やっと読みきれた。
ここしばらく、映画や時事評、漫画とブログの記事が偏った最大の原因が、この表題の書である。とにかく読むのが滞った。自分でも不思議なくらい、読むのに時間がかかった。
原因の一つに、季節の変動がある。実は季節の変わり目は、けっこう体に負担になるらしく、特に夏から秋と、秋から冬の季節の変わり目は体調を崩すことが多い。私の場合は、その負担が眠気にでるらしく、電車でウトウトする時間が増える傾向がある。
だから車中で、鞄の中に常備している単行本を気にしながらも、眠気には勝てないとして、短時間の仮眠をとってしまう。実際、眠気はキツイほどで、9月だけでも3回寝過ごして目的の駅を通過してしまている始末だ。
だが、寝過ごすことはあっても、この本に夢中になって乗り過ごすことはなかった。途中で犯人の仕鰍ッたトリックが透けてしまったからだ。ネタばれになるから書かないが、トリックとしては古典的であり、ミステリーが推理小説とされていた頃からのファンである私には解き易いトリックでもある。
しかし、この古典的手法であるからといって、この作品の価値が下がる訳ではない。むしろ、犯人の内面の葛藤と、探偵役の湯川の静かな対峙には、十分心惹かれるものがある。
以前、初めて読んだ東野圭吾の「さまよう刃」に失望したものだが、これなら十分納得の作品である。熱烈なファンが多いのも良く分かる。最初にこれを読んでおけば、ベストセラー作家・東野圭吾の印象がたいぶ違ったと思う。
その意味で、少し残念な出会いであったと思う。ただ、その力量の高さとこの作品の質の高さをもってしても、私がこの作家の熱烈なファンになることはないような気がします。
まだ確信がないので、他の作品を数冊読んでみてから再考してみようと考えています。