日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

私の名盤コレクション5 ~ Northern Lights Southern Cross / The Band

2011-05-29 | 洋楽
★Northern Lights Southern Cross / The Band

1. Forbidden Fruit
2. Hobo Jungle
3. Ophelia
4. Acadian Driftwood
5. Ring Your Bell
6. It Makes No Difference
7. Jupiter Hollow
8. Rags And Bones

ディランとくればザ・バンドに触れない訳にはいきません。75年のザ・バンドのアルバム、日本タイトルは「南十字星」です。ザ・バンドは60年代にホークスとしてディランのバックを務め、ディランのオートバイ事故後の隠遁期にはディランをルーツミュージックに目覚めさせあの「ベースメント・テープス」をともに作り上げ、英米の音楽界に密かなルーツ・ミュージック・ブームを巻き起こした“震源地”でもあったのです。あのエリック・クラプトンが、クリームを辞めたくなったのもデレク&ザ・ドミノスでアメリカ人メンバーたちとスワンプを手掛けたのも、彼自身がザ・バンドをやりたかったが故だったのです。ザ・バンドの名作と言えば、ディランとの“地下室セッション”の成果であるデビュー作「ミュージック・フロム・ビッグピンク」と、それに続く兄弟作品のような第二作「ザ・バンド」。この2枚は世が認める歴史的名盤であります。そのことに異論はありませんが、彼らを語る上で欠かせないもう一つの名作がこの「南十字星」なのです。

75年と言えば、ディランとのアルバム制作「プラネット・ウエイヴス」を経て復活ツアーを終えた後に、ディランの元を離れた時期でもありました。初期の名作「ビッグピンク」と「ザ・バンド」はそれぞれ68年、69年のリリースであり、音楽界のフィクサー的存在であったディランを陰で支えた60年代の彼らを象徴するような作品でありました。対照的にこのアルバムは、70年代に入ってビートルズの解散というターニング・ポイントを経た音楽界は、多種多様なクロスオーバー的な音楽交流の中から新たな時代の到来を感じさせるいくつもの流れが登場し、それらの流れを吸収しつつザ・バンド的ルーツ感をうまく70年代風に成立させたものなのです。ここにもはやディランの影はなく、独自のスワンプ・グルーヴを身にまとい70年代のアメリカンバンドを体現する自信に満ち溢れた姿のみがあるのです。

全曲ロビー・ロバートソンのペンによる楽曲ですが、その質の高さはそれまでのどのアルバムの比ではないと思えるほどに素晴らしいレベルにあります。アレンジも恐らくはほとんど彼の意向によるところが大きいのでしょう。この後のバンドの行く末からうかがわれる彼の嗜好とルーツに固執する他のメンバーたちとの音楽の方向性の違は明らかであり、全曲を自身の曲で埋め尽くすことによりロビー色一辺倒の新たなザ・バンド像を作り上げようとしたのではないかと思えるのです。本当のザ・バンド・ファンはむしろロビーが抜けた後の再結成ザ・バンドを支持する声も根強くあるのですが、私はこのアルバムはこのアルバムで70年代という音楽激動の時代に確実に60年代の残党バンドが、70年代と言う新しい時代に確実な足跡を残したと言う意味において意義深い作品であると思ってやまないのです。たとえそれが解散に向けての動き出しとして商業的に計算し尽くされたロビーの策略のアルバムであったとしても・・・。

3人のボーカリストの使い分けも実にお見事。3人が交互にリードをとる4「Acadian Driftwood 」などは、アメリカ南部を追われるカナダ人たちの故郷に寄せる哀愁を漂わせた彼らの境遇にもなぞられる内容が、ロビーが考えたバンドの大団円に向けた戦略的な楽曲と言う事だけでは片づけられない名曲です。他にもニューオリンズ的ラグタイムを70年代風ロックにアレンジした3「Ophelia」、今は亡きリック・ダンコの哀愁漂うボーカルをフィーチャーした6「It Makes No Difference 」、後のマイケル・マクドナルドのAORキーボードの登場を予感させるような7「Jupiter Hollow」など聞かせどころ満載の大傑作アルバムです。個人的にはリリース当時FMラジオの新譜紹介で初めて耳にしてその素晴らしさにブツ飛び、歴史的名盤が生まれる瞬間に立ち会うというのはこういうことかと実感したのでした。

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