ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

Friends もののけ島のナキ

2012-01-05 11:40:00 | 映画

憎まれ役をやるのは、簡単なようで難しい。

私が敢えて憎まれ役を買って出るようになったのは、20前後、大学のクラブ活動の最中であった。だいがい20前後の男女が集まれば、色恋沙汰の一つや二つでるものだ。

ただ困ったことに公私の別なく、色恋沙汰はやっかいごとを撒き散らす。とりわけ男女を巡る三角関係に陥った場合、周囲が迷惑を被ることは少なくない。

私はクラブ内恋愛禁止なんて無粋なことは言わない。正直、無理というか不可能だと思っている。むしろ、禁止されれば却って燃え上がるものだ。だから黙認していた。しかし、黙っていられなくなった。

一人の異性を巡る三角関係を有利に運ぼうとする気持ちは分るが、だからといって周囲を巻き込むな。そりゃ、不満があるだろうし、そのぐらいの聞き役なら耳を傾けても良い。しかし、相手を誹謗して、味方を増やそうとするな。

よくある話ではあるが、基本的に恋愛は二人の問題。周囲に味方を増やそうとすることも、しばしば散見するが、私はどうもこの手の行動は好きになれない。

クラブにいるのは、それが楽しいからであり、他人の恋愛問題を支援するためではない。自分の色恋沙汰のために他人を道具に使う、その無神経さ、傲慢さが好きになれない。

既に周囲の人間が黙っていながらも、嫌がっていることは分っていた。本当は文句をいいたくてもいえない大人しい奴等が悩み、苦しんでいることも分った。

だから、公的な席上で面と向かって私は声を上げた。声を荒げるような無作法は我慢したつもりだし、言葉を選んで慎重に言ったつもりだ。堂々、臆面もなく反論しようのない正論をぶち上げて、相手を黙り込ませた。

必然的に関係者との人間関係が冷え込んだのは仕方が無い。当事者ではないが、この問題で板ばさみになっていた同期から、言葉が過ぎると怒られ、一ヶ月以上口をきかない冷戦状態に陥ったのは計算外だった。私個人としては、これが一番堪えた。

だが、クラブでここ数ヶ月嫌な思いを強いられてきた後輩たちからは、無言の支持、感謝があったことは鈍感な私でも分った。それゆえ私は正しかったと思っている。冷戦状態に陥っていた同期とも、深夜に突然呼び出され、なんか一方的に愚痴を聞かされた後、お互い謝罪もなにもなく、元の関係に戻れた。

結果的に一人がクラブを去り、残った二人が落ち着いた。澱んだクラブの雰囲気を戻すのには、今しばらくの時間がかかったが、私は憎まれ役を買って出たことは後悔してはいない。

ただ、私には分っていた。これは憎まれ役を買って出た私の功績ではない。私の主張が正しかったが故の結果ではない。断じて違う。

私が敢えて憎まれ役をやっていることを理解してくれた奴等がいたからこそだ。彼等が裏で私を密かに支持していてくれたからこそなのだ。あいつらが、裏で私を支えてくれていたからこそ、私は正論を吐けた。

その支持がなかったら、私はいくら正しくてもクラブにはいられなかったかもしれない。人は正しいだけでは支持しない。正しさというものは、切れ味の鋭い包丁のようなものだ。

どんなに綺麗に切り捌いても、切り口は痛すぎるほどに先鋭で、それゆえに反感を招く。この切り口を丸く後処理しておくと、煮崩れが防げる。地味な作業だが、この小さな手間があるとないとでは、結果がまるで違う。

私が倫理的に、論理的にざっくりと切り裁いた後で、その傷口を優しく手当しておいてくれた奴等がいたからこそ、私は憎まれ役を全うできた。

私は言いたいことを、勝手に言っただけにすぎず、その後の繊細な手当ては他人任せであったのが実情だ。私の憎まれ役なんて、その程度のものだ。影で支えてくれた仲間あってのものなのだ。

表題の映画は、物の怪と人間の幼児の交流を描いたアニメ映画だ。私はこの映画を観た後、真っ先に思い出したのが大学時代の、あの事件のことだった。

ネタばれは嫌なので詳細は語りませんが、子供向けアニメとバカにせず、機会があったら観てほしい良作だと思いますよ


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2 コメント

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Unknown (ごみつ)
2012-01-05 13:57:39
こんにちは。

私も以前通っていたジムで、似た様な騒動がありましたが、はっきり言ってとても不愉快でした。
とは言え、当人達も知り合いではあったのでそうむげにも出来ず、けっこう大変でした。

本当にこういう事は当人同士で解決して欲しいです。まわりはカンケーないんだから。

記事を読ませていただくと、もしかしてこれは「泣いた赤鬼」っぽいストーリー?
劇場で予告編見た時には、「モンスター・インク」みたいな作品かと思ってましたけど・・。

とにかく最近のアニメ作品は質的にあなどれないですよね。足元の子供が可愛い。
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Unknown (ヌマンタ)
2012-01-06 11:35:17
ごみつさん、こんにちは。恋愛問題は当事者たちが、自らを悲劇の主人公扱いしてしまうので、生半可な論理は通用しません。なにせ、自分の世界しか見えていませんから。それだけに強行手段に出ざる得ない。楽しい思い出ではありませんね。
なお、表題の映画の原作は、御指摘とおり「泣いた赤鬼」です。シナリオに大幅な加筆修正があるので、分かっていてもけっこう楽しめると思いますよ。
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