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LGBT条例 不幸せな結末

2022年05月16日 | 現代の病理

『産経新聞』(2022.5.15日)に麗澤大の八木俊次教授が「LGBT条例 不幸せな結末」の題で執筆されていた。頭の部分と後半部分を転載します。

 

 

昨年5月、自民党で検討されていた「LGBT理解増進法案」に対し異論が続出し、国会提出が見送られたことは記憶に新しい。わかりやすく説明すれば、身体は男性でも、自分で女性であると認識(性自認)するならば、周りの者は、その人が銭湯で女湯に入ることを認めなければ「差別」と非難されてしまうというのが「法案」の論理たった。この種の問題は、一般の人たちを「差別」と糾弾するのではなく、より慎重に議論することが重要であり、「法案」が潰れるのはやむを得ないことだった。

 しかし今、この「法案」の焼き直しのような「性の多様性に係る理解増進に関する条例(仮称)」の制定が、埼玉県議会で進められている。(中略)

 

 

 注目すべきは、条例案もまた性自認を理由とする「不当な差別」も禁止している点だ。性自認は自分の性別をどう認識するかをいい、生物学的性別に関係なく、自分が認識する性別を優先する。男性に生まれても女性と自認すれば女性として、女性に生まれても男性と自認すれば男性として扱わなければならない。条例案は「性のおり方が男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様であり」との理解を前提としている。性別は男女の中間もあるグラデーションで、性別は自分で選択するという、1990年代に始まった社会運動フェミニズム第3期の考え方を反映したものだが、科学的に疑問かおり、問題が多い。

 4月4日、自民党本部の「性的マイノリティに関する特命委員会」で、性同一性障害や両性愛、女性同性愛など当事者によるヒアリングが行われたが、関係者によると、この場では「性自認」という概念が社会制度に導入され、性別を自己決定できるとする考えが伸長していくと、女性の権利法益を奪うとめ意見が相次いだという。以下、意見の一部を紹介する。

▼トランス女性(生物学的性別は男性だが女性と自認する者)が女性の空間を使えることで、女性と称する男性も入り、女性だけの安全な空間がなくなる。レイプから逃れるシェルターがなくなり、被害者が頼るところがなくなる。しかし、問題にすると逆に攻撃される。一番弱い女性が攻撃されている。「性自認」は現実では「性自称」、トランス女性を女性と認めることが男権拡大になる。▼トランスレズビアン(生まれつきは男性だが女性と自認し性愛の対象は女性である者)を自称する者からセクハラや性暴力を受ける例かおるが、問題にすると「差別主義者」や「ヘイト」のレッテルを貼られる。▼性別は性自認ではなく身体で決めてほしい。性自認を主張する人の自己実現のため6000万人の女性の生存権が脅かされ、侵害されることがあってはならない。多くの女性の中では、不安が広かっている。

 

教師が子供に性転換を

 

米国ではこの種の問題に対する社会的反発が顕在化している。3月には、複数の有力女性団体が「性別」や「女性」などの言葉を定義した「女性権利章典」を共同で発表し、女性専用スペースを守るために言葉の定義を明確にする必要があるとした。性別は「出生時の生物学的性」、女性は「生物学的生殖器官が卵子を産むように発達した個人」と定義し、法律での明文化を求めた。

 ニュージャージー州では4月、女性刑務所に移管されたトランス女性が女性2人を妊娠させたことが発覚した。トランス女性が女子スポーツに進出し、成績上位を占めた結果、女性選手が奨学金付きの大学推薦入学伜を失うなどの問題も議論を呼んでいる。

 埼玉県の条例案の成立で幼稚園や小学校低学年から性的指向や性自認に関する教育が行われる可能性もあるが、フロリダ州では3月、そうした教育を禁止する州法を制定した。オハイオ州など10近い州で同様の法案が提出されている。

 米国では教師が親に無断で子供に早期の性別適合(いわゆる性転換)治療を勧め、子供が後悔する事例も多発している。アーカンソー州では昨年4月、「思春期の子供を実験から守る」として米国初の18歳未満への性別適合治療を禁止する州法を制定した。20近い州で同様の法案が提出されている。

 埼玉県の条例案には同性愛・両性愛やトランスジェンダーは生まれつきで不可逆的との思い込みがある。しかし、科学研究には、それらは生まれつきでなく、虐待や性的虐待など幼少期の有害な経験や思春期後の性体験という環境要因に基づくもので、「修復治療」などで異性愛や生物学的性。別に沿った性自認に戻ることを明らかにするものもある(同性愛研究の第一人者、ニール・ホワイトヘッド博士の見解を紹介した月刊「正論」6月号の拙稿 「『同性愛は先天的』否定する科学的証拠」参照)。

 トランスジェンダーの相談サイト「セックスーチェンジーリグレット」の主宰者で自らもトランスジェンダーだった米国のウォルトーヘイヤー氏は「正論」5月号インタビューで「誰も性は変えることができないし、変える必要がない」と語る。自分の性が生物学的性と異なると感じるようになる原因は虐待など「幼少期の有害な経験」にあり、重要なのは心理面の手当てだと指摘。ホルモン治療や性転換手術を「現代最大の医療詐欺」と批判する。

 これら全てが唯一の科学的真理と断定するつもりはない。ただ、「性の多様性に係る理解増進」と称し「差別」のレッテル貼りを量産し、対立や分断を招いても、女性の権利を侵害するだけで、決して問題の当事者の利益にもならない。埼玉県の条例案についても再考を求めたい。

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