ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

BORUTO

2015-09-10 15:25:00 | 映画

敢えて批判するぞ。

週刊少年ジャンプを低迷期から脱出させた功労者的漫画が、「ONE PIECE」と「NARUTO」であることは確かだ。その「NARUTO」が完結したのは昨年のことだ。

しかし、その後もナルトの子供たちの後日譚などを短期集中連載させたり、展示会を開催したりと、「NARUTO」の再活用を盛んに図っている。その集大成ともいえるのが、表題の映画であった。

映画評は敢えてしない。一言だけ添えて置くと、最後の最後にちょっとビックリのエピソードが挿入されている。あの一言で、観客から驚きの声が上がったほどだ。でも、ヒントすら書かない。それは見てのお楽しみってことで。

実は作者の岸本氏は、はやく「NARUTO」から離れたくて仕方ないことを度々述べている。休みも欲しいし、次の作品の構想も練りたいのだろう。表現者として当然の希望だと思う。

しかし、ジャンプ編集部及び集英社がそれを許さない。人気漫画である「NARUTO」は、今でも抜群の集客力を持つ優秀なコンテンツだ。営利企業として、この金の卵を産み続けるニワトリを手放したくないのだろう。

企業とは収益を上げることを至上の目的としているのだから、岸本氏に「NARUTO」の続編を描かせようとすることも分からないでもない。しかし、「ドラゴンボール」の鳥山明の二の舞いを踏ませるようなことは、断固避けるべきだと思う。

鳥山明は、希代のクリエイターであった。あの独特のデフォルメ描写は、未だに安易な追随者を許さない。しかし、近年立て続けに製作された「ドラゴンボール」の派生作品の絵柄の魅力の低下は、怒りを通り越して哀しくなるほどだ。

「ドラゴンボール」を早く完結させたかった鳥山氏の意向は、収益至上主義により踏みにじられ、その才能は磨滅させられた。以降、鳥山氏はイラストレーター的な仕事しか出来なくなっている。あの素晴らしい才能は、ジャンプに潰されてしまった。

あれ以降、ジャンプの人気漫画家たちは、編集部の意向に逆らう姿勢を見せた。「バスタード」の荻原一至、「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博などが筆頭だ。真面目な岸本氏は、あの二人ほどひねていないから、私は危ないと思っている。

岸本斉史の漫画は、きわめてバランスが良く、平凡にして非凡な才能だと考えている。その才能が商業主義によりすり潰され、消耗していくことは避けるべきだ。表題の映画だって、出来は悪くない。真面目な岸本氏が真摯に取り組んだ成果だと思う。

だからこそ、集英社に漫画を文化として守る気概があるのなら、是非とも岸本斉史という優秀な漫画家を大事にする姿勢を見せて欲しい。

コメント (2)
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