんとが喜びのお酒を交わしているのを
縁側のあちこちから
「おとうさん」と声をかけては、おとうさんの反応を楽しむ。
これって、息子を持つ父親にはたまらないシーンだろう。

盆栽の奥から覗き込むようにおとうさんと呼びかけたり、
そうして、二人の息子を相手に、お父さんは相撲をする。
途中で泣き出してしまう三平がまた可愛らしく、
お父さんも涙がにじみそうになる。

このよさはきっと、子どもを持つ年代になってこそ
よけいにこたえると思った。

子供の無邪気さに感無量。ぜひお薦めの一本。

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