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フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月30日(土) 晴れのち曇り、風強し

2011-05-01 03:25:22 | Weblog

  8時、起床。クリームシチューとご飯の朝食。
  午前中は勉強の時間。午後から散歩に出る。多摩川線の下丸子から多摩川の辺りを歩いてみようと思う。多摩川線は蒲田-矢口渡-武蔵新田-下丸子-鵜の木-沼部-多摩川の7つの駅からなる。蒲田は地元である。学生の頃に講師をしていた塾が矢口渡にあった。大学院の受験勉強をするため通っていた図書館が武蔵新田にあった。しかし、下丸子、鵜の木、沼部は縁のない駅で、あまり降りたことがない。今日はその辺りを歩いてみようと思う。
  下丸子で下車。改札を出てすぐ右に「喜楽亭」という食堂がある。以前、前を通ったとき、そこだけ時間が止っているような印象を受けた。今日、初めて入った。内部も外観から想像されるとおりであった。年配の男性が一人で切り盛りしている店である。中年の男性客が2人いた。女子供や若造の来るところではないという雰囲気がある。なんだか西部劇に出てくる酒場みたいだ。メンチカツ定食は、一口サイズで厚味のあるメンチカツが2つにインゲンとキャベツが添えられていて、厚揚げと大根の煮物、レタスのサラダ、白菜の漬物、豆腐の味噌汁が付いてくる。まさに定食の王道をいく布陣だ。どんぶり飯のおかずとして過不足がない。器に入ったソースは自家製のようである。美味しく平らげてお茶を飲んでいると、ご主人がお茶のお代わりはいかがですかと聞いてくれたので、はい、お願いしますと答えて、少し話をする。創業80年、お祖父が始めて、ご主人が三代目とのことである。いわゆる「町の洋食屋さん」ではない(ラーメンや炒飯がメニューにある)。昭和の「食堂」である。

 

  「喜楽亭」を出て、腹ごなしに下丸子の町を歩く。由緒ある神社があったり、武家屋敷があったり、なかなか歴史的な厚味のある町である。


「喜楽亭」の向かいはマクドナルド

 
六所(ろくしょ)神社


武家屋敷

 
街角にて

  自家焙煎のコーヒー豆の店「ヴィアーレ」で、一服する。メニューはホットとアイスの二種類のみ。アイスを注文する。コーヒーを炒るいい香りが店内に漂っている。しばらく読書。

 

 電車に乗って隣の鵜の木駅で下車。鵜の木では行ってみたいところがあった。電車の窓から高台の松林が見えるのだが、あれは誰かのお屋敷なのか、何かの施設なのか、公園なのか、一度確かめてみたかった。河原坂という名前の坂道をのぼっていくと、鵜の木松山公園という表示があった。公園だったのか。子供たちがボールを蹴って遊んでいる。大きな犬を連れたご婦人がいる。いい眺めだが、今日は風が強い。

 

 

 

 

  再び電車に乗って、隣の沼部駅で下車。ここは下丸子や鵜の木に比べると、いくらか馴染みがある。大田図書館があるからだ。大田図書館が完成したのは1970年、私が高校1年のときである。隣接する都立田園調布高校は都立小山台高校と同じ学校群(14群)で、私はその14群を受験したのだが、合格してどちらの高校に振り分けられるかはフタを開けてみるまでわからいというのが学校群という制度であった。私は、蒲田から近く、多摩川を見下ろす高台に位置する田園調布高校に振り分けられることを期待していた。私は当時、石坂洋二郎の『陽のあたる坂道』を読んでいたので、毎日の登下校のときに、「陽のあたる坂道」を上り下りするという行為にあこがれていたのだ。思えばロマンチックな少年であった。しかし、結果は小山台高校。武蔵小山の駅前にあって、伝統はあるが(旧制府立八中)、全然ロマンチックとはいえない雰囲気の学校であった。後に妻となる女性とそこで遇うことになるとは夢にも思っていなかった。もし田園調布高校に振り分けられていたら、人生はまったく別のものになっていただろう。「陽のあたる坂道」ならぬ「風の強い坂道」を上りながら、そんなことを考える。

 

 

  高台を下りて、多摩川の河原に出る。ここは高校時代、よく来た場所だ。年に一度、卒業までに三度、マラソン大会がここの土手で行われ、男子は10キロ、女子は5キロを走った。運動会の競技の自主練習もこの河原でした。とくに高校3年のときの運動会の増脚リレーの練習は思い出深い。第一走者が片足ケンケン、第二走者が普通に走り、第三走者は二人三脚・・・だんだん人数が増えていく。最後は男子10人が足を縄で結びつけてムカデのように走るのだが、これがなかなか息が合わず、わがチームは下馬評では最低最弱だった。なんとかしなければと、運動会の前日、ここで猛練習をした。映画とかではよくあるストーリー展開だが、実際、われわれは優勝してしまうのだ。いま振り返っても、わが人生のピークともいえる瞬間であった。

 

 

 

 


ここが増脚レース(ムカデ競走)の猛練習をした場所

  丸子橋まで歩いた。多摩川線の終点、多摩川駅は目の前だが、すぐに電車に乗って帰るのではなく、中原街道を歩いてみる。ここらあたりに評判の和菓子屋があるはずなのだが、どうも私の勘違いらしく、行けども行けどもそれらしい店はない(実は、もう一歩だったのだ)。諦めて、引き返す途中の洋菓子屋「ルージュブランシュ」で一服する。いちごパフェとレモンティーを注文。しばらく読書。

 

  多摩川駅から電車に乗って、蒲田に戻ってくる。くまざわ書店でハンナ・アーレント『人間の条件』(ちくま文庫)を購入。ゼミの参考文献である。

 

  夜、ゼミ一期生のM君からメールが届く。NHK新潟放送に配属が決定したという知らせだった。新潟か、よしよし。「卒業生を尋ねて全国を回る旅」のリストに加えておくことにしよう。異動があったときはまた知らせてほしい。しばらくは東京に帰って来なくていいからね。もう一人のNHK就職組であるOさんはどこに配属が決まったのだろう。

  本日の散歩の経費は以下の通り。

  電車賃 510円

  「喜楽亭」のメンチカツ定食 700円

  六所神社のお賽銭 100円

  「ヴィアーレ」のアイスコーヒー 400円

  「ルージュブランシュ」のいちごパフェ 600円、 レモンティー 600円

  ハンナ・アーレント『人間の条件』(ちくま学芸文庫) 1500円

  合計 4410円 (本代を除くと、2910円)