ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

声を聞かず

2023-08-10 09:37:53 | 社会・政治・一般

学業成績優秀な政治家は役人に騙されやすい。

いくら勉学が優秀でも、霞が関のエリート官僚には及ばない。そしてエリート官僚は作文の名人だ。分かりやすい資料を基に、政治家を上手に丸め込む。真面目で勉学優秀であった政治家ほど、エリートの手のひらで踊らされる。

その典型が岸田首相だろう。河野も同罪だ。

人の話を聞くのが自分の美点だとか言っているけど、役人の話を聞くだけで、国民の声に耳を傾けない。いや、傾けるふりをして、実際は役人の手のひらで踊らされている。だから、これだけ反対が根強いマイナンバーカードに固執し、健康保険証との統合を役人のスケジュール通りに進める自分に酔い痴れている。

馬鹿だね。どうも自民党の政治家は公明党の固定票による応援に慣らされて、選挙区の有権者の声を聞くことを忘れているらしい。冗談抜きで、次の選挙で自民党が大勝することはないと思う。

こんな時、思い出されるのは金権政治家と誹謗された田中角栄だ。実質小学校しか出ていない田中だが、地頭は優秀で若くして土木会社の社長になり、のちに政治家になるとコンピューター付きのブルドーザーと呼ばれた。その実行力と気配り、官僚操縦の上手さで首相の座に登り詰めた今太閤であった。

その田中が頼りにしたのが、後藤田正晴であった。優秀な官僚であったが、エリートらしく選挙民の気持ちには鈍感であった。田中の助言により落選した選挙区を歩いて回り、有権者の本音を聞き出して政治家として一皮むけた。

後に第一次田中内閣において官房副長官となり、田中を助けた。エリート官僚たちの根強い反感を、理詰めで論破して多数の内閣発案の法律を制定させた。その辣腕ぶりは他の自民党大物政治家たちからも高く評価され、大平政権や中曽根政権において重要な役割を果たした。

田中にせよ後藤田にせよ、有権者の声を聞くことを非常に重んじた。だからこそ長いこと政界で強い影響力を行使できたのだと思う。

その逆が万年野党であった。元々高い理想を掲げ、有権者に自分たちの思想を支持することを求めていただけに、有権者の声を聞くことに消極的であった。だから旧社会党は解党し、野合の集まりであった民主党はばらけた。その依怙地な高慢さは立憲民主党や社民党に今も引き継がれている。

ところが、そんなダメ野党とは一線を画すはずであった与党・自民党も最近は危うい。一つの原因は、二世政治家、三世政治家といった選挙区を親から引き継いだ議員が増えたことだ。元々確固たる選挙地盤があるためか、情けないほどに選挙区回りをさぼる。親と比較されるのが嫌らしい。

もう一つの理由、これが問題だ。安倍元首相の暗殺により表ざたになった宗教団体と与党との危うい関係である。統一だけではない、なにより公明党と連立を組んだことで創価学会の支援を長年にわたり受けることが出来た。固定票と選挙資金の支援は、政治家にとって喉から手が出るほどに欲しいものだ。

だが、この合法的な応援に慣れてしまうと、本来の有権者の声を聞くことを怠るようになる。それが今の岸田政権に大きく影響している。マイナンバーカードや保険証だけではない。現場の声を聞かず、霞が関のエリート官僚の作文に囚われ、宗教団体の応援に慣れ過ぎて、地元の有権者を軽く見ている。

元々、自民党内での勢力基盤の弱い首相だけに、聞く力は重要ではあるが、聞く相手を限定し過ぎた。このままでは次の選挙は危ういのだが、肝心の野党が心もとない。これこそ現代日本が抱える最大の病巣だと思います。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする