のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『世界最速のインディアン』

2007-02-08 | 映画
世界最速のインディアン を観てまいりました。

↑ 左下にある「ABOUT THE FILM」の看板をクリックすると詳しい情報が観られます。

いやっ
これは快作でございます。
青空を仰いでうーんと伸びをしながら
「あー、いい映画観たな~!」と言いたくなるような作品でございます。

時は1962年
スピード狂の集まる
アメリカ ユタ州はソルトレイクに
地球の裏側、「英国の最南端」ニュージーランドから
狭心症の薬と、魚のように美しい愛車「インディアン」をひっさげて
やって来たのはカッ飛び爺ぃ、バート・マンロー62歳 でございますよ。

税関 「で、入国の目的は?」
バ 「世界記録を破るためです」


なんて軽ーく言い放っておいでですけれども
狭心症で前立腺肥大の年金生活者であるこのじっちゃんが
破ろうという記録っていうのが生易しいものじゃございません。
単車で時速300キロ超に挑もうって話なんでございます。
ちなみに実話。


Copyright : 2005 WFI Production Ltd.

最近写真ばかりでイラストがございませんね。・・申しわけござ芋煎餅・・・

1920年代製のバイク、「インディアン・スカウト」。
そもそもは最高速度約80キロだったというシロモノでございます。
マンロー親爺が40年に渡って改造に改造を重ね、今やほとんど 手 作 り 品。
(詳しくは上記リンク先の「スペシャル”項」、別名「マンロー”オタク”スペシャル」をご覧下さい)

スピードを追求するため
無駄なものは一切削ぎ落とし、必要なものすら削ぎ落とし
たどり着いたのがこのカタチ。

しかしこんな低予算手作りマシンで大丈夫なのか??と、みんな思うわけでございますよ。
どっこい、この魚型マシンがまあー、カッ飛ばすのなんの。

地元ニュージーランドで、「インディアン」をコケにする暴走族の挑戦を受けて
というより彼らにケンカを売って、砂浜で賭けレースをするシーンがございます。
ゾク V.S 爺。
スタートの合図と同時に、ゾクたちのバイクは一斉に走り出すのに
マンロー親爺と「インディアン」はいっこう前に進まず、
みんなに押してもらって、ようやっとスタートを切るんでございます。
で、走り出したと思ったら、もうずっと前方でばるんばるん言っていた
ゾクらのかたまりを       ピュンッ   と抜き去る。
その姿のソーカイなことといったら!
(でもカーブは苦手)

応援に来ているご近所さんたちも、イイんでございますよ。
出足の悪すぎる「インディアン」をよってたかって押してやりまして。
で、その時点でかなり引き離されているにも関わらず、マシンが走り出すと
「行けー、バート!!」って大喜びで。バートの勝ちを信じてるんでございますよ。

思えばこの砂浜レースは、本作のエッセンスを凝縮したようなシーンでございます。

レースの翌日に狭心症の発作で病院に担ぎ込まれ
コリャうかうかしてたら死んでまうぞと思ったバート、
長年の夢だったスピード記録測定会“スピードウィーク”への出場を決心します。
こつこつ蓄えた年金 プラス 家を抵当に入れて作った資金
5日後には船に乗り込み、とりあえず渡米するものの
右も左も分からず、乏しい資金をタクシーでぼられたり、「花売り」のおネエちゃんにむしられたり。
しかし行く先々で出会った人々の善意にサポートされて
ようやく“スピードウィーク”出場へ漕ぎ着けるんでございます。
その過程で、始めはうさんくさい思いでバートを眺めていた人たちも
人懐っこい子供のような彼のキャラクターと「インディアン」の走りっぷりに引き込まれ、
いつの間にか「行けー、バート!!」モードになってしまうんでございます。

そんなみんなの声援をはるか後ろに残し
ライダーの聖地、ソルトフラッツの白い平原と青い空の間を
一直線にぶっ飛んで行く、真っ赤なマシン。
グッと来ます。
バートの旅にはるばる付き合ってきた私ども観客も、大声援を送らずにはいられないところでございます。
行けー!

・・と書きますと、何だかほのぼの一辺倒のロードムービーみたいな印象になってしまいますが
死の影や、良き時代(良きアメリカ)の終焉を暗示する挿話が
作品にシリアスなトーンを持たせております。

バイク以外のことにはいたって能天気なバートですが
自分が死から遠いところにいるわけではないことを、よーく分かってるんでございます。
トシだから、ということだけではございません。
彼は子供の頃、双子の兄弟を不慮の事故で亡くし、「それ以来、何も恐れないようにしている」と語ります。
すぐ側にある”死”を想えばこそ、今ある”生”をフルスロットルで突っ走る。
バートの破天荒さも、無類の人なつっこさも
この「すぐ側にある死」という観念に裏打ちされているが故のことかもしれません。

もうひとつ、バートが”死”について直接触れたセリフがございます。

年寄りは暗い隅で死ねばいいと思ってるな。だが、バート・マンローはまだ死なんぞ。

「俺は」ではなく「バート・マンローは」という所が、イイではございませんか。
「俺」という無名の一人称ではなく、わざわざフルネームを持ち出すことで
自分は”お爺さん”でも”お年寄り”でもない、60余年の歴史を持ったバート・マンローという人物であると、
そしてバート・マンローはトシをとったからっておとなしく死んでいくようなヤツではないんだと、
宣言しているんでございます。

ちなみに こちらのサイト にはマンロー語録なるものが。笑
公式サイトに負けず劣らず本作への愛にあふれた、素敵なサイトさんでございます。

最後にマンローさん、もうひと言お願いします。

夢を追わない人間は、野菜と同じだ。

ど、どんな?・・・

キャベツだ。

ははーっ。





そうそう。
本編の上映開始前にマイケル・ベイの次回作『トランスフォーマー』の予告が流れたのですが
出だしがあまりにも『It Came From Outer Space』なので、のろは思わず吹き出しそうになりました。
あの落下物から、何か とんがったもの が出て来るんじゃないかと。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿