ヌマンタの書斎

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タコピーの原罪 タイザン5

2023-11-08 09:15:20 | 

私が初めていじめにあったのは、多分小学生の一年生の時だと思う。首謀者は近所の上級生で、訳も分からず追い回されて、犬の糞を投げつけられた。もっとも翌日には収まっていたのは、近所の人たちがその上級生を窘めたからだ。

ちなみに何故、私がいじめの対象になったのかは分からなかった。あとで幼馴染のジュンちゃんに訊いたら、口を濁しつつ「なんとなく・・・」だった。楽天家の私は、そうか何となくかぁと簡単に納得していたが、今にして思うと我が家がカラーTVを買ったことが背景にあったと思う。

まだ当時、TVのカラー放送が始まって間もないだけに目立ったのだろう。いじめなんて、たいした理由もなく、ちょっとしたきっかけがあれば簡単に始まる。

次のいじめの記憶は、転校先でのお馴染みの転校生いじめだが、これはその時のクラス担任が厳格な方で、すぐにいじめに気が付いて止めてくれた。もっともクラス替え後に再発するとは、当時は予想していなかった。

クラス替え後だが、近辺の幼稚園で疫痢感染が起き、下の妹が通っていたためか私も感染した。別に大過なく退院できたのだが、学校に戻った私は「疫痢の親分」などと云われて、いじめを受けた。元々、米軍基地の隣町で育ち、やったらやり返すが当然の私は、当然にやり返した。

一対六では勝てなくても、学校帰りで一人になったところを襲い掛かれば勝てた。当時の私は米軍基地勤務のアメリカ兵の子供たちから身をもって学んだ卑怯な手口を平然と行使する厄介なガキだった。子供のパンチでは大した威力はないが、小石を握りこんで殴れば結構な破壊力がある。不要の靴下に砂と小石を詰め込んで殴れば、外傷を与えずに大ダメージを与えられる。

アメ公のガキどもに鍛えられた汚い手口は、閑静な住宅街の子供たちにはかなりの威力があった。ただ、その時は気が付かなかった。後日その手口が汚いとされ、親に告げ口されて、警察まで乗り込んでくる騒ぎになった。

おまけにその時の担任は、いわゆる平和馬鹿で「世界の人々が手を取り合って理解し合えば、戦争はこの世からなくなる」と平然と口にする能天気だった。白人のガキどもと理由なきケンカを繰り返していた私には寝言にしか思えなかった。

その本音を隠す知恵がない大馬鹿だった私は、その担任から嫌われていたから、いじめっ子どもはますますいい気になっていた。だからこそ私は当時、怪我をして血を流すいじめっ子どもを平然と見下し、いくら先生が喚こうと謝る気なんぞさらさらなかった。だからいじめはエスカレートした。こんな時、転校生は辛いと痛感した。

最終的には、親の配慮もあって、私たち家族は母の転勤に合わせて引っ越した。これで私は救われた。再度の転校先でも、お決まりの転校生いじめはあったが、私は笑って流した。体の痛みなんて、心の痛みに比べればたいしたことないと分かっていたからだ。私を逃がしてくれた母と祖父母、親戚には感謝するしかない。

表題の作品の主人公は、逃げることが出来なかった。なんとかしようとする宇宙人タコピーも結果的には解決できなかったと思う。ただし、終盤において重要な変化がある。いじめっ子も苛められる子も、その原因となっている環境には変化がない。

しかし、二人は会話を交わすようになっている。もはや一方的な関係ではない。逃げることも出来なかった主人公は、戦うのではなく話し合うといった別の解決法を選んだようだ。この二人が笑顔で会話できるようになったエンディングが明るい未来を提示していると信じたい。

ところでタイトルでもある「タコピーの原罪」とは何か。これは読者自らが考えるべき課題だと私は思った。私にはそれなりの回答はあるが、敢えて書かない。自分で考えて欲しいからだ。


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