のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ドイル忌

2009-07-07 | 忌日
本日は
サー・アーサー・コナン・ドイルの命日でございます。

のろはシャーロッキアンってわけではございませんが、かの『奇岩城』でのホームズ先生の扱いに憤激して「金輪際ルブランは読まねえ」と心に決めた程度にはホームズファンでございます。
またオリジナルストーリーの映画や、いわゆるパスティーシュ、贋作にも(この制作者たちはことごとく「自分が創作した聡明で美しいヒロインとホームズとの淡い恋」を折り込むという誘惑に抗することができんのか?と思いつつも)食指をのばしてみましたし、NHKで放送されていたグラナダTV制作ジェレミー・ブレット主演のドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』は可能なかぎり録りため、繰り返し繰り返し、飽きもせず見たものでございます。ちなみにこのドラマでは『ソア橋』と『ブルースパーティントン潜航艇』がお気に入りでございました。

あの素晴らしいホームズ像を残して、ブレット氏がお亡くなりになってはや14年。
色々な媒体で散々描かれてきたテーマである上に、完璧という言葉がふさわしいあのブレット・ホームズが世に出てしまった後では、映画やドラマにおいて新たな「シャーロック・ホームズの冒険」を描く試みはほとんど無謀なことにすら思われます。
だもんですから、ここに至って新たなホームズ映画が作られること、しかも監督はスタイリッシュな犯罪映画で知られるガイ・リッチーであることを知ってのろはちょっと驚きました。
キャストを知ってなおさら驚きました。
ロバート・ダウニー・Jr、あの人なつっこい顔の男がホームズ先生ですと?
ジュード・ロウ、あの抜きん出た美貌の持ち主がワトスン君ですと?
こりゃ何かの間違いではと思ったものの、ポスターを見たら何となく納得が行きました。


Copyright : 2009 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

つまりあれでございますね。
いわゆる「全く新しい現代的なホームズ像」を作ろうっていう試みなんでございますねこれは。

New Sherlock Holmes HD Trailer | Robert Downey Jr., Jude Law


これくらい大胆にモデルチェンジした方が、制作者も自由に作ることができるこってございましょう。
鑑賞する側も、ここまでやれば「これはこういうもんなんだ」と割り切って見ることができて結構かと存じます。
トレーラーを見るかぎり、なかなか面白そうではございませんか。もっとも映画そのものよりトレーラーの方が面白いという事態は往々にしてございますから、あまり期待を膨らませすぎずに年末の公開を待ちたいと思います。

それにしてもジュード・ロウはいい感じに禿げ上がってまいりましたね。
のろは特にファンというわけではございませんが、容色だけでなく演技力にも定評のあるこの俳優がどういう風に歳をとって行くのか、楽しみにしていなくもないのでございます。また中堅と呼ばれる中でもまだ若さの残る今のうちに、『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンのような、ガッと華のある極悪人を演じていただきたいとも思っております。
ちなみに彼は駆け出しの頃、上述のドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』にて『ショスコム荘』の見習い騎手役で出ております。トリックの上では重要な人物ながらセリフはほとんど無く、冒頭とラストにちょっと顔が出るだけのチョイ役でございました。それが今やホームズ先生の片腕たるワトスン君でございますから、これは随分な出世と申せましょう。
今後さらに生え際の後退が進んだら、しかめ面をしてモリアーティ教授を演じていただきたいものでございます。

何です。
モリアーティはもっと陰気な顔立ちじゃなきゃいかんって。
まあ、それはそうではございますけれども、ホームズ先生だって常に薄い鷲鼻と秀でた額と知的な顔立ちを兼ね備えた俳優に恵まれたわけではございますまい。思い入れのある作品の映画化を楽しもうと思ったら、多少のことには目をつぶらねばならないというのは鑑賞者の心構えとして

初歩だよワトスン君。




すみません。
言ってみたかっただけです。

『奇岩城』でのホームズ先生の扱い
アルセーヌ・ルパンものの最高傑作とも称される『奇岩城』、もちろんモーリス・ルブランの手になる作品ですが、「ホームズ」が登場します。ラストではルパンをかばって飛び出したルパンの(この話での)妻を射殺したあげく、逆上したルパンに首を締められて抵抗もできずじたばた、という醜態をさらします。原作ではシャーロック.ホームズSherlock Holmesのアナグラムであるエルロック・ショルメHerlock Sholmèsという名前で(あからさまにホームズのパロディと分かるとはいえ)いちおう別人ということになっているようですが、日本語版ではシャーロック・ホームズと訳されています。ワタクシがかつて読んだ『奇岩城』の挿絵には、ご丁寧にも鹿撃ち帽をかぶった鷲鼻の人物が、女を撃っちゃってああしまった!てな顔で描かれておりました。