読書な日々

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『パリ五月革命私論』

2018年05月16日 | 評論
西川長夫『パリ五月革命私論』(平凡社、2011年)

この本が出ていることを朝日新聞の読書欄で知ったので、あの西川長夫がこんなもの書いているのかと思い、読んでみた。

長い間、西川長夫といえば京都にある立命館大学で教員をしていた方なので、お名前だけは何度も見たことがあるし読んだこともあるが、一度も御尊顔を拝したことはない。今回もこれを書くにあたって、どんなお顔だったのかなとググってみて、初めてなるほどと感じたしだいである。

1968年のパリの五月革命というのは、旧態依然とした大学教育を変えようとする学生運動から、フランス社会の改革にまで広がった運動のことを指すが、時代的にちょうどベトナム反戦運動や、日本でも学生運動の広がりと同時期であったこともあり、社会変革の大きなうねりの一つと見なされている。

この時期にちょうどパリにいてこの出来事を直接に見聞した著者が、その意義や影響などをまとめたのが本書である。

事実の経緯などは、あまりに複雑(詳細)すぎて、これを研究対象にしようという人には意味があるかもしれないが、そうでない私には退屈だった。

私にとって非常に興味深かったのは、第四章の知識人の問題だった。なんと言っても、森有正や加藤周一、ロラン・バルト、アルチュセールなどの私が学生時代によく読んだ(あるいはよく人から聞いた)人々がどんな様子だったか、リアルに書かれているからだ。

私が学生だった頃にもまだバルトなんかの全盛期で、ちょうどこの時期にバルトがセミナーで扱っていたバルザックの『サラジーヌ』を分析した『S/Z』なんかも貪るように読んだものだった。

この事件の後、フランスの大学はどう変わったのか・変わらなかったのか、知りたいところだが。

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