ヌマンタの書斎

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資本金1円会社

2006-02-22 20:25:58 | 経済・金融・税制
日本の所得税は、長いあいだ累進課税制度を採用してきました。要するに稼げば稼ぐほど、税率が高くなり、納税負担が重くなる制度です。

それゆえ、ある程度稼ぐ人ほど会社を設立して、会社から給与を貰い、事業利益は一定税率である法人税で納税するスタイルが定着していました。

あまりに高すぎる所得税の税率は、必然的に法人化を加速させ、町の八百屋さんまでもが会社となり、節税を図る始末でした。しかし、消費税という大型間接税の導入により、直接税である所得税、法人税の税率はかなり下がりました。そのために、現在は必ずしも法人設立による節税効果は薄れつつあるのが実態です。

そのため私どもの事務所では、個人事業か会社設立かを税制面からの有利不利の比較をした上でアドヴァイスするようにしていますが、近年目立つのが安易な法人設立です。設立一年目から年商数千万円を予定しているなら構わないのですが、数百万程度の売上しか見込めないなら、法人化は明らかに不利です。却って税負担が重くなり、資金面で負担になってしまうのです。

3年ほど前から、資本金一円でも会社が作れるようになりました。ただし5年以内に株式なら1000万円、有限なら300万円に増資しなければなりません。事業を始める以上、数百万の資金投下は当然であり、資本金を1円にする意味が私には理解不能でしたが、これに安易に乗じてしまった方も少なくないようです。

ところが、今年の5月からは増資の縛りなく、資本金1円でも会社が設立できるようになります。従前の1円会社も定款変更で増資する必要がなくなりました。それでも、私は未だに疑問を持っています。本当に資本金1円でいいの?

大体、会社設立登記だけでも30万から50万程度かかります。自宅を会社所在地にしても、運営維持のための出費は年間100万以下なんて、まず無理でしょう。意外にお金がかかるものですよ、金儲けはね。業種にもよりますが、最低でも年間500万程度の持ち出しは覚悟して欲しいものです。

資本金1円で会社を作るのは簡単でしょう。難しいのは会社を維持していくこと、つまり事業を軌道に乗せていくことです。資本金1円の会社に対する対外的な信用は極めて低いものとならざる得ない。私はこのような安易な起業を勧める風潮には、どうしても同意できません。
コメント (1)
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