のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

2012.11.24 広瀬隆講演会@愛媛(1)

2012-11-27 | Weblog
80年代から原発の危険性を訴えて来られたノンフィクション作家、広瀬隆氏の講演会です。
四国での講演なので伊方原発の話がよく出てまいりますが、伊方のみにフォーカスしているわけではなく、東京の放射能汚染度、発表される数値のウソ、原発の構造とその脆弱性、福島第1原発3号機の爆発をめぐる検証など、内容は幅広くかつ濃いです。

2012.11.24広瀬隆講演会part1



前置き部分を省略して、11:30以降の内容を書き起してみました。
動画そのものをご覧頂くのがなによりですが、時間のないかたは以下の書き起しにざっとでも目を通していただけたら幸いです。読みやすさを優先するため、語順を変えたり言葉を補う・省略するなど若干編集した部分がありますが、文意はそのままです。

以下、書き起し開始
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皆さんの知人、親戚のかたも大勢、東京、首都圏におられると思います。首都圏全体で4千万人の人が住んでいます。東京の汚染のことをお話しますと、文部科学省がつくったこの東京の汚染分布図を見ると、千葉県に近い海側の方の葛飾や、山梨県に近い山の方の多摩地区、このあたりだけが高い汚染の数値が出ておりますが、これはウソです。
このあたりは確かに高濃度です。高濃度なんですが、中央部の、例えば新宿、渋谷、そしてすぐ隣の杉並。ここ(杉並)に私は住んでおります。で、毎晩可愛い孫娘と一緒に夕飯を食べているんですが、心配でならない。このへんは汚染していないことになっていますが、これ、ウソなんです。文部科学省が勝手にヘリコプターで、300メートルくらいの高い所を飛んで空間線量を測っているだけなんです。空間線量なんかでは、汚染なんかぜんぜん分かりません。

(杉並区は)福島原発から230キロも離れています。この距離をちょっと頭に入れておいてください。今、30キロだ何だって馬鹿らしい数値を出しておりますけれど、(杉並区の)我が家の庭の土を取って測ったんです。誰も測らないから。(2011年10月に)測ったら、いくらあると思います?1平方m、畳半分くらいの中に、1万7千ベクレルですよ。近くの公園では9万ですよ。
この9万ベクレルの公園の隣に畑がありまして、私の娘が近くに住んでいるんですが、そこに幼稚園の先生が子供たちをいっぱい連れて来て、畑をいろいろ掘ってるんで、娘が何をしてるんですかと聞いたら、芋を掘ってるんだと言うんですね。芋掘ってどうするんですかと言ったら、「落ち葉で焼き芋を作る」と。やめてくださいと。落ち葉にはもう、最高のセシウムが降り積もってるんですよ。そういう先生たちですよ。で、去年の事故の後、爆発したと聞いてすぐに私の娘は学校へ行って、娘を連れ帰って家の中に閉じ込めたんです。その時ずっと先生たちは、子供たちを校庭に野放しですよ。だから娘は先生に、何をしてるんだと怒鳴りつけたんだけれども、先生は(ことの深刻さが)分からないんです。今そんな状態で、東京では大変な被害が出ると私は予想しています。

東京の汚染がチェルノブイリ並みだという意味をちょっとお話しておきますと、...(図を示しながら)...爆発したチェルノブイリ原発が矢印の先、ここですね。今こう、チョウチョのような形になって汚染しております。この外側のピンクの所が、一番この中で濃度の低い所です。その低い所でさえ1平方kmあたり、1キロ四方ですね、広大な面積あたり、1キュリー以上あったら人間が生活しちゃいけない所です。こんな広大な範囲が。東京駅と富士山の間の距離が100キロ、ここに書いてありますね。分かるでしょう、どれほど広大な範囲が汚染されたか。



そして当時のソ連がロシア、ベラルーシ、ウクライナ三国に分割されてこういうふうになっているわけですが、このピンクの所、もう人間が生活できない所に、たくさんの人がいて移住させられないので、まだここに人が住んでいます。このオレンジの区域はもっと危険です。かなり危険です。私だったら、絶対に入るなと怒鳴りつけるような所。赤い所ももちろん完全に居住禁止区域で、強制的に住民を避難させて来た所ですが、こういうふうにまだら模様になります。伊方で事故がありましたらどういうことになるか、まあざっと距離を書きましたけれど、こんな感じですから、要するに四国全体はなくなるというふうに、皆さんに知っておいていただきたいと思います。

「1平方kmあたり1キュリー」というのは、キュリーとベクレルを換算しますと「1平方kmあたり3万7千ベクレル」になります。さっき申し上げた近くの公園は、一平米あたり9万なんですよ。東京のど真ん中の、私の家のすぐ近くがこんな状態です。こんな所にいま4千万人が住んでいるのです。放射線防護服を着なければいけない区域ですよ、こんな数値は。

それで、自治体の測定値、私はこれを信頼できる数値と思っております。なぜかというと、自治体というのは汚染を隠したがります。それが、数値を(わざわざ)出してるんですね。セシウムだけで見ますと、東京は岩手県盛岡の6倍です。みんな東北が汚染されてると思ってるですが、実を言うと東京はその6倍です、セシウムだけで見ますと。で、ここに宮城県があって、「測定していないので不明」となっていますが、宮城県知事はとんでもない奴で、放射能の測定をさせないんです。

ヨウ素、これは甲状腺がんを起こす一番怖いものですけれども、ヨウ素の出た量は、新宿は盛岡の100倍ですよ。
どうしてそんなことが起こったかというと、こうなんです。これは日本地図を横に寝かせたもので、ここに福島4基があって爆発したわけで、こちらの方に大量の放射能が流れて飯館村なんかを大汚染したことは皆さんご存知と思いますが、このブルーになっているあたりが阿武隈山地なんですが、美しい所です。今年も福島県内を連続集会で回りまして、そのときも雪がしんしんと降り積もって、きれいでした。私は外へ出て、もう涙がぼろぼろと止まりませんでした。いったい何をしてくれたんだと思ってね。雪の中で叫んでました。



そこが今、要するにここから出た放射能が、みんなこの山地にぶつかったわけです。ところがここには、東京に向かって、遮る山がないんです。関東のだだっ広い平野ですから。それで東京や神奈川、千葉、埼玉へと(放射能が)直進して行ったわけです。
これは昨日高知へ行って、あなたたち何をぼんやりしてるんだと言って来たんですが、伊方原発から出た(放射能がどうなるか)、ここは高地がないんですよね。山がないから(放射能は)ずっと通って、四万十やなんかみんな汚染されますよということを昨日お話してきました。
去年はこうして(福島原発から)放射能がずうっと流れて、最初は海の方に流れてくれたんですが、爆発2日後の(3月)14日になりますとぐっと巻き込んできて、関東地方をパニックに陥れて、静岡県の浜松、浜名湖のあたり、名古屋直前の豊橋、豊川までずっと流れて行って、こういう汚染が続いた(3月)下旬には今度は回り込んで千葉県側から大汚染が広がりました。

今、私たちの身体の中がいったいどうなっているかというと、日本人があんまりバカでぼーっとしてるから、アメリカ人やヨーロッパ人が駆けつけてくれまして、去年の事故の翌月、4月に走り回ってくれました。彼らは頭いいんで、自動車で走ったんですね。自動車が何で測定ができるかというと、自動車はガソリンでもディーゼルでも、空気を取り込んで、それを使って爆発をさせてシリンダーを動かすわけですから、自動車っていうのは人間と同じで呼吸しながら走っています。で、エアフィルターというのが入っていて、それを取り出すとどれぐらい被爆しているかが判ります。皆さんも自動車に入っているフィルターを取り出して、レントゲン写真のあのフィルムの上に置けば感光します。それがこれです。



これがアメリカのシアトル。シアトルは野球のイチローがいた、西海岸の北の方ですね。これがシアトル、これが東京。全く違いますね。東京の人間の肺の中は今、こういうふうになっているんです。全ての人間が。(それなのに)もうみんな、平気でいます。私は自宅から外へ出て、自分の頭がおかしいのかと思うぐらい、みんな平気で生活していました。本当にこの人たちは何もわかってない、だって事故が起こっている最中ですよ、3月の。そして県庁所在地の福島市、海岸から60キロくらい内陸の、あの東北新幹線が郡山も福島も通るわけですが、この福島市を見てください。こんなになって、写真がぼけるぐらいです。こんな状態です。

今、ヨーロッパの人たちは予測を立てています。この、ぼーっとしている無意識の日本人、少なくともこの100キロ圏内では、(向こう)10年間に20万人ががんになるだろうと。それからさらに100キロから200キロのこの範囲、ここでも12万人ぐらいががんになるだろうと。これは人口密度をきちんと解析してやったもので、私もこのレポートを読みましたが、まず間違いないだろうと思います。



そして今問題になっているグレーゾーン。ここに山脈があります。ですから太平洋側から出て陸にむかった放射能は、みんな山に当たって、去年の秋から落ち葉となって山林に降り積もって、そこに今年は豪雪でしたから、1月2月にいっぱい雪が降ったんです。そのあと3月から雪解けです。東北地方の雪解けというのは、毎年ほんとうに嬉しい出来事なんですが、今年は違います。(放射能が)どんどん水に入って来ている。
ここにあるのが東京...(グレーゾーン圏内)...。さっき言ったチェルノブイリ並みの汚染のある所です。多摩川べりやなんかの土の出ている所を測ってみると、もうみんな、人間の住める所じゃないと言っています、正確に分析している人たちは。そんな状態のまま(首都圏在住の)4千万人は、のんびり今まで生活をしてきました。ところが、そんなもんじゃないということが分かりまして、それがあの首相官邸前(のデモ)に来てるわけです。分かるんですよ。
今何を叫んでいるか。今、本当に深刻なんです。食べ物を考えても。

そういう状態ですので、皆さんそのことを頭に入れていただいて、本当に、のんびりしていると殺されるということをハッキリ言っておきます。もうすぐ、これから日本で大変なことが起こります。もうおそらく身体の中では、大変なことが進行しています。それは見えない。絶対に見えません。病院に入るまで分かりませんが、そういうことをきちっと皆さんも理解していただいて、周のかたと一緒に、ここに来ない人たちにも広めて行って、お互いに(健康被害を)止めるということを心がけていただきたいと思います。

放射性物質は、今農作物にどんどん入り込んで来ています、誰も捨てていませんから。この範囲、これだけで350キロですよ。これ...(示している新聞記事)...は日本農業新聞ですから、さすがに除染が必要だってことを真剣に考えて、ついにJAも今年10月、脱原発を言ってくれました。嬉しい出来事でした。
だけど見てください、その深刻さを。あとで福島の本当の深刻さをお話しますが、皆さんも多くの人にきちっと伝えていただきたいと思いますが、宮崎県、栃木、群馬、茨城、千葉ももう、たくさんのホットスポットが見つかって、東京が今のような状況です。

さてこの事故がどうして起こったかを簡単にお話しします。去年の12月にバカ総理が「事故収束」なんてことを言いましたけれど、とんでもないですね。世界中の笑いものになっています。この地元紙が書いているとおり、収束なんてほど遠い状況です。



さて、福島の事故がどのように起こってどのように放射能を振りまいたのかを簡単に申し上げます。これは伊方と違って沸騰水型といいます。沸騰水型でも何でも同じですが、この赤く塗った所、ここがウランの核分裂をする所、放射性物質が生産される所で、熱が出ます。熱が水に浸かって蒸気になって、この蒸気がタービン(発電機)を回して発電するんですが、ここで生まれた熱エネルギーの、3分の1しか電気になりません。じゃあ3分の2はどうしてるのか、これが大事なんですが、3分の2は海水を引き込んで、伊方の場合なら瀬戸内海の水を引き込んで冷やして、つまり熱を大量に捨てながら、発電をしております。だからこれは水の流れであると同時に、熱の流れです。
この、熱の流れ。みんな原子力発電所の耐震性を議論する時はこっち側...(格納容器)...のことばっかりになりますが、そうじゃないんです。こっち側...(タービンや給水ポンプ)...が壊れたって、水が抜けて行ったら同じことなんです。どこが壊れても、この流れが遮断されますと(原子炉の)熱が奪えなくなるので、結局福島と同じ、メルトダウンを起こして行くわけです。

それが地震のときどういうふうになるかというと、具体的には、原子炉建屋とタービン建屋とは分かれています。基礎工事から全部違います。そこへ大地震が来ますと、(原子炉建屋とタービン建屋は)全く別の揺れ方をします。一番怖いのは配管が折れることで、バーンと折れたらもう終わりですね。こういうことが一番起こりやすいわけです。

では原子炉の中にどれくらいの熱量があるかということなんですが、伊方では1、2号が56万kw、3号機が89万kwなんですが、100万kwが今、日本の(原発の)標準ぐらいになっています。あたらしいものはもう130万kwを狙うという時代に入って来て、そういう中で福島の事故が起こって来たんですが、10トンの水を沸騰させる、つまり液体を蒸気に変えるのに、どれくらいの時間がかかると思いますか?10トンというと、1立方m、のさいころを10個並べた量、大量の水です。どれくらいかかると思います?たった1秒です。それくらいの大変な熱量で運転されているのが、原子力発電所です。
ですから伊方の1、2号だったら大体2秒で、これ(10トンの水)をボーンと蒸気にする、それくらい大変な熱量を抱えているのが原発です。去年は3月11日に、地震でまず配管に亀裂が入りました。これはもう間違いないので断言しておきますが、今年の確か7月5日に出された、田中三彦さんら国会事故調の報告では、その「可能性」と書いてありますけれども、田中さんは知っています。間違いなく、配管に亀裂が入って事故が始まったんです。そうして水から燃料棒が顔を出す、そうすると大量の水素ガスが発生する。

こういうふうに事故が始まりまして、放射能がどうなったかと言いますと、福島県の南にあるのが茨城県、茨城県のつくばという所があります。ここの気象研究所に、何と沸点が5000近いテクネチウムのガスが飛んできました。これを聞いたとき、私はもう本当に震え上がりました。5000度という温度は、私はエンジニアとして工場で働いていたから知っていますけれど、こんな温度は体験したこともありません。鉄鋼会社だって、鉄の温度なんて1500度くらいまでしか、みんな知らないです。5000度ですよ。それぐらいのとてつもないものがガス化して出て行ったわけです。ですからテクネチウムよりも沸点が低いものは、ここに書き出した主に危険なものを囲っておきますけれど、こういうものは全部、ガス化したんです、原子炉の中で。



東京にもウランが降っているんです。霞ヶ関あたりの公園の土をアメリカ人たちが分析してくれて、(その結果)ウランが出て来ている。(日本では)誰も分析していないだけなんです。アメリカまでもプルトニウムが飛んで行った。最初私は、それは間違いだろうと思ったんですが、事実でした。アメリカのロッキー山脈の西側にも、放射性物質が降り積もっている。こんな大変な規模です。
今、国やTVや新聞に出ている放射能に関する危険性の記事、あれは全部デタラメです。本当に恐ろしい国だと思いますが、特に危険なのがクリプトンやキセノン、このことは誰も言っていないでしょう。クリプトンやキセノンはマイナスでもガス化するものですから、こんな状態では爆発で全部外へ出てしまいまして、地球全土を包みまして、そういうことからヨーロッパの人たちはこの福島からどれくらいの放射性物質が放出されたかということを推定して、ああいう計算結果が出ているわけです。これは非常に大事なことで、皆さんは何も言っていないけれども、クリプトンやキセノンについて何も言わないのは、おかしいんです。これはもう、直接、大量の被爆をしています。

私はこのことは事故があってからずっと、黙っていました。あまりにも取り返しがつかないので。けれど今年の2月に、福島に人たちが立ち上がって訴訟を起こすというので、涙ながらに福島へ行ってお話ししました。あなたたちは大変な被爆でこれから被害が出て来るんだから、そのことを知っておいてくださいと。で、クリプトンやキセノンによる直接の被害のことをお話してきました。ヨウ素もセシウムもストロンチウムもコバルトも全部ガス化して、こういう中で事故が進行したんです。

福島の事故は放射性物質が水素ガスや何かと噴出して行きまして、格納容器が壊れてしまいました。これは柔い、ただ閉じ込めるための容器ですから、こんなものはぶっ壊れちゃう。それで当時、菅直人と東京電力はどうしようかっていうんで、急いでここの弁を開けた。恐ろしいことで、これは絶対にやってはいけないことなんですが、これ(格納容器)が壊れたらもう大事故になります。格納容器は放射能を閉じ込める壁ですから、これがぶっ壊れたら大変だからっていうんで。



これ、酷いでしょう。構造を見てください。こんな所へ、(放射性物質を)閉じ込める容器にですよ、パイプを突っ込んでバルブをつけてあって、バルブを開いたら外へ出るような構造になっている。
原子力発電所ってのは、何の壁もないんです。事故があったら放射能を全部外へ出す。ここ(外)は福島県の空ですよ。我々の吸っている空気ですよ、日本中繋がっている。そこへ全部わーっと出し始めた。

こうして事故は始まったんですが、具体的に言いますとこういうふうになっています。最初にどこかに亀裂が入りました。どこかはわかりません、誰ももう覗けませんから。ともかく亀裂が入りまして、高温になって放射性物質と水蒸気と水素ガスが噴出して行って、この格納容器が壊れそうになる時に、(容器内の圧力が、容器の)耐圧の2倍になりました。(容器の)一番上の所は二重になっていますが、そこをぐっと下から押し上げたんですね。こうしてガスが出て行った。立体的に見るとこんな感じです。



このオペレーションフロアってのは検査の時に作業者のかたが働く場所ですから、ここは空気です。空気中に水素が出て行ったら、ちょとした刺激で爆発を起こします。こうして始まったのが福島の事故です。
これがちょうど爆発した時の映像なんですが、伊方原発では福島原発のようにはなりません。運転条件が違うんです。沸騰水型は原子炉の中で沸騰しますが、加圧水型は(沸騰水型の)2倍の圧力を加えることによって、水が沸騰できないんですね。気圧が薄くなると沸騰しやすい、富士山の頂上ななは沸騰しやすいでしょう。それと逆です。高い圧力にして、沸騰しないようにしてあるのが加圧水型で、圧力も高い、温度も高いですから、亀裂がちょっと入っただけで、メルトダウンへと至る速度は加速度的に早くなります。福島の比じゃないですね。

もう一つ、もっと怖いのは、福島では格納容器の中に窒素を入れてあるんです、爆発しないように。ところが伊方原発の加圧水型は、格納容器の中は空気なんです。ということはメルトダウンが始まった、水素がばーっと出て来たという時点でもう爆発するんです。福島では格納容器は今、形だけは残って、一応閉じ込めた形になっているんですが、伊方の場合は格納容器ごと飛んじゃうんです。建屋ごと全部吹っ飛びます。

そうしてこういった汚染が始まったわけですが、特に現地の皆さんに知っておいていただきたいのは、この時福島の人たちはどういう体験をしたかということを、皆さんの周りのかたがたに伝えていただきたいわけです。去年の3月10日まで福島県の中で誰一人、こんなことが起こるとは思っていませんでした。今この愛媛県の人たちも大部分がそう思っていると思いますが、だからこそ私は大声を出して、「起こるんですよ」ということを言っているわけです。必ず起こります、このまま行ったら。国に、あるいは電力会社に、皆さんの命を預けたら。



まず可哀想だったのが子供たちです。今かわいい子がこう手を上げていますけれど、この子をよく見てください。測っている人はマスクをしてるでしょう。この子はしてないじゃないですか。逆じゃないですか。私が心配なのは、この子が身体に取り込んだ放射性物質なんです。肺の中はどうなってるのか。それが心配なんです。
こうして福島の人たちはみんな放射線量を測ってもらって、みんな不安で。(3月)15日にはもう全部爆発しましたから。郡山と言えば大都市です。東京駅からガイガーカウンターを持って、新幹線に乗って行けば、郡山に入るとぐっと(ガイガーの数値が)上がります。福島でも上がります。福島の駅からタクシーに乗って、ずっと歩いてご覧なさい。タクシーで走ってご覧なさい。途中でぐっと(数値が)上がります。ぞっとするような数値が出ます。タクシーの運転手さんに、どうしてこのへんで上がるんだと聞いたら「あの山だよ、あの山に全部積もってるんだ」と。みんな知ってます。そういうような大都市が、大汚染しています。多くの人は隣の山形へ向けて、行列を作って逃げ出しました。新潟へも逃げ出しました。
ずらっとこう、行列を作って。

これが、事故があった時に自治体に起きる出来事です。私は伊方の現地へ連れて行ってもらった時にも、いろいろ自動車で通りましたけれども、ああここで事故があったら、ここの人たちは絶対に逃げられない、ということを体感しました。皆さんの方がよくご存知のはずですが、こんな所で事故がありましたら、ほとんどの人は身動きができなくなります。
そのことをちょっとお話します。4月、地震があった直後ですね。福島で異常があったことも、大事故に突入していることも、みんな知っていました。東京でも、もちろん。だけれども、住民にはなにもその危険性は知らされなかったんです。だから皆さん、想像したくはないけれど、万が一のことが伊方で起こった時には、国やTVは絶対に信用しちゃだめですよ。教えませんから。そういう時は四電(四国電力)の社員の人を捕まえて、家族はどうしてるかってことを聞くことです。その人たちは一番早く、社内で事故を知って伝え合うはずですから、まず四電の社員を捕まえて聞く、それしかないですね。皆さんが事故にあった時に一番取るべき行動はそれです。

今ほとんどのかたは携帯電話を持っていますが、(事故時には)何の役にも立ちません。全部パンクしますから。それで福島の人たちはどうしたかというと、爆発したってことを聞いたらすぐに家を飛び出して、ハンドルを握って逃げ出したわけです。逃げ出したのはいいんですが、外はこうですから。大地震ですから、道路はもうめちゃくちゃです。



地震のため道路はあちこち陥没してる、津波をかぶって通れない。どこの道を探しても、だいたいみんな一本道ですから、郡山方面に逃げろったって、(車が)数珠つなぎで動かないんです。必ずそうなります。このことは今までこの事故が起こる前、私も浜岡やら、現地の人たちに何度も言ったんですけれど、みんな聞きたくないんですね。でも、起こったでしょう。
2007年の柏崎の地震の時もそうでした。ずっとあの新潟の国道が渋滞していました。みんな一方向へ向かって行きます。結局、動けない。じゃあどうするのかっていうと、みんな渋滞している所から、これじゃ危ないと気がついた人は自宅へ戻って、目張りをして、閉じこもってどうするか考えた。そういうことをやって、かろうじてみんな、何とか1日、2日と過ごして来て、こういう時はガソリンや何かは非常に大事なんですが、もうガソリンもない、日本中から助けに来るはずの人も、誰も来ません。放射能と聞いて、誰も来ません。そこに、静かに、音もなく匂いもなく、放射能の雲が襲いかかって来る。これが副島で起こった出来事です。

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次回に続きます。