日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

政府=官への失望感を漂わす「『ねんきん特別便』のお知らせ」

2007-12-17 | ニュース雑感
本日の朝刊各紙に、「ねんきん特別便のお知らせ」なる広報物が折り込みされていたのをお気づきですか?

この「ねんきん特別便のお知らせ」は、政府=総務省=社会保険庁が政府広報「明日のニッポン」を使って、これから郵送にて国民各自に送られてくる「ねんきん特別便」とは何か、その対応をどうして欲しいのか、などについて記載されたタブロイド版4ページのツールです。

まず、ここで問題点1。
5000万件の「消えた年金問題」として、あれだけ社会問題化している事件の、いよいよ本格調査が佳境を迎えるに際して、政府広報で新聞折り込み?こんなやり方で、国民に対する協力訴えかけは十分と言えるのでしょうか。

新聞の折り込み広告をそのままゴミ箱に捨てる人だってかなりいるはずです。例えそのまま捨てない人でも、政府広報の体裁で作られたものでは、インパクトが薄く「あー、いつものつまらない、お堅いヤツか」と、スーパーの広告はとっておかれても、政府広報は中身も見ずにいつもどおり捨ててしまう人もいるでしょう。
いづれにしても、告知方法にはもっと知恵とカネをかけなくてはダメだと思います。

次に、このお知らせに掲載された今後郵送される「ねんきん特別便」の体裁の普通なこと。

これが問題点2です。
青い封筒にスミ文字印刷。こんな重要性を感じさせないつくりでいいのでしょうか?せめて「重要」とか、「あなたの年金に関する重要なお知らせです」とかを少なくとも赤文字で記載すべきでしょう。

そしてそして、ペーパーの中身、政府からのお願いの内容を見てさらにびっくり!

ここが最大、最悪の問題点その3です。
中身を自分で確認して違っている場合は自分で申請しろと言ってます。これ年齢を問わず誰にでも、間違えずにできることですか?しかも、名寄せ作業で氏名、生年月日、性別の3条件が一致した受給者約250万人についても、3条件が一致した「宙に浮いた」記録は、個人情報の保護などを理由にこの郵送通知には記されないのです。記録漏れの有無は、あくまでも本人自身が記憶や資料を頼りに確認、申告しなければならないという、非常にふざけた形なのです。

個人情報保護って、誰の情報か特定できるような出し方をしなければ良いわけですし、「なりすまし」排除にしてももっと役人が知恵を使って、被害者たる年金の受給権利者たる人を守ることを第一義的に対応を考えるべきではないのかと思います。こんなやり方では、個人情報保護をタテに、国民に作業負担を押し付けているとしか思えません。
自分たちの不始末を、加害者たる自分たちが楽をして被害者である国民の作業負担に帰するなんていうのはとんでもない話で、自分の手と足と頭を使ってもっともっと謙虚で誠意あふれる態度で対応をすべきであると思います。

もし人手が足りないなら、カネをかけてでも民間へ確認業務を委託すればいいのです。広報手段もそうですが、カネがない?は理由になりません。国家予算が厳しいことは百も承知の上ですが、怠慢で今回の件の原因を作った社会保険庁の連中の、賞与返上、給与一律カット、既退職者は退職金の返還、これらで原資はいくらでも作れるのです。解決しなければ、するまで賞与返上、給与カットです。今、依然として危機感に乏しく、他人事仕事を続けているのは、やってもやらなくても自分には影響が及ばないからです。

いつも言いますが、民間を見てください。過去の失敗であれ、誰の責任であれ、問題がおきて企業の存続が危うくなれば、賞与返上、給与カットは当たり前の措置です。それをなんとかがんばって、死に物狂いになって建て直しをはかれれば、再生し再び賞与も給与も得られるようになるのです。

すべて、民間と同じ厳しさをもった対応で、同じようにすべてのスタッフに問題の重大さと被害者救済の当事者意識を持たせていかなければ、いつまでも根本的な問題は解決しないと思います。

今回の問題は、国民を不安に陥れた由々しき問題であり、責任あるやり方で、早く、正確に事態を解決に導かなくてはいけないのではないでしょうか。これまでの一連の政府、社保庁の対応、さらに今回の「ねんきん特別便」のやり方を見る限り、責任感も、早さも、正確さも全く感じられないと言うのが、現時点までの率直な感想です。

本日の「ねんきん特別便のお知らせ」とそこに記載した社会保険庁のやり方を見る限り、広報誌「あしたのニッポン」のタイトルは「昨日のニッポン」に変えたほうがいいと思われるほど、古い体質を引きずったままであることよとガッカリさせられるばかりです。