切に願って止まないのが、漫画「ベルセルク」の完結である。
あれは二十年以上前、二度目の長期入院を終えての自宅療養中であった。図書館に行った帰り、国道沿いのコンビニに立ち寄り、何気なく手に取った漫画雑誌に衝撃を受けた。
あまりに残酷な、異常に苛烈な、壮絶にして鮮烈な描写に目を奪われた。孤独に生きてきた主人公ガッツが唯一心を許したグリフィスを助け出しに行き、そこで見つけたのは、絶え間ない拷問を受けて肉塊と化した親友の姿。私はかつてない衝撃を受けた。
その悲惨な姿は、私には難病により病み衰えた自身の姿とかぶってしまい、それ以降目が離せなくなった漫画であった。以来十数年、隔月刊であった雑誌アニマルは隔週刊に代わり、漫画はアニメ化され、映画化もされたようだ。
だが、肝心の漫画は休載が多くファンをやきもきさせていた。そんな矢先、ヤングアニマル誌に衝撃の発表があり、「ベルセルク」の長期休載と、作者である三浦建太郎の久々の新作の短期集中連載が告げられた。
飽きたのか、それとも気分転換なのか。
物語の行く末がいっこうに見えないことに不安を抱いていたファンは、私を含めて少なくないと思う。しかし、誰よりも作者本人が、行き詰まりを感じていたのだろう。正直、唖然茫然であり、こんな破天荒というか、摧jりのことをしでかした漫画家は滅多にいない。
「王狼」や「ジャパン」の初期の二作を除けば、この十数年間「ベルセルク」だけが三浦建太郎の仕事であった。代表作であり、世界的にも評価の高い暗黒ファンタジーの傑作であることは間違いない。
だが、これ一作にあまりに傾唐オすぎた弊害が出てきたのかもしれない。以前、永井豪が同時並行で複数の作品を書くことで、むしろ作品の幅が広がると述べていた。売れっ子漫画家の凄みをその科白から感じたものだが、案外本当のことかもしれない。
既に二話が発表された表題の作品だが、さすがに面白い。ガッツと異なり陽性の気質の主人公が爽快ですらある。ただ、作品の世界観が果てしなく広がりそうな気配があるので、本当に短期連載で終わるのか、だけが心配だ。
三浦建太郎にとって、間違いなく気分転換にはなっているのだろうと思う。この作品は、これはこれで面白い。だが、この連載が終わったら、必ずや「ベルセルク」の連載再開を願って止まない。
あたしゃ、「ベルセルク」の完結を観るまでは、死にたくても死ねない気分なのだ。どうか、どうか見事な完結を見せて欲しい。ファンの切なる願いです。