日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「70年代洋楽ロードの歩き方18」~パワーポップ1

2010-08-01 | 洋楽
さて、グラムの次はパワーポップです。

はじめにパワーポップとは何かですが、70年代に登場した60年代のビートルズに代表される明るくメロディアスな甘めのロック・ミュージックとでも定義されるのでしょうか。個人的には“ビートルズ・フォロワー”と言うよりもむしろ、“マッカトニー・フォロワー”といった印象でくくれそうなポップ・ロック・アーティストの総称であると思っています。この系統は日本人好みなのか、日本でも結構人気を博したアーティストがたくさんありあます。具体例をあげてみれば、「ああなるほど、あの感じね」とご理解いただけると思いますので、さっそく具体例を・・・。

まずはポール・マッカートニー直系のバンド、バッド・フィンガー。もともとビートルズのアップル・レーベルから、マッカートニー作の“元祖パワーポップ”「カム・アンド・ゲット・イット」のヒットで世に出た彼ら。その後も順調に“マッカトニー・ライク”な曲作りで次々をヒットを放っていったのです。代表作はアルバム「ノー・ダイス」と「ストレート・アップ」。シングルでは「カム・アンド・ゲット・イット」以外でも、「嵐の恋」「ディ・アフター・ディ」「メイビー・トゥモロウ」あたりがパワーポップ系の名曲です。“マッカトニー・ライク”な曲を書くのは主にギターのピート・ハムとベースのトム・エヴァンス。ニルソンのカバーで有名なあの名曲「ウイズアウト・ユー」も、実は彼ら二人の共作になるのです。

バンドにはもう一人のソングライターであるギターのジョーイ・モランドがいて、彼はかなりソリッドなロック志向であったので、アルバムでは必ずしも甘いパワー・ポップ系の曲ばかりではありませんでした。90年代に突如リリースされたライブ盤「ディ・アフター・ディ・ライブ」等を聞くと、ある時期以降はステージではかなりモランド色が強く、バンド内に不協和音生じていたことをうかがわせもします。結局彼らはマネージメント・トラブルに端を発した、バンドをとりまくいざこざに巻き込まれ、遂にはノイローゼに陥ったピート・ハムの自殺というなんともやり切れない結末でバンドは終焉を迎えてしまうのです。その音楽性とは裏腹の暗く沈痛なバンド・ストーリーをたどったのでした。しかしながら、ポール・マッカトニー直系の“元祖パワーポップ・バンド”として、後世に残した功績は決して小さくはないのです。

この流れをくんだ次なるパワーポップの雄は、パイロットです。彼らのプロデュースを手掛けたアラン・パーソンズが、実はビートルズのフランチャイズであるアビー・ロード・スタジオのエンジニアであったという流れがあり、その意味ではバッドフィンガー同様にある意味ビートルズ直系の“正当派”パワーポップ・バンドであったと言っていいかと思われます。74年にシングル「マジック」が英米で大ヒット。キャッチーなメロディとハンドクラップを巧みに使った跳ねるようなアレンジで、一躍日本でも人気者になります(余談:当時「マジック」が気に入ってレコ屋に走った私が店員に「パイロットのマジックありますか?」と尋ねたら、「うち文房具は置いてないよ」と言われたという笑い話があります)。

その後も「ジャニュアリー」「コール・ミー・ラウンド」など、実に教科書的なパワーポップの傑作を次々にリリース。個人的には史上最強のパワーポップ・バンドであると思っています。3枚目のアルバム「モーリン・ハイツ」では、クィーンを世に送り出したロイ・トーマス・ベーカーのプロデュースでややハードに転身しハンド・クラップを封印。しかしながら、「カナダ」「ペニー・イン・マイ・ポケット」等は従来と変わらぬメロディアスさで、パイロット健在を印象付けました。彼らもその後は、マネージメント・トラブルに起因する、バンド内不協和音から相次いでメンバーが脱退するなど不幸に見舞われ、結局4枚のアルバムを残して解散してしまいます。しかしながら、日本での彼らの人気は根強く、一昨年には遂に再結成→初来日公演が行われ多くのパワーポップ・ファンで盛り上がったのでした。めでたし、めでたし。

<70年代洋楽ロードの正しい歩き方~パワーポップ1>
★パワーポップを正しく知るアルバム★
①「ベスト・オブ・バッドフィンガー/バッド・フィンガー」
アップル時代の代表曲をすべて網羅したベスト盤です。彼らのパワーポップ・バンドとしての曲作りの力量知るには最適でしょう。ワーナー移籍後の後期ベスト盤「ベスト・オブ・バッドフィンガーVOL2」を併せて聞けば、代表曲に関しては完璧です。こちらには、加藤ミカが日本語で不思議な語りを入れる「誰も知らない」や、マネージメント・トラブルでお蔵入りになったアルバム「ヘッド・ファースト」収録の「レイ・ミー・ダウン」などという佳曲も聴けます。オリジナル・アルバムで、抑えたい向きには「嵐の恋」をフィーチャーした「ノー・ダイス」がジャケットの良さも含めてピカイチでしょう。
②「A'S B'S/パイロット」
パワーポップはベスト盤で聞くのが基本かと思いますが、現在入手可能な彼らのベスト盤はこれくらいでしょうか。タイトル通り、彼らのすべてのシングル盤のAB面を網羅した企画盤です。代表曲以外も例えB面ソングでも侮るなかれ。どれもこれも、最強パワーポップ・バンドの名前に恥じないポップ優等生的水準の高さを見せつけてくれます。素晴らしい。こちらもオリジナル・アルバムで抑えたい向きには、パワーポップの決定版で「マジック」「ジャスト・ア・スマイル」をフィーチャーした1作目「パイロット」がおすすめ。ロイ・トーマス・ベイカー制作の3作目「モーリン・ハイツ」、アラン・パーソンズに手戻りした最終作「新たなる離陸」(「ゲット・アップ・アンド・ゴー」はハンドクラップ復活のパワーポップの名曲です)も捨てがたいです。パワーポップに関心のある方は、このバンドは全アルバム必聴ですね。

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