会社を引き継ぐのは、案外と難しい。
私自身、仕事で何度となく経験していることだ。守秘義務があるので具体的なことは書けないので、あくまで一般論として書かせてもらう。
会社を一代で大きくさせた創業社長のほとんどは、自分の子供に会社を継がせたいと思うようになる。もちろん本田宗一郎のような例外はいるが、自分が生涯を賭けて育て上げた会社を、血を引き継いだ我が子に継がせたいのは、古今東西問わず親の共通の願いでもある。
資本主義は所有(株主)と経営(役員)の分離という新しい概念を生み出したが、それは株式が公開されていることが基本的な前提となる。だから、アメリカといえども、株式を公開していない名門企業には、会社の経営を親子代々でやってきているケースは少なくない。
一般的な傾向として、長男が親の会社を引き継ぐ場合は、比較的上手くいくケースが多い。親のみならず、従業員もそれを望んでいる(安定を期待してだが)ことも多いし、なにより長男は真面目に引き継ぐ覚悟をもっているケースが多いからだ。
ただし、子供と云えども親と同等の器量を持つとは限らないが、この場合親を凌駕している必要はない。素直に親のやることを引き継ぐだけで周囲は納得する。むしろ、よく言われるような放蕩息子の場合、端から後継者にはなれない。特に中小企業では死活問題なので、ダメ息子は弾かれる。
ただ、私のみたところ長男は親に忠実過ぎる場合も多く、むしろ二男のほうが会社を発展させるには向いていることも良くある。このような場合は、会社分割などで、切り離したほうが上手くいく。
で、今回問題になっている大塚家具である。
率直に言って、長女の主張の方が正しいように私は思う。高度成長期に高級家具販売で一大飛躍を成し遂げた大塚家具だが、低成長とデフレ、不動産余りの現状に従来の経営手法は通用してこなくなっている。
だが、成功神話からの脱却は難しい。大幅な売り上げ減少を分かっていながら、有効な対策を取れなかったのは、成功者であった父親が、その成功に縛られて、時代の変化に適応できていないからだ。
その上、後継の社長は父親に従順な長男ではなく、長女であったことが父親としては認めがたい。公の場では認めないだろうが、あの年代の男性には、どうしても仕事に関して、女性の能力を低くみる傾向が強い。
実際、中小企業などで幾つもの事業承継をみてきたが、父から娘へ会社が継がれたケースはあまり多くない。ただ、現場に携わるものとして言いたいが、女性に経営の才がない訳ではない。
むしろリスクを過剰に負わない堅実な経営者が女性に多いのが実情であり、近年は女性の経営者が増えているのが現実だ。また破産する企業の経営者は圧倒的に男性が多く、女性経営者で破産する割合は低いのが、現場の実感である。
この先、大塚家具がどうなるかは些か不透明であるが、私なら会社分割を主張するだろう。それぞれの会社で、その業績をもってして正しさを証明するのが一番だと思う。