のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『1920年代の画家たち』展

2007-03-01 | 展覧会
ヘミングウェイが愛した街 1920年代の巴里の画家たち展 美術館「えき」KYOTO へ行ってまいりました。



タイトルに堂々と名前が出ているわりには
ヘミングウェイ関連の展示は、全体からするとほんの少しでございました。
のろはヘミングウェイファンではないので、ちっとも構やいたしませんでしたが
遺品や生原稿を期待して行かれるかたには、ちと肩すかしかもしれません。

メインの展示はと申しますと
1920年代当時、パリを拠点に活動していた主要な画家たちをけっこうまんべんなく取り上げ、
かつ、ほとんどは1人の画家につき数点の作品を展示しておりますので、なかなかにボリュームがございました。
美術館「えき」、いつもながら、決して広くはないスペースにがんばって展示してらっしゃいます。

ワタクシごとになりますが
ドンゲンのポドリ・ダッソン侯爵夫人に再会できたのは、思いがけぬ喜びでございました。
郷里の美術館でこの絵に出会ったのはもう15年ほど以前のこと、
のろの美術館通い暦もまだ浅かりし日でございました。
ドンゲンの作品を図版ですら見たことがなかったのろ、その大胆な色使いにすっかり眼を奪われ
「人肌にこんなぎらぎらの緑色を使っているのに、何故キモチワルイ絵にならないのだらうか」
と、ちと失礼な感想を抱いたものでございます。

時を隔てて本展で、この作品と対面して
心に残りましたのは、ぎらりとしたその色彩よりも
絵の中の夫人が発する、あまりにもはかなげな雰囲気でございました。
むき出しの膝がしらも、椅子の肘掛けに添えられた細い指先も
優雅な微笑みや「侯爵夫人」という大仰な肩書きとは釣り合わぬほどに、はかなげではございませんか。
ドンゲンの人物画において特徴的な、黒目がちの大きなひとみは
焦点が定まっているのやらいないのやら、こちらを見ているのやらいないのやら
判然としない視線を投げかけ、ただただうっとりと微笑んでおります。

実際のダッソン侯爵夫人がいかなる人物であったのかは分かりませんが
画家の眼が捉え、画布の上に表現したのは
夫人の似姿というよりも、彼女の上に見いだされたもろくはかない生命の輝きであったろうかと
のろには思われたのでございます。


次回にちょっとだけ続きます。