日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ89~「サムライ・ジャパン」会見コメントに学ぶ

2010-07-02 | 経営
サッカー・ワールド・カップ関連でもう一本。昨日日本チームの帰国会見がありました。その会見での発言から、「サムライ・ジャパン」的マネジメント実現のヒントを拾ってみます(「→」以下は発言をマネジメント的に紐解いたものです)。

●岡田監督
「監督が考えるべきことをみんなが考えてくれたことが、結果につながった」
→まさしく、経営レベルと社員レベルの問題意識の共有がはかれていたことの証。前回も書いたように「危機意識」の共有がはかれたことがチームの結束、推進力につながったことに他ならず、厳しい時代の組織においても何よりもまず「危機意識」の共有をはかることこそ重要であると言えるでしょう。

●本田選手
「後ろの選手がきっちり守ってくれたので、何の迷いもなく前線にいられた。ゴールができたのも、そのおかげ」
→「守り」の重要性を物語るコメント。ビジネスもサッカーと同じく、チャンスは一転してピンチになることもあります。「守り(=管理部門、品質部門)」が強い企業は、多少のミスやクレームに組織全体で動揺するようなことはなく、営業等の「攻め」部門が「守り」を気にすることなく前向きな仕事で成果を出せることにつながります。

●大久保選手
「今までで一番走った。自信もついた」
→担当者教育において、とにかく一度は自身の先入観での限界を作らせずに、徹底的にやらせることが“一皮むける”ことになり、それが担当者の自身にもつながって「成長」を促すことになるのです。優しいばかりの経営者、管理者の下では人は育たないのです。

●稲本選手
「戦っていくうちにチームが成長するということが、どういうことなのか分かった」
→共通の「問題意識(あるいは危機感)」をもって、チームで目標達成に向かって仕事をすることは、一人ひとりの切磋琢磨だけでは得られない大きな「成長」をもたらします。「問題意識」を共有させそのもとでチームプレーで成果をあげさせることを、経営者、管理者は仕向けていくことが大切なのです。

●川口選手
「みんなが自然体でいられたチームだった」
→恐怖政治ではダメ、仲良しクラブでもダメ(本田選手は「皆仲が良いけど、仲良しクラブではない」と話していました)。自然体で、委縮せず手抜きせずメンバーが皆力を出し切れる組織環境をつりあげることも大切です。ポイントはコミュニケーションと競争意識。当然その風土づくりのカギを握るのは経営者である訳です。

●矢野選手
「絶対に負けられないという環境で、試合をするのが大事であると思った」
→これも「危機感」を皆が感じていたことの証。厳しい時代を生き抜くには、企業においてもやはりスタッフ一人ひとりが「負けられない」という「危機感」をもって担当業務に臨ませることが大切なのです。

●阿部選手
「いろいろと役割があるので、整理して臨んでいた」
→チームワークとは、一人ひとりが役割をちゃんと認識して「1+1」を3や5にすることです。タテの役割、ヨコの役割、それぞれをしっかり果たさせることがチームとしての企業を強い集団にするのです。

●駒野選手
「PKを決められなかったのは力不足。ずっと下を向いていたが、メンバーに励まされ、前を向いて帰って来られた」
→失敗を教訓として認識させ、委縮させ逃げの姿勢に追い込まない風土づくりも大切。教訓を踏まえてまた前向きに取り組ませることも、経営者、管理者は心がけたいことろです。

最後に一言。「日本を代表しているから絶対に負けられない」、“愛国心”に裏打ちされたそんな強い思いがあればこその皆の活躍であり、これらのコメントであるのだと思います。企業においていかに「愛社精神」を社員に持たせることができるか、チームワークを実績につなげる「サムライ・ジャパン」のような会社づくりには何よりもその点が大前提であるのかもしれません。それはとりもなおさず、経営者の仕事です。「会社よりも自分の富」「会社よりも家族の富」、を社長が少しでも社員に感じさせているとしたら、社員には「愛社精神」は決して生まれないでしょう。社員の「愛社精神」の有無は、経営者自身の会社に対する思いを写す鏡でもあるのです。