超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

MONOBRIGHT three/MONOBRIGHT

2013-11-22 19:09:07 | 音楽



















淋しいだけなら他へ行って欲しい
ふざけた人生で私 まだ笑えない (風街ロマンスパイダー)






















4人に戻って初のフルアルバム・・・ですが
ここ数作のコンセプチュアルさに比べると「シンプルに良い曲を詰め込んだ」という印象
かつ元々の「ひねくれバンド」的な方向性の楽曲も多くある種原点に立ち返った感じでもあるんですが
ただ、タイトルから察する単純な「原点回帰」って作品でも全然なくて
ここ数年の経験もきちんと生かされている
それは楽曲に於けるエネルギッシュさだったりパワフルさ、所謂「突き抜けた」感覚だったり
アレンジや曲調の幅広さ、詞のテーマ性の多様化なんかも継続して貫かれている
ここ数作で得た経験や方向性をきっちり血肉化した上で
元々のひねくれ、変態要素を前面にも出している
そういう元来の要素と「ADVENTURE」以降の分かりやすい振り切れ感を正しく融合させたのが今作であり
その意味では「帰還」であり「地続き」でもある、今出す類の作品としては限りなく正解に近い(と、思う)
また新しい一歩を予感させるアルバムでありこれ自体もまた傑作という幸福な作品に仕上がってると感じました。

個人的にMONOBRIGHTが本当の意味で脱皮したアルバムは「ADVENTURE」だと思っていて
あのアルバムはMONOBRIGHTが如何に正しい音楽フリークなのかを証明するような傑作で
今でも名盤だから聴いて欲しい、って思ってるんですが
あのアルバムの何が良かったか、って言えば一曲一曲の「振り切れ感」だったんですよね
とことんまでその方向性をやり切る潔さに
その上でそれを出来ちゃうバンドの地力もまた凄かった
そしてそれを更に肥大させてパンクやシューゲイザーまで飲み込んだらしさに留まらない傑作「ACME」
かと思ったらライブに於ける躍動感や温か味、
純粋な楽しさを完パケした目的あるアルバム「新造ライブレーションズ」と
最早ダンスロックやひねくれ系ギターロックという枠では収まらない活動をしてきた訳で
それらの成果がしっかりと血肉化している今作を聴けたのはやっぱりファンとしては嬉しいですよね
ちゃんと振り切れ感は印象として残るし、幅が狭い感じもしないし、かつ温か味も存在しているという
ある種ここ数年の活動に対する回答のようなアルバムに仕上がっている、という気もします

5人の時は本当に音に厚みが出ていて相当好みだったんですが
4人に戻っても所謂「物足りなさ」を感じない、
一人一人の音の存在感を増すことでそういう印象になるのを防いでる感じ
正しく磨き上げられよりタフになったバンドサウンドを堪能するだけでも随分楽しいアルバムですね
前述のような印象からするとこれまでの総まとめ、もっと言えば素の感覚が色濃く反映されてる作品であり
コンセプチュアルとか新しい音像というよりは今のMONOBRIGHTの経験や地力が出ているアルバム
培った経験を活かしてバンバンキャッチーな名曲を作りました、みたいな6枚目で
その意味では今までの成果が宿った作品でもありますね
時間もコンパクトでサッと聴けてグッと来るタイプの作品なので今の代表作としては相応しい
コンセプチュアルではないけれど、意図は汲み取りやすい目的もしっかりと感じられる傑作かと


今作では割と変態成分が多めに注入されてもいますね
まず2曲目の「OYOVIDENAI」は初聴きだと誰もが変態だと思うようないかれた曲です(笑
でも何度か聴いてるとその狂気にも近い変態っぷりが癖になってきます
またストーカーちっくな「トライアングリー」での綺麗事じゃない明け透けな感情の放出や
「妄想難破奇譚」では歌い方からして変態の匂いがする(笑 でもメロは超ポップ、という
男の持つ変態さや意地の悪い部分を上手く頷けるぐらいにキャッチーに料理して提示してる印象
そういうMONOBRIGHTらしい記名性のある楽曲が多々配置されてるのが初期からのリスナーとしても
嬉しいですし
「トライアングリー」はそれに加えて90年代前半のロックのようなノスタルジーさ
ちょっと懐かしいテイストのアレンジを今風に還元して演奏しているオシャレさが素敵でした。

一方で、そういう「君と僕」だけの世界に留まらない楽曲も多く
往年の歌謡曲をきちんとMONOBRIGHTのフィルターに通して再構築した「風街ロマンスパイダー」、
タイトルが意味深だと思ってたら素直なアイドル賛辞ソングで逆に意表を突かれた「アイドル」、
多幸感溢れるパレードソング「色色」に
スタイリッシュなリフを中心に聴かせる「ブランニューウェーブ」等
詞のテーマにしろアレンジにしろ幅の広さを感じさせる構成にもなっていて
特に今回はメロディのメリハリが凄くよく出来てる感じがします
例えば「アイドル」なんかはAメロとサビじゃ全然印象が違いすぎで面白い曲だし
「ブランニューウェーブ」もダウナーでクールな歌いだしから加熱するサビの気持ち良さが癖になる
変態曲代表の「トライアングリー」も攻めるABメロからユニゾンで聴かせるサビへの変化がユニークな曲
そういう構成の練り込み具合に関しても評価されていいアルバムだと思います

そして、今作を代表する名曲ふたつ「youth」と「空中YOU WAY」
「youth」はシリアスな空気感と瑞々しいメロディ、間奏の滾ってるバンドサウンドの熱さと
一曲の中に様々な要素が入りつつも最終的にはストレートに名曲と感じられる芯の強いナンバー
記憶の中の風景を実直に想起させる歌詞に関しても完成度高いと思います

「空中YOU WAY」は今作でも随一の推し曲ですね
今までのキラーチューンと比べても更に突き抜け度はUP
でも、この曲の凄い部分は加えて刹那的な感触が残る事によって生まれるカタルシス
勢いがあるだけじゃなく情感すら含んだサビの出来栄えとただ単にキャッチーなだけという気もしない
ある種の「感傷」も含まれている奥深さにもあるんじゃないかと個人的には感じてますね
特にサビの「連れてって」の部分に関しては何故か聴いてるとちょっと切ない気持ちになります。
何かのテーマソングにしても構わないくらい生のエネルギーに満ちている曲ですね
この曲は初めて聴いた時のリピート率が一番高かった(笑


と、そんな風に「変態」も「名曲」も「多様性に貢献するナンバー」も9曲と言う多くない曲数の中で
しっかりバランスを考えて詰め込まれている手さばきに関してはやっぱりスゴイなあ、と
遠回りして来ましたけど、要するにただ単純に良い曲詰まってます!という正しいアルバムなんですよね
これを聴けばMONOBRIGHTの記名性、音楽愛、メロディメイカーとしての質の高さ分かるかと
今回も今回で傑作だとはっきりと思える、そんな新作でした。
ポップでマニアックでユニークなアルバムです。















良い曲は多いんですが、個人的に推したいのは「空中YOU WAY」「youth」「OYOVIDENAI」「アイドル」
同じ週に発売されたbloodthirsty butchersのアルバムとタイトルが同じ曲が入っているというのが
彼らを敬愛し一緒にツアーも回った事を考えるとドラマチックでなんか良いです
あと「トライアングリー」はなんとなくCASCADEっぽくもあるな、と 余談ですが。

これを引っさげた記念ライブは今のところ来年三月のZepp Tokyoワンマンだけですね
でもホントにMONOBRIGHTの良さがコンパクトに凝縮されてる作品なので是非ツアーもやって欲しいな
「OYOVIDENAI」は特にライブで堪能してみたい曲です(笑)。



ブッチャーズの新しいトリビュート盤に関して

2013-11-22 14:20:09 | 音楽















面子見て涙出そうになった。










http://natalie.mu/music/news/104106
個人的に「今の中堅・若手中心でもう一回トリビュート出ないかな」って思ってたら
本当に出るんだからよくやった!というものである
音は純粋に楽しみなんですが
別にブッチャーズ本家と比べてどう~なんて方面では期待していない
それはきっとどのバンドでも同じだと思うし、そうじゃなくそれぞれの想いが伝わってくる事
影響を受けたと公言している数々のバンドがブッチャーズの為に音を鳴らしてくれる事に価値がある
しかも、個人的に大好きなバンド、人ばっかりなのがこれまた嬉しいところで。

面子もまた客観的に考えても凄い
ロックフェスやワンマンで大勢を集めるバンドから
インディーズ方面で高い評価を叩き出しているバンドまで実に豊富なラインナップ
これを見ればいかに「ミュージシャンズ・ミュージシャン」であった事が分かるし証明になっていると思う
だって所謂「バンド好き」なら大抵聞いた事はあるんじゃないか、ってバンドが多いしね。
何より私が普段聴いているようなバンドばかりである
これでテンションが上がらない方がおかしいし、
政治的理由で詰め込まれたであろう面子が一組も存在しないと感じられる誠実さもまた好みである。


このトリビュートの何が良いか、って生前に関わりがあったバンドばかりで構成されていること
ブッチャーズの影響を公言してきたバンド、対バンをしてきたバンドばかりで構成されていることですね
正直このラインナップ自体がブッチャーズが歩み続けてきた歴史の証明にもなっていると思う
要するにかなりの「愛」を感じる面子だなあ・・・ってのが言いたい訳ですけども。

選曲も良いですよね
ちゃんと「荒野二オケル~」「birdy」「ギタリストを~」「無題」、新作からも入ってるし
まんべんなく選ばれてるのは全作品傑作だと思ってる私にとっては都合が良い(笑
欲を言えば「yamane」から一曲欲しかったけど、
まあ今後シリーズ化されるらしいので後の期待としてとっておきます
あのアルバムもすっげえ名盤だと思ってますからね。

私が日々応援しているバンド勢が多く入っているのが大きいですが
LOST IN TIMEは度々ソロ弾き語りでやっている「9月」、ズバリ「Lost In Time」ではないんですね(笑
でもブッチャーズの曲名からバンド名を掲げている貴重なバンドなので参加は絶対だと思ってた
それに元々吉村さんが「海北の9月聴きたい」ってツイートしてましたしね。
近年親交を深めていたLOSTAGEは今ブッチャーズ吉村さんの影響で出来た新曲「GOOD LUCK」を
ライブでちょくちょく演奏しているのでかなり熱の籠もったものになってそうです
期待通りの参加に安心しました。

THE NOVEMBERSは、「11月」って・・・。そのまんまで吹きました(笑)。でもピッタリだね。
しかしAXワンマンに参加した時に小林祐介がMCで影響を受けたバンドの一つとして名前を挙げてたので
個人的に参加は嬉しいし本当に私が敬愛しているバンドに好かれてたバンドなんだなあ、と
中学生の頃から聴いているリスナーとしては胸が熱くなりますね。

MONOBRIGHTの「サラバ世界君主」、cinema staffの「僕達の疾走」も絶妙な選曲
というか相当似合いそうですね(後者もまた吉村さんのリクエスト)。
モノブライトは去年一緒にツアーをやったり音源に参加してたり交流が多かった
シネマも行けなかったんだけどシェルターで待望の2マンやってたり確かに交流があったバンド。


ACIDMANも実は昔インタビューで吉村さんと熱く語り合った、って記述があったし
the pillowsは同郷で対談も行った事のあるバンド(しかも「散文とブルース」ってこれまた似合いそう)
昔一緒にツアーを行ったバンアパ、そして向井秀徳もきちんと入っているし
人脈の深さをまじまじと感じられるラインナップ
NUMBER GIRLで「プールサイド」カバーやってたのも良い思い出ですね
ライブ音源として前にリリースされたのは未だにちょくちょく引っ張り出して聴くほどの出来です。

CARDやClimb The Mindも以前対バンした相手ですし
初期にブッチャーズに参加していた経歴のあるメンバーも在籍している怒髪天
ビークル時代から吉村さんを尊敬する発言や交流をしていた日高さん率いるスターベムズに
ブラフマン、ハスキン、いっちゃんとAIR JAM世代のバンドも入っている完璧さ
ロマンポルシェ。の存在も納得ですし
これは良い具合に愛情を感じられるトリビュートになるんじゃないかな、と
前述のように「選出された」というよりは「人脈」といった感じのラインナップになってるので
今までブッチャーズを追いかけてきた人的にも納得してくれるのではないかと思ってます

インタビューなどで「ブッチャーズからの影響が~」「吉村さんと~」って
一度は話しているのを聴いた事のある人たちが集まってるのが何より素敵な面子ですね
要は普段から話に挙げるような、何も無い時でも話のネタにする人達が集まってるのがイイって事です。
死んでから云々~、ではなくね。











余談ですがTHE NOVEMBERSはトリビュートに参加した曲でも、
普段の持ち曲のように自分達の新しい披露曲としてライブで演奏するバンドですから
その点でも生で聴けるのに期待しちゃいますね LOSTAGEは既に演奏したらしいですが!
それもまた聴きたいなあ。

ともかく、LOSTAGE、LOST IN TIME、THE NOVEMBERS、MONOBRIGHTと
近年私が推しているバンドが多く集まってるのは流石に胸が熱くなりましたし
向井秀徳、怒髪天、the pillowsなど昔からの盟友が揃ってるのもバランス的に良かったと思う
今から発売が楽しみです・・・って
普段こういう記述は滅多にしないんですが今回のは流石に何か書きたくなってしまいましたね
だって本当にブッチャーズと何らかの関わりが確認されてたバンドばかりでこの豪華さ実現ですから。

吉村さんはいなくなってしまったけど、
吉村さんに影響を受けた方々が彼の凄さをこうやって証明してくれる
活躍していくことで結果的に吉村さんの存在が消えずに済む、生き続けるという感覚。
まだまだ吉村さん、そしてブッチャーズの足跡が途絶えない事に期待してます。