のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『アーツ&クラフツ』展

2008-10-16 | 展覧会
生活と芸術 アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで  へ行ってまいりました。

アーツ&クラフツのものがほとんどかと思いきや、運動に理念的な影響を受けたとされる中欧や北欧、そして日本の民芸運動の工芸品などもたくさん展示されておりまして、面白うございました。
ただその分、アーツ&クラフツの名の下にいろいろなものをまとめすぎと申しましょうか、ちと散漫な印象がないでもございませんでした。
アーツ&クラフツが広くおよぼした影響というのが、デザイン面ではなくむしろ思想的な面においてでございましたので、展示品からは直接その影響が読み取りづらいという難点があったかなと。まあ逆に考えれば、これまで個々の潮流として見ていたウィーン分離派や日本の民芸運動といったものを、同じ理念を受け継いだ美術活動として見る機会をいただいた、と申せましょう。

その理念とはひと言で申せば「アンチ産業革命」。
即ち、品質的にもデザイン的にも粗悪な工業品の大量流通に意を唱えたわけでございます。
生活と芸術の一致、自然・農村への回帰、職人技の尊重といったアーツ&クラフツの精神はしかし、ドイツ、オーストリア、中欧諸国に日本と、それぞれの土地においてこれでもかとばかり異なったデザインのうちに見いだされておりました。
ウィリアム・モリスの壁紙とコロマン・モーザーの椅子とスラヴ感満載なロシアの工芸品、それに棟方志功の版画が同じ展覧会場で見られるというのはなかなか珍しい体験ではないかと。

そう、あったのでございますよ、ウィーン分離派の展示も。
分離派バンザイなのろは大喜びでございました。
展示されているものは、おそらく全て去年サントリーミュージアムで開催された『20世紀の夢ーモダン・デザイン再訪』展にも出ていたものでございましたが、いいものは何度見てもいいもんでございます。
オットー・ヴァーグナーの家具、ヨーゼフ・ホフマンの花入れ、ウィーン工房の拝みたくなるほどカッコイイ葉書や封筒。




まあそんなわけで、ウィリアム・モリスの空間恐怖的なデザインが苦手な方でも、何かかにか楽しめるものがある展覧会になっております。
植物の図案化については大いに勉強になりますし、時代の気運と申しましょうか、各地での盛り上がりといったものも感じられ、振り返ってみればなかなかいい展覧会でございました。