夏の終わりに海へ行くと、夕暮れ時の砂浜で思わず口ずさみたくなるのが石川セリの名曲「八月の濡れた砂」だ。
八月の濡れた砂
石川セリ
作詞:吉岡オサム
作曲:むつひろし
あたしの海を まっ赤に染めて
夕日が血潮を 流しているの
あの夏の光と影は
どこへ行ってしまったの
悲しみさえも 焼きつくされた
あたしの夏は 明日もつづく
打ち上げられた ヨットのように
いつかは愛も 朽ちるものなのね
あの夏の光と影は
どこへ行ってしまったの
想い出さえも 残しはしない
あたしの夏は 明日もつづく
あの夏の光と影は
どこへ行ってしまったの
想い出さえも 残しはしない
あたしの夏は 明日もつづく
ご存じの方もいると思うが、日活がポルノ映画へ全面的に切り替える直前、最後に製作されたのが、映画「八月の濡れた砂」であり、その主題歌でもあった。
もっとも、私は映画より先に主題歌をラジオで聴いている。少し気怠さを感じ、退廃的な匂いが感じられる曲で、一度聴いたら忘れられない印象的な歌であった。
強く関心を持った私は、三茶の映画館に観に行ったが、成年指定であった。もっとも当時、少し老け顔であり、無精ひげを伸ばせば大学生に見えなくもないことを知っていたので、ずうずうしく堂々と入館してやった。
で、映画なのだが、実はよく分からなかった。自分の気持ちとは裏腹に、身体の欲求に耐えられず、強引に関係を結びたがる男女の群像が描かれていたと思うが、少し奥手であった私にはピンとこなかったからだ。
分からなかったが、石川セリの歌声だけは、心の奥底に深く沈むように残った。それだけは良く覚えている。それだけしか覚えてないとも云える。
多分、今ならあの映画もよく理解できる気がする。数年後、思春期まっさかりの私自身が、心と体の相反する欲望に身を焦がしていたからだ。だから、この映画は改めて観る気がしない。今更思い出したくもないというか、理解したくもない。
多分、今観れば分かることは多々あると思うが、観終えた後で幸せな気持ちにはなるまい。ならば、わざわざ観ることもあるまいと思うからだ。でも、この主題歌だけは、しっかりと録音を残しておきたいと思っています。