正直な話、中学生の頃に夢中になったバンドってやっぱり永遠だと思う
一番多感な時期だし一番憧れを投影しやすい時期だし、私にとって吉村秀樹はそんな存在だったし
大人になってようやくライブに行ける様になって聴けた曲たちはその度に感動していた
というか、ブッチャーズを好きな人って「ただ好き」って人が少ないように思う
深く感情移入するくらいに大好きって人が多いように思える
私にとってもそうだったし、
人生の半分以上聴き続け追い駆け続けて来たバンドマンの訃報に関して言えば
今でも信じられないし、信じたくない、自分を構成している部品の一部が抜け落ちたような感情
ここまでバンドマンの訃報が辛かったことなど今までの人生で初めての経験だった
それはやっぱり思春期の時期に、
疎外感を受けながら聴き続けた音楽だから
心の支えだったからこそこんなにもショックを受け現実を直視出来ないという現実が待っていたんだと思う。
それくらい私個人的にブッチャーズの存在に憧れ、揺ぎ無い、永遠のような存在だったという話です。
あの頃一生懸命レコード店でブッチャーズの音源を集めた記憶はある種の宝ものです。
なんせ置いてる店が少なかったしね(笑
許せなかったのは、
ブッチャーズの音楽にこれで「既に亡くなっている」という付加価値が生まれてしまった
フラットであり続けて欲しかったバンドの音楽にフラットさが消えてしまうのは
ファンとしては耐えられなかったし、
もっと違う形で評価されて欲しいバンドだった
もう二度と現在進行形の意識でブッチャーズの音源を聴ける事はない・・・そう思ったからこそ
初めてミュージシャンの訃報で泣いたし、ファンとして心が苦しかった。それくらい大きな事だった。
だけど、このアルバムを聴いて確かに変わった意識もちゃんとあって
「最後まで現在進行形だったんだな」という確信
それによって最早亡くなってるとかフラットだとか関係なく
「最後まで最高を貫き通せたファン冥利に尽きるバンド」という新しいイメージを手に入れることが出来た
このアルバムを聴いて今一番思うのはそういうありがたさ、そしてメンバーに対する感謝の気持ち。
少なくとも、これを聴く前と聴いた後じゃ意識も悲しみの量も全然違う。
ブッチャーズをずっと追いかけて来た人
昔好きだった人
そしてこれから聴こうとしていた人、その総ての人にもれなく聴いてもらいたい
前置きが長くなりましたがつまりは今回も今回で最高に格好良いロック・アルバムだという事です。
最後の曲が「これから」を予感させる実験性も含めたナンバーであったことで
より「進行形」という意識はしっかりと高まった
「伝説」を目指さず
最後までストイックに音楽に、ロックサウンドに向き合い続けたメンバーの生き様が反映されている。
ああ良かった、最後までブッチャーズはブッチャーズであり続けた
ブッチャーズを譲らなかったんだ、としっかりと思える
その意味ではもしかして今までで一番聴いてて「嬉しさ」を感じ取れたアルバムかもしれません
最高傑作を常に生み出し続けてきたブッチャーズの最新の最高傑作がこれです。
そうはっきりと胸を張っていえるアルバムだと私個人の裁量にて思います。
どっからどう聴いても最高のアルバムなんですが
往年のブッチャーズらしさを最大限に活かしつつそれを磨き上げている
そういうアルバムに仕上がってるんじゃないかと思います
「安心」と「発見」が両方詰まってるというか
「これだよこれ!」と「こう来たか!」がちゃんと同居出来ているアルバム
あの感傷をくすぐり感情を揺さぶる偉大なブッチャーズの魂が健在も健在と言える音像
同時に今までの経験をフルに生かしある種極まった印象も受ける作品なので
これが最後というのも誤解を恐れずに言えば納得なのかもしれない
それくらい「らしさ」溢れる、
旨味溢れる作品であり
より一層洗練されたブッチャーズ・サウンドを存分に楽しめるアルバムになっていると思います
今まで培った「らしさ」をより研ぎ澄まして鳴らしている感覚の作品ですね。
個人的に象徴的だと思えたのがライブでも定番化していた「デストロイヤー」、
吉村秀樹は歌の上手さというよりはそのどっしりと重い声質の良さで勝負してた感があって
その揺ぎ無さにファンは惹かれてたと思うんですけど
この曲は「歌が上手い」と単純に感じます
別に普段と違う歌い方でもないけど
普段以上に情感だったり小気味よさ、哀愁が歌に付随している気もしていて
遺作となったアルバムで「向上」や「進化」を感じ取れるのが随一だと思える名曲に仕上がっています
こういうここに来てある種の伸び代が感じられる曲があるからこそまだ「これから」のバンドだと思える
最後まで「向上」を止めずにやり切ったバンドだったなあってしみじみ思えるのがとても嬉しい。
青春のくすぐったさ、甘酸っぱい感じが実直に反映されたメロディとアレンジも素敵です。
一曲目の「レクイエム」はテクニカル且つ勢いも止めない独特のドラミングと
洗練されている「美しい激しさ」が存分に楽しめる覚悟ある名曲
「コリないメンメン」もここ最近のライブではお馴染みだった初期を思わせるパンキッシュな一曲
そしてここに来て更に丁寧なメロディが光っている「ディストーション」もまた堪らない
この曲を聴けば轟音だけでなくメロディに関しても腐心していたバンドだというのがよく分かる
王道のブッチャーズ節が色濃く注入されている「サイダー」に
繋ぎかと思いきや意外とガッツリ鳴らすインストナンバー「Techno!Chidoriashi」の盛り上がり
そしてアレンジ面で新鮮さと不思議な、でも癖になる感触を残す「Goth」は
ブッチャーズ流オルタナティブ・ロックの一つの極みとも言えるナンバー
かゆいところに手が届く感触が非常に堪らない一曲です
嵐のように激しく聴き手を揺さぶる「ハレルヤ」は今作でも際立って爆音っぷりが痛快な一曲
そして感傷に触れるブッチャーズの良さが存分に反映されている「youth パラレルなユニゾン」、
ギターの音色と儚げな歌声に触れてるだけで泣きそうになる楽曲です
この曲もまた感傷タイプの楽曲では一つの到達点だと思える曲
最後は渋いギターの音色とメリハリの付いたまた新しい音像を予見させる「アンニュイ」、
今までのテイストがしっかりとここ近年のブッチャーズというフィルターを通して鳴らされている作品
だけどこの曲だけはそこから外れた、「ここからのブッチャーズ」を感じさせる曲になっていて
前述のように最後まで「進化」や「新機軸」を掴む事を選択し続けた
そういうブッチャーズの高い志が反映されてるラストに仕上がっているので
その意味でも「現在進行形」「伝説にならない」という意思はしっかりと感じられる
正に絶妙なバランスとクオリティの新作になってくれたな、と。
今作が吉村秀樹の生前最後のアルバム、という事実と感傷を一切取り除いたとしても
余裕で傑作じゃない?って言い切れるような、そういうアルバムに仕上がっていて本当に良かった。
何より、最後の最後まで新鮮さや表現のその先を求め続けていたと言う事実が肌で感じ取れた事が
このバンドのファンを長年やって来た者としては最高のご褒美だし誇らしいです。
ブッチャーズがブッチャーズを二つの意味で貫き通したアルバム。
是非多くの方に聴いて触れて欲しいな、と願う。
そしてゆくゆくはアナログ化も・・・。
色々書いたけど、純粋に、このアルバムが大好きです。
「あの頃」(青春)の匂いと今の奮闘が正しく交わっている趣溢れる作品ですね。
轟音やオルタナティブ・ロック、情感漂う歌声がお好きな人は勿論
そういうセンチメンタルさが滲んだ音楽が好きな人にも是非伝えたい一品
名盤だと思います。
「全曲好き」という前提の上で敢えてオススメ挙げると、
小松さんの記名性溢れるドラミングが痛快な「レクイエム」、
甘酸っぱさと焦燥感、そして最後には素朴な感動が滲む「デストロイヤー」、
不思議なアレンジが癖になる「Goth」、
そして感傷的サウンドの極み「youth パラレルなユニゾン」、
メロディメイクが見事な「ディストーション」辺りが特にお気に入りです。ずっと聴き続けます。
聴き続けられます、この音ならば。