日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

〈70年代の100 枚〉№21~センス抜群“70年型ストーンズ”の幕開け

2008-05-10 | 洋楽
GWから続く「センス」つながりで前回が“東の横綱”ディラン…。そして今回は“西の横綱”ストーンズです。アルバム「センス」で言えば、ジャケットデザインをポップ・アートの旗手アンディ・ウォホールが手がけた全米№1アルバム、ローリング・ストーンズ「ステッキー・フィンガーズ」(71年)の右に出るモノなしです。

№21 「スティッキー・フィンガーズ/ローリング・ストーンズ」

何といっても、このアルバムをレコード屋で見たときには、まずもってYKK製のジッパーが付いたジーパンジャケットに唖然でした。当時は「センス」が良いとか悪いとか、判断基準のない小僧でしたから、感想はただ「おもしろい」。その後、デザインをした人が、アンディ・ウォホールという有名な芸術家だと知って、「芸術だから変なんだこれ?」って感じに移行。これが、すっごい「センス」だと気がつくのは、その後何年もしてからでして、さらにマーケティングの世界を知ってはじめて、その計算されたストーンズ・ブランド構築の第一弾であったと唸らされた訳です。

彼ら自身のストーンズ・レーベルからの第一弾。あの有名なレーベルロゴである「ベロマーク」ともども、記念すべきレーベル第一弾のジャケットデザインに、ポップアートのウォホールを使うというのは、彼ら自身の“ポップアート的思想”を体現するものとして、明らかにブランド化を意識した選択であったことは想像に難くありません(初のシングルがA面「ブラウン・シュガー(=ヘロインの隠語)」B面「ビッチ(=娼婦)」という組み合わせも実に計算されています)。

ポピュラー音楽アーティストとして、ここまで「センス」を意識しブランド構築に動いたのは彼らが初めてと言って間違いありません。あのビートルズでさえ「アップル」というレーベルこそ立ち上げたものの、ビートルズブランドとしての「イメージ」をまとめ上げることは終ぞなしえなかったものを、彼らの解散による「新しい時代=70年代」の幕明けを宣言するかのような素晴らしい「ストーンズ・ブランド」の旗揚げを見事にやってのけた、そんなエポック・メイキングなアルバムなのです。

楽曲面では、まずもってA1「ブラウン・シュガー」。音の面でもキースの冴えわたるギター・リフが70年代の幕開けを高らかに歌い上げる、記念すべき№1ヒットとなりました。「ストーンズ的な」という言葉が、これほど当てはまる曲もないと思います。そして、前々作の「ベガーズ・バンケット」からスタートした米国ルーツロック指向はここでも見られ、A3「ワイルド・ホース」B4「デッド・フラワーズ」という、素晴らしく泥臭い名曲を生んでいます。

さらには、ブルージーなストーンズの決定版という趣のA2「スウェイ」、ストーンズらしいロックナンバー「ビッチ」、サザン・ソウル・バラードのB2「アイ・ガット・ザ・ブルース」等々、制作期間に当時としては長い1年半を費やし新たなスタートに向けて完璧を目指した、まさに捨て曲なしの全10曲です。

その後の後追い評価では、次作「メインストリートのならず者」(当ブログ:http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/62b1d90ac728adfce066f2e5567f8886 参照)の方が評判がいい昨今。私も「メインストリート…」は確かに名作であると思いますが、この「スティッキー・フィンガーズ」があって初めて、存在しえたアルバムであることも厳然たる事実と思います。従いまして、A1「ブラウン・シュガー」のその後のストーンズにおけるタイトルナンバー的存在感も含め、「70年代の100枚」には絶対に外すことのできない1枚であるのです。


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