日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ36 ~ 企業の「改善」に役立つフレームワーク「7S」

2008-08-01 | 経営
MECE(ミッシー)の話の中で登場した、経営改善に役立つフレームワークである「7S」についてお話します。

よく似た言葉に、「5S」というモノがあります。トヨタ方式の「改善」や「見える化」の基盤構築段階で使われる「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「躾(しつけ)」のことですが、「7S」はこれとは全く無関係です。

企業戦略における重要要素をMECEな7つに分類し、個別の改善をすることで相互の関係改善にも役立たせ、最終的に各要素がお互いを補完し合うことで強めあいながら前に進んでいくというものです。考案したコンサルティング・ファームの名前をとって、「マッキンゼーの7S」とも呼ばれます。

「7S」は、「ハードの3S」と「ソフトの4S」に分けられます。それぞれを列挙すると、
「ハードの3S」
①Strategy(戦略)
②Structure(組織構造)
③System(システム・制度)
「ソフトの4S」
④Shared value (共通の価値観・理念)
⑤Style(経営スタイル・社風)
⑥Staff(人材)
⑦Skill(スキル・能力)
となります。

「ハードの3S」は「モノ」という経営資源に関わるものであり、作り替えや新規作成により比較的容易に「改善」が可能です。一方「ソフトの4S」は、「ヒト」という経営資源に関わるものであり、それぞれにどのような策を講じようと「改善」に即効性は望みにくいものです。ただし注意すべきは、「ハードの3S」も、その「改善」の十分な「効果」が得られるか否かは、相互関連の関係を踏まえた「ソフトの4S」の「改善」に大きく影響されるということを忘れてはいけないという点です。

実際に「社内改革」と称して制度や規定の改定をおこなったり、あるいは外部コンサルタントに「改革」や「改善」に向けた調査やプランニングを依頼して、結果うまく機能しない例が多いのは、まさに「ハードの3S」に手を付けて「ソフトの4S」をお座なりにしてしまっているケースがほとんどであると思われます。

そうならないために、企業の現状把握で「7S」を基本フレームとして使用してMECEな分析をした場合、次に私がとる手段は「見える化」です。「7S」が使い勝手が良いのは、「ハード」が「モノ」、「ソフト」が「ヒト」として色分けされている点です。それぞれの中身のである「3S」「4S」を「見える化」することで、「モノの見える化」「ヒトの見える化」がしやすくなりかつ相互の関係も「見える化」されるので、より適切な「改善」策を検討することができるのです。

実際のケースでは「7S」のフレームワークに落とし込んだ場合、一度に全要素の「改善」に手をつける訳ではありません。「7S」の各構成要素ごとの問題点が明らかになったら、今度はそれらの問題点相互の因果関係に着目してロジック・ツリー思考を展開し、それに従って優先順位を決め、より根源に近い課題から問題解決をはかるのがセオリーとなります。このように、フレームワークとしての「7S」はあくまで論理的に物事を「モレ・ダブリ」なく捉えるための道具として使い、それらを他の手法との組み合わせで、より的確な問題解決に導いていく訳です。

問題によってその解析の役に立つフレームワークは様々です。そんな中で、こと『「組織」・「人」・「戦略」的な現状把握と問題点抽出→「解決」』には、「マッキンゼーの7S」は大いに役立つフレームワークであると思います。

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