のろや

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マーク・ストロングばなし色々

2012-11-06 | 映画
なんだかくたびれておりまして
冬布団をひっかぶるや10時間も寝てしまいました。
さらに夢の中でも同じ布団をもそもそとひっかぶって、眠りについておりました。
そこでまた夢を見たかどうかは覚えておりません。

夢の中でさらに夢を見たとなると、話がいささか『インセプション』じみてまいります。しかし遠路はるばる無意識の深層まで目を覚まさせに来てくれるなら、刑事プリオよりジョゼフ・ゴードン・レヴィットでお願いしたい所ですな。刑事プリオさんに起こされても、その後さらに一悶着ありそうで安心できません。ジョゼフ・ゴードン・レヴィットなら孤軍奮闘に慣れてらっしゃいますから、何かあっても任せておけば一人で何とかしてくれるでしょう。レヴィットさんが一人で頑張ってもどうにもならないようなら、どこからともなくコウモリの格好をしたタフガイが現れるでしょうから、すかさず「アルフィー泣かすな馬鹿やろー」と怒声を浴びせつつ、石の詰まったカバン、あるいはそこらの角材でタフガイの後頭部をぶん殴るわけです。そしてマーク・ハミル声で高笑いするわけです。

ぐへははははははははははは。


何の話でしたっけ。
そうそう、クリストファー・ノーランですよ。
ノーラン監督がマーク・ストロングと組んで映画撮ってくれないかと、ワタクシもう久しく期待しているんでございますがね。堅実な演技力としゅっとした風貌の持ち主であるソーターさん、割とノーラン好みの俳優だと思うのですよ。

そのソーターさんといえば、ウサマ・ビン・ラディン暗殺を題材とした、キャスリーン・ビグロー監督による新作『Zero Dark Thirty』の北米公開が来月に迫ってまいりました。

ZERO DARK THIRTY - Official Trailer - In Theaters 12/19


Zero Dark Thirty - Official Trailer #2 (HD)


今回はまともな↓髪型のようです。よかったよかった。

From his command post inside the CIA, Mark Strong directs the fight against the world's most dangerous man in Columbia Pictures' revealing new thriller directed by Kathryn Bigelow, ZERO DARK THIRTY. | Rope of Silicon

ソーターさんはCIAの作戦司令官という役どころのようで。題材からして悪役というポジションではなさそうではございますが、トレーラーの苛立ちもあらわなセリフ回しから鑑みるに、なかなかイヤな奴のような予感がいたします。

公開が待たれる『Welcome to the Punch』や刑事ドラマ『Blood』でも悪役ではなさそうですし、ドラマ『The Long Firm』に始まり『シリアナ』『トリスタン+ イゾルデ』『サンシャイン2057』『スターダスト』『バビロンAD』『ヴィクトリア女王 世紀の愛』『シャーロック・ホームズ』『キックアス』『ロビン・フッド』『グリーン・ランタン』『ジョン・カーター』『ザ・ガード』と6年に渡る怒濤の悪役道からもそろそろ降りられるかに見えるソーターさんではございます。しかしファッション雑誌が悪役俳優特集をするとなれば、この人を外すという手はございません。

Bad Guys: The GQ Villains Portfolio featuring Benicio Del Toro, Malcolm McDowell, and Others: Movies + TV: GQ

唇から安全ピン。よくお似合いです。
動画では1分の枠内で「スーツケースに何かを押し込んでいる所」を演じるソーターさん、無駄に怖い。しかし去り際が何ともカッコいいですなあ。一方インタヴューでは温和で地に足の着いたお人柄が伺われます。悪役としてはシェイクスピアのリチャード三世がお気に入りとのこと。

インタヴューは一部を動画で見ることができます。こちらで。左側にある点線矢印をクリックすると質問の項目が切り替わります。とりわけ、前から三番目の「役から抜け出すのは大変じゃありませんか?」への受け答えはマーク・ストロング好きなら必見のステキ動画でございます。「悪役を演じて帰ったからって、家で奥さんや子供たちを怖がらせるようなことはないよ」、「よく言われるんだけど、僕が初めて悪人(The Long Firmのハリー)を演じることになった時、僕なんかじゃ、あの役が持つ悪の深みを表現できやしないだろう、とみんな思ったらしい。僕は”いい人すぎる”から、だってさ。実際、いい人でありたいと思うよ」とおっしゃる時の表情なんて、実によろしうございますね。

最後の「”お~、いい天気だなあ”という台詞をまずは普段の自分として、次に悪役として、言ってみてください」という項目もたいへん面白い。しかし何故マルコム・マクダウェルだけBGMつきなんでしょうか笑。
ソーターさんはといえば、このリクエストに対してあえて「自分/悪役」の演じ分けをすることなく、こう答えてらっしゃいます。
「文脈から切り離されたかたちでは演じられないと思う。演じるとしても、普段の僕と同じ喋り方をになるだろう、(善人役も悪人役も)演じ方自体に違いはないから。善玉たちは、自分が正しいと信じていることをやっているわけだし、悪役たちだって、自分のことを必ずしも悪人と思っているわけじゃない。それに、本当に悪い奴なら、自分が悪人だと気付かれないように気をつけるだろうから、あえて邪悪そうな喋り方をしたりはしないんじゃないかな」

全体に「役から抜け出すのが大変だから、ホテルの部屋はいつも緩衝剤を張り巡らせた精神病院仕様にしてるんだ」とか「自分の邪悪度?47.6998%かな」といったジョークを交えながらのベニチオ・デル・トロや、「夢にまで出て来るほど怖い悪党」の例として家主や国税庁の役人を挙げるロン・パールマンと比べますと、わざわざ「こういう言い方が許されるとして...」という留保をつけながら”悪役を演じる楽しさ”について語ったり、今あなたが一番怖いものは何かという質問に対して「他の人に対してきちんと振る舞わない人とか、市民を殺す独裁者とか」と言うソーターさんの受け答えはたいへん生真面目であり、生真面目すぎる感さえございます。

いいのです。
何度でも申しましょう、ギャングや殺し屋や冷血漢や卑劣漢やおっかない独裁者の役どころに引っ張りだこである一方、実際は謙虚で人当たりのいいナイスガイとしてよく知られているソーターさんでございますもの。それはもう、テレビ、映画、小説、漫画などの創作作品をテーマとした用語集サイト「TV Tropes」も”super nice and humble(謙虚だし超いい人)”と太鼓判を押すほどのナイスっぷりでございます。
Mark Strong - Television Tropes & Idioms

↑の見出し画像に使われているのは『ロックンローラ』のアーチーおじさんでございますが、『ロックンローラ』といえば続編の話はどうなったんでございましょうか。ガイ・リッチーは続編の脚本をもう書き上げたというようなことを随分前に言っていたようですが、果たして制作のめどはついているのやら。アーチーおじさんことマーク・ストロングも、ハンサム・ボブことトム・ハーディも、この5年の間にすっかり売れっ子になったことですし、この忙しい二人を招集するだけでも大変そうです。といいますか、トム・ハーディはもはや別人としか思えないほど筋肉隆々になってしまいましたから、もし再びなよっとしたハンサム・ボブを演じるとあれば、『マシニスト』前のクリスチャン・ベール並みの苛酷なダイエットをせねばなりますまい。
そうこうしているうちに、ソーターさんにはさらなる新作のお声がかかったりしておりますし。
 
Mark Strong set for 'Sleep' - Entertainment News, Film News, Media - Variety

ニコール・キッドマンとの共演ですって。
バットマンやスーパーマンがそろい踏むアメコミ『ジャスティス・リーグ』の実写映画化企画も進んでいるとのことで、ソーターさんが『グリーン・ランタン』に続いて悪役シネストロとして出演なさるのかどうかも気になる所です。ワタクシとしてはソーターさんには、全身黄色タイツのおっさんシネストロよりも、黒いスーツをビシッと着込んで、スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーを演じていただきたいのです。まず実現しないキャスティングだとは分かっておりますけどね。何せルーサー役には、ケヴィン・スペイシーというこの上なく強力で魅力的な先任者がいるわけですから。
しかし、もし、もしもですよ、マーク・ストロング演じる仏頂面ルーサーのハゲ頭を、ジュード・ロウ演じるジョーカーさんがニヤニヤスマイル全開でおちょくるといったシーンが、もしも実現したなら!
おお、ワタクシは2秒かそこらのそのシーンを見るためだけにでも、喜んで劇場に足を運びますとも。