日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ24 ~ 組織の自浄機能に不可欠なもの

2008-03-28 | 経営
最近の企業不祥事は、内部告発により発覚するというケースがほとんどです。

企業にとって、内部告発を防止するということは、リスク管理上かなり重要な問題であります。内部告発がなぜ起きるのかは、社員が企業内で起きている重大なコンプライアンス違反事例を指摘して正そうにも内部にそういう窓口がない、または取り合ってくれない、ほとんどすべてのケースがそのような理由によるものと考えて間違いありません。

内部告発を未然防止するというと、何か「もみ消し」のようなイメージで、悪いことのように捉えられがちですが、それは間違いです。内部で通報されたコンプライアンス違反などの事例に、適切な対処をせず目をつぶったり、通報した者を不利な立場に追い込んだりすることは、まさに「もみ消し」であり許されないことですが、通報を受けて正常化をはかることは「自浄機能」そのものであり、健全な組織にはなくてはならないのです。その意味では、内部告発が起きる会社は、「自浄機能」が働かない問題のある組織構造にあると言っていいでしょう。

「自浄機能」を有効に働かせる意味で、会社組織にはコンプライアンス違反に関する「通報窓口」が必要なのです。「通報窓口」と言うのは、少々ドギツイですから、名称は「コンプライアンス相談窓口」ぐらいでいいと思いますが、何を受けてくれるところなのか、は全社員に明確に伝えなくてはいけません。

大手企業では、すでに多くの企業でこのような窓口が設けられていますが、中堅、中小ではまだまだのようです。「中小企業にそんなもの必要ないだろう」と思われるかもしれませんが、社長に直接社員のメッセージが届きにくい規模や環境にある企業であれば、どこでも必須と考えた方がよいと思います。

中小企業の内部告発がマスコミに取り上げられて、社会的批判にさらされることになることは、確かにレアケースでしょう。ただ内部告発は対マスコミばかりでなく、告訴や対監督官庁、対労働基準監督署などもあり、それぞれ問題によっては企業の存続を危うくしかねないということを認識をしておく必要があります。先も申し上げたように、「コンプライアンス相談窓口」は企業の「自浄機能」を司る部分であり、小さなコンプライアンス違反を、まだ芽のうちに摘み取って再発を防止する意味でも、大変重要な役割を担っているのです。

次に、どこに窓口を設けるのかですが、大企業なら今やコンプライアンス部門を持っている企業も多いので問題ないでしょうが、中小企業では一般的には総務部門の責任者直轄が適当かと思われます。ただ、小さな組織であればあるほど、総務部門の責任者と他に、もうひとつ窓口を設ける必要があります。それは、総務部門の責任者にからむ通報を受け付けるためのものです。そしてどちらの窓口も、受けた段階で恣意的な対応を排除するために、自動的にトップに伝わるシステムとすることも必要になります。

別の方法として、「相談受付窓口」を外部に置くことも有効です。中立的で「コンプライアンス相談窓口」に正しい理解のある、弁護士やコンプライアンス・オフィサーを受付窓口にしておけば通報者も相談しやすく、恣意的な対応をすべて排除してトップに情報が伝わることになります。いずれにしても重要なことは、通報者が不利益を被ることのないよう、その点が社員から見て明らかに担保されているシステムをつくること。それと、匿名でない通報には必ず調査結果と対応策を確実に返すルールを明確にすることです。

最後にもう一言。
内部統制が働かない中小企業では、一部の人間による組織の私物化や不当な個人利益誘導が行われやすく、役員や部長の職権を利用した使い込みや自己取引がどこの会社でも後を絶たないのは、「自浄機能」がないからに他なりません。“たかが使い込み”とタカをくくっていると、ひとりの悪事が企業をも食いつぶしかねないことだってあるのです。そう考えると、単に内部告発防止目的ということでなく、悪事に対する抑止力として「コンプライアンス相談窓口」が本当に必要なのは、大企業よりはむしろ中小企業の方ではないかと思えるのです。


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