日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

米ビッグスリーの失態に学ぶ、「トップの常識は非常識」に要注意!

2008-11-25 | 経営
米国ではシティ・グループへの巨額公的資金注入が決断され、相場はこれを好感して一息ついた感がありますが、現在残された大問題は、自動車ビッグスリー、GM、フォード、クライスラーへの公的資金注入を実施するか否か。12月上旬の議会決議に向けて喧々諤々議論がなされています。

もちろんビッグスリーへの公的資金注入が決定されるか否かは、今後の世界経済の行方を大きく左右する問題であり、この問題自体が大きく注目すべきことではありますが、本題とは別のもうひとつの視点で、この一件に大きな関心を持ちました。それは、先週の米議会でのビッグスリー各社トップを呼んでの上院議会の公聴会でのこと。公的資金注入に値する再建に向けた企業努力がなされているかどうかを問う場において、民主党議員が発した辛辣かつ的を得た質問が示唆した内容にありました。

「ここまで自家用ジェットでなく民間機で乗り付けてきた経営者の方は挙手願います」
「書記、ゼロと記録してください」
「3人の中で、自家用ジェット機を売って帰りは民間機で帰られる方は挙手願います」
「書記、ゼロと記録してください。以上で質問を終わります」

なんとも衝撃的な事実を、見事な演出で暴露した質問でありました。当然問題は、経営上困窮し公的資金の注入を懇願しているビッグスリー首脳が、その一方で一般庶民には考えられない“無駄遣い”を平気でしているというその一点につきます。まさに、常識外の行動に他なりません。しかも揃いも揃って3社ともですから、米国の企業経営者の常識、モラル、倫理たるや、どうなってしまっているのでしょう状態です。

これはまさしく「庶民感覚の欠如」による常識逸脱行為に他なりません。地位が上がり、生活水準が庶民レベルからかけ離れてくると、こういうことは得てして起きやすいものです。まして自動車という庶民が使う乗り物を売る企業のトップが、庶民レベルで誰もが分かる「お願いする立場の者がとるべき態度」を全く忘れてしまっているのです。3人が揃って同じ行動をとった、ということに問題発生の必然性を感じずにはいられません。すなわち、「特権階級」「上流階級」にある者は、知らず知らず庶民感覚の常識を失い、一般的に見て「非常識」な判断や行動を平気でとってしまうようになるのです。今回のビッグスリー経営者に見る“非常識”確率100%は恐ろしい事実です。

日本の経営層の方々も気をつけてください。もちろんレベル感は異なりますが、問題は企業の大小を問いません。中小は中小なりにどこの企業でも、社長を筆頭とする組織内の「特権階級」「上流階級」が存在します。自分の“常識行動”が部下の「反感」を買うケースの大半は、そんな「特権階級」「上流階級」ならではの“非常識行動”である場合がほとんどなのです(官僚の非常識が庶民の反感を買うもの同様ですね)。

さて先の米国ビッグスリーの自家用ジェットの一件。完全に米国民の神経を逆なでしたようで、公的資金注入なるかどうか、問題の行方は予断を許さない状況のようです。「初心忘れるべからず」「実るほど頭(こうべ)をたれる稲穂かな」日本には良い諺がありますから、企業内「特権階級」「上流階級」皆さんはアメリカ人経営者方のまねなどしませんよう、くれぐれもお気をつけ願います。