日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

参院選にみる民意は・・・

2010-07-12 | その他あれこれ
参議院選挙は民主党の大敗に終わりました。各党、各候補者の当落状況、議席獲得状況から、今回の選挙に現れた民意をエビデンスを掲げながら具体的に探ってみます。

①消費税増税
一部野党やマスメディアは「国民は消費税上げにNOを突き付けた」としていますが、各党の議席獲得からは必ずしもそうではないと思います。なぜなら、今選挙での獲得第一党となった自民党も“消費税上げ”の必要性は説いており、増税容認の姿勢を示していたからです。要するに管首相が言うような「言葉足らずで国民に真意を伝えきれなかった」のかどうかは別としても、前回選挙で「次回衆院選まで上げない」と宣言していたものが一転「上げる」と宣言したと国民が受け止め「そりゃ約束が違うじゃねーか」と怒りの審判を下したというのが、今回の結果であると考えられます。

重要なことは、民主党の“約束違反”に怒った票が自民党に戻りつつと同時に新たにみんなの党に大きく流れたと言う点です。みんなの党は、「増税を云々する前にムダの削減をせよ」「増税前に徹底的な官僚改革、公務員改革をせよ」というメッセージを投げかけ、多くの有権者の支持を得た訳です。消費税増税そのものにNOが付きつけられたのなら、共産党や社民党の票がもっと伸びてしかるべきだったと思うのです。では民主党政権は今後どうすべきなのか。財政再建に向け消費税増税分を何に使うのか道筋を立てると同時に、増税を急ぐのではなくまずは徹底的な官のムダ削減を実行すべきであるということです。常々申しあげているように、削減目標数字を国民の前に明らかにし国民の了解を得た上で徹底した削減活動に着手し、その目標達成をもってはじめて増税は着手すべきであると思われます。


②郵政法案
ご存じのように亀井大臣の選挙目当て施策(国民新党の支持団体である特定郵便局長会への既得権擁護策)である日本郵政の実質国営化逆戻り法案は、衆議院での強行採決をはじめ唯我独尊なやり方で法案を通そうとしたことに、国民は明確なNOを突き付けたと断言できます。国民新党が改選前議席3が0になったことが何よりも、その国民の強い意志を表していると言っていいでしょう。また、亀井大臣の独裁的なやり方に引きずりまわされた民主党に対する批判も、民主党支持を著しく落とす一因になったことは間違いありません。

この問題に関しては、選挙においてこれだけ明確な国民の意思が確認された以上、民主、国民新党間で選挙前に約束を交わしたという既定路線(参院選後最優先で前回法案を再上程し参院で可決施行)は速やかに白紙撤回すべきであります。従来の早期民営化の考え方がベストなやり方であるか否かは分かりませんが、もう一度関係政党および関係議員の私的な利益追求等の邪心をすべて排除し、どうのような道筋で民営化をすすめることが本当の意味で国益に資することなのか、じっくり時間をかけて国民的議論を展開すべきであると思います。


③政治とカネ
管政権に移行したことで鳩山政権下の「政治とカネ」の問題は過去のモノとなったという理解が一部民主党首脳部にはあったようですが(管総理も遊説でこの問題に触れることはほとんどなかったと聞きます)、本当に今回争点になっていなかったのか否かです。結果を見ればこれに関してもNOの意思表示が明確に出されていました。特に小沢前幹事長問題。いわゆる地方区“小沢ガールズ”の全敗という状況がそれです。鳩山前首相の“抱きつき自爆”で幹事長の座を降りた氏ですが、自らの問題に関する説明責任を果たしていない、それでありながらいまだ復権を狙うかのような行動に国民は明らかな嫌悪感を持って見ていると思われます。

管首相は政権発足時に、「小沢さんはしばらくおとなしくしてもらったほうがよい」と発言し、この点が“脱小沢”を強く印象付け発足当時の内閣支持率V字回復に大きく寄与したことは動かし難い事実です。今回の民主党惨敗により小沢氏周辺の勢力が再び発言力を増して、小沢復権を狙ってくるものと思われますが、“小沢ガールズ”全敗に見る世間の風の冷たさを(“小沢ガールズ”の応援に執行部が冷たかったという批判はあるものの)小沢一派は十分に自覚をした上で、その言動においては冷静にお考えいただく必要があろうと思われます。