日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

中身希薄な金融サミットに一石~大前研一氏の妙案に座布団一枚

2008-11-17 | その他あれこれ
第1回緊急首脳会議(金融サミット)は、世界的に深刻化した金融危機克服に向け、先進国と新興国が財政・金融政策を総動員し結束して取り組む姿勢をアピールして15日閉幕しました。首脳宣言には危機解決と再発防止の「処方せん」が幅広く盛り込まれつつも具体策に乏しいとの声も多方面から聞かれ、サミット効果が世界経済の安定化にどれほど寄与するのかまだまだ不透明な感じがします。

この問題のからみで、大前研一氏が「NEWS WEEK」誌に出ていた「A Green New Deal」(新環境保護政策)なる記事にヒントを得た、興味深い話をメルマガに書いていました。ニューディール政策はご存じ、アメリカ合衆国大統領フランクリン・ ルーズベルトが1933年から世界恐慌を克服する地球や環境への配慮ために行った一連の経済政策のことですが、大前氏はその世界恐慌脱出策と「グリーン政策=地球や環境への配慮」を掛け合わせて、ちょっと面白い視点で景気浮揚策を考えよと言うのです。

具体的にはどういうことかと言えば、ニューディール政策もその政策だけが経済回復を成し遂げたわけではなく、その時代には戦争勃発という景気刺激の後押しがあってはじめて大きな成果に結びついたのであると言うのが定説であります。では今の時代はどうか。もちろん平和を乱す戦争の勃発はあってはならないことであり、人間の戦争に経済浮揚の後押しを期待することは不可能であります。大前氏は、ならば「人間対人間の戦争ではない戦争」を世界中で起こしたらどうだと言うのです。

「人間対人間の戦争ではない戦争」とはすなわち「地球破壊者に対する戦争」であると定義をし、「新しい」ニューディール(New New-Deal)政策を打ち立てる。地球を破壊しようとするものに対して、環境を破壊しようとするものに対して、世界中が手を取り合って「戦争」を挑むべきだと言うのです。「地球破壊者に対する戦争」ならば、実際の「戦争」を引き起こすことなく、巨大な経済的効果を期待できると言う訳です。

なかなかユニークな発想です。「地球破壊者に対する戦争」を旗印にして、例えば自動車の排出エネルギーを半減させる、発電効率を向上させる、石炭の使用を禁止する、など地球環境に配慮した政策や規制を作れば、確かに世界中での経済効果は絶大なものがあるのではないでしょうか。そうなるなら、まずは今回の経済危機の震源であるアメリカが率先して取り組む等の姿勢が求められるところであります。京都議定書締結拒否のアメリカがこの姿勢を示すことは、世界にとって経済危機回避対策以上に大きな意味を持つことにもなるのです。

アメリカが引き続き世界経済のリーダーであり続けるためには、単に各国首脳への臨時召集の大号令をかけ対処療法ばかりを提示するだけではどう考えても不満です。「戦争」好きのブッシュさんの最後の仕事として、大前氏が言うような「地球破壊者に対する戦争」を率先して仕掛けるような、“震源地”としての責任感をもっともっと強く感じさせるリーダーシップを見せて欲しかった、いやブッシュの後を継ぐオバマ政権では真のリーダー国たる姿勢をぜひとも見せてほしいと思います。