仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

阿弥陀さまの本籍

2021年09月10日 | いい話

法話メモ帳より

    

 有名な白隠禅師がおられたころ、近くにありがたい老女の念仏者がいました。雲水の若僧であった禅師の寺のまえを通りすぎて、いつも向うの真宗の寺へまえりにいっていたのです。

 ある日、禅師が老女にたずねました。

「おばあさん、あなたはなぜ向うのお寺へ参るのか」

「はい、向うのお寺には親様がおられるからですわい」

「親様とは阿弥陀さんのことかい、阿弥陀さまは、西方十万億の遠い極楽におられるのではないのかね、そんな遠いところの仏さまをおがんでどうするかね」 

すると、老女は腰をのばして禅師の耳もとまで口をもってゆき、大きな声で、「南無阿弥陀仏」ととなえて、

「親さまは、ここに来ておられるわい」

とこたえたのです。禅師はびっくりしましたが、内心、この老女の念仏はほんものだと感じました。しかし、さらに老女をいじめるようにききただしました。

「阿弥陀さまがここに来られておられるのならば、なぜお経に西方十万億の遠いところにおられると説かれてあるのかね。お経はウソをとかれているともいうのかね」

「お経にウソがあるはずがない。西方十万億の極楽浄土は阿弥陀さまの本籍で、いま、ここへ来ておってくがさる南無阿弥陀仏は阿弥陀さまの現住所でありますのじゃ」

 阿弥陀さまの本籍と現住所、なるほどこの老女のこたえはうまいことをいったものだと感心させられさせられます。

 さすかに白隠禅師もこの名答には参ったらしい。それにしても西方十万億の浄土が阿弥陀仏の本籍で、今私の上にとどいてくださってあるお念仏が阿弥陀仏の現住所だとは誠に有難い味おいであると感じいるのであります。老女の生きた法味であります。(以上)

 

江戸時代に本籍という概念がないので、明治以後作られた話でしょう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おまえはダイヤモンドだった | トップ | 地獄と極楽 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

いい話」カテゴリの最新記事