ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

僕だけがいない街 三部けい

2017-07-18 12:09:00 | 

エンディングを如何に描くかで、その作品の真価が決まる。

これが案外と難しく人気の漫画であっても、エンディングは平凡なものが少なくない。敢えて取り上げれば、世界的な人気を有した「NARUTO」はその典型であった。好きな漫画であり、その淡々たる最終話には納得はしているが、満足はしていない。

本当に見事なエンディングを用意してくれた作品は、漫画、小説を問わずそれほど多くない。不思議なのだが、短編小説、あるいは読み切りの漫画などだと、けっこうエンディングが見事なものは多いように思う。

ところが、人気作品で長編ともなると、なかなか私を満足させてくれるエンディングは少ないのが実情だ。「鋼の錬金術士」はその数少ない良作であり、また今回取り上げた「僕だけがいない街」通称僕街もまた私が納得のエンディングである。

ちなみに単行本8巻で完結なので、長編とはいえないが、物語がけっこう複雑で、何度か読み返す必要がある作品でもある。しかし、そのエンディングの見事さは、私の脳裏に見事に刻まれている。

幼い主人公が遭遇した児童虐待と連続児童殺人事件。もしかしたら、自分が助けられたのではないかとの思いが、主人公を突き動かす。それが出来なかった時の未来を見せつけつつ、助けようと奮闘する主人公は絶望的な現実に直面する。

その絶望から立ち直る過程で、母の愛、友人の助けもあり、20年にも及ぶ戦いに決着をつける主人公が得たものはなにか。自分なら出来たはずのことを、やり遂げた主人公が取り戻した過去と、未来。

この作品、本編をじっくり読み解かないと、最後のエンディングを満喫することは出来ない。つまみ食いの読書では、この作品は堪能できない。僅か8巻のなかに、濃厚な物語が煮詰まっている。

機会がありましたら、是非ご堪能いただきたいと思います。私がこの30年余りで読んだ漫画のなかで、間違いなくTOP10入りと評価している傑作です。

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