超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

俺の妹がこんなに可愛いわけがない 3巻/伏見つかさ

2011-09-01 05:27:12 | 俺の妹がこんなに可愛いわけがない






今回ので残すは後4冊分か。感じるところの多い作品なので、新刊までに書き終えれるかどうか、
は分からないけど何とか自分なりに咀嚼して行ければ。
って訳で「俺妹」3巻の感想です!


今回は完全に京介の巻ですね。
彼が抱える妹からの劣等感だったり、そこからの脱却だったり、
新たなる目覚めだったり・・・。それが上手い具合に、分かり易く描かれています。
彼自身の感情の変遷の物語でもあるんですけど
桐乃の真剣さによって
周りの人物も色々と変化していってるようです。というか、巻数を重ねる毎に桐乃のスペック上昇というか
評価の高まり具合が半端ではありません。正に文字通りのスーパーヒロインですね。凄い。

今回は原作とアニメで違う点が多々あるので、これから原作を読まれる方や
逆にこれからアニメを観られる方はネタバレ注意です。
では以下つらつらと。






冒頭の桐乃と黒猫のケンカ騒ぎなんですけど、
お互いにストイックというか何と言うか・・・普通あそこまで真剣に読まないでしょ。
それを読むって事は、そうまでして分かり合いたいって気持ちの表れ。
何だかんだいってお互い好き合ってるんでしょうね。
だって言ってしまえば、両方にとって素の自分を出せる相手って事実には間違いないでしょう。
だからこそ桐乃もマスケラのソフトまで買って・・・
ってこれ自体相当の事なんですけどね。
友達の趣味を理解する為とはいえ、わざわざソフトなんて買うでしょうか。しかも守備範囲外のを。
そこに桐乃の真面目な一面が表れているんですが、
設定資料集を読み込んで
分厚い難解な二次創作の小説を読破する・・・これってもうある程度好きって事になりませんか?
本当にダメならば途中で読むのを止めているハズ。
恐らくですけど、互いに互いの才能を認めた上で
切磋琢磨し合ってるというか
なんとなくそんな雰囲気を感じました。要はどっちが上か競っていると。
それって完全に友達同士が、親友同士でするような行為であって
その時点で多分尊重しあってる面はあるんだと思う。
じゃなきゃ、わざわざ自分の趣味じゃない小説なんて読まないし、逆に読んだからこそ
対抗心が煽られるって言うか、まあ互いを小説の中で酷い目に遭わせてたのはともかく、ね?(笑)。
まあ要するに彼女たちなりに友達付き合いには真剣だっていう証拠なんですよ。
真剣が過ぎて互いにぶつかり合ってるだけの話。

こっからが重要な話になっていくんですけど
桐乃に関して言えば
やってること全てが本気というか、決して片手間でやってる訳じゃないんです。
確かに未経験の駆け出しが注目されるっていうのは
傍目から見てると悔しいもんですけど
モデルの仕事も本気でやって、友達付き合いも大切にして、趣味に対しても本気で取り組んで
かつ長年滞っていた兄貴との関係も自分から動いて結果的に溶かして・・・
と桐乃は自分の身の回りのありとあらゆる事に対して
一切の手抜きも
妥協もしてこなかった訳で、わがままに振舞っているように見えて
ちゃんと自分のやるべきことはやっている
それは今回のケータイ小説云々に関してもそうで、多分桐乃よりも黒猫の方が評価が低いっていうのは
恐らく桐乃自身の人生経験の豊富さがもたらしたものだとも思ったんですね。
だから、取材もビックリするほど真剣にやってて自分を追い込む程の努力を見せてましたが
それ以前に培ってきた経験の違いというか
色々な事を達成して来て、掴んできて感性が豊かになってきている、っていうのかな。
そういう要素も多分あったと思います。だから黒猫さんの作品が面白くなるのはこれからなのでは?とも思う。
ついでに桐乃は個人的予測で、京介に対して抱いてる想いもあるだろうから
それも反映されたのでは、って思ってるんですけどね。
そこの感情が込められたのも大きいと思う。
 私が桐乃の事を大好きっていうのは、そんな何に対しても向き合って取り組む姿勢っていうか
それでいて器用貧乏で回り道をしちゃういじらしさ、っていうか。
勿論時折見せる甘い部分に惹かれてる所もありますが(笑)。
まあ要は逃げてない、って事なんですけど。


京介が何故桐乃から離れていったのか?っていうと
そんな長年のルサンチマンが降り積もった状態、っていうか
桐乃に嫌われていたっていうよりは
自ら避けてたって言うのが恐らく正解なんだと思います。そんな相手に普通優しくはしないでしょ。
その理由が、桐乃が何でも出来てしまう
妹ばっかり褒められる、って
そんなコンプレックスからだったんですけど、京介は桐乃が自らの色々を犠牲にしてまで
楽しみややりたい事を抜きにしてまで頑張ってた
そんなストイックな姿勢に気付くわけです。
何でも出来る、っていうのは半分間違いで、何でも出来るように努力していた、っていうのが
本当のところなんだと思います。
そんな事実に気付いたからか、今まで積極的に関わらなかった妹の、桐乃のピンチに
助け舟を自ら出した・・・それはある種の贖罪だったのかもしれませんが
桐乃っていう存在から逃げ続けていた事は間違いない。
何やかんや理由付けてたけど
彼が本当に嫌いだったのは、桐乃ではなくて、桐乃をみて頑張れない自分自身だった。
ようやっとその事実に気付けた所で、逃げなかった所で
オチが「最後の人生相談」って!
という気になる引きにはなってるんですけど、ようやく自分の気持ちに素直になれたのは大きな収穫ですよね。
っていうか、本音を言うと京介自身も桐乃を大きく意識してる部分はありますよね。
取材のラブホシーンではドキドキしまくりだし
身体が密着すれば過剰に意識
極めつけは桐乃をモデルにした小説で、そのモデルキャラが作中の彼氏とくっつくと
それに対して嫉妬するような感情・・・これはそろそろ極まってくる段階ですね。

ちなみに、桐乃の方は安定して京介の事を気に掛けてると思うんです。
だって、逐一付いてきてもらったり、
取材とは言え擬似デートだったり
ケータイ小説について逐一話すのが京介だったり・・・個人的に一番グッと来たのは
「あたしの場合、恋愛対象になるのはせいぜい高二くらいから」ってセリフ。
これって何気に京介と同じ学年なんですよ。
そう考えると、そういう意味も含まれてるような気がしないでもない。
無意識に兄と同じ年代を口走ってしまった感がある。それもまあ、後々の話って事で。


ここからは、そんな桐乃の為に、
桐乃が見過ごした盗作されたって事実を
京介が許さずに出版社に乗り込んだって話の件について。
これをきっかけに京介が自分の本心に気付いて、いままで劣等感で避けていた妹に
「ごめんな。」ってセリフを話すっていう重大イベントがあるんですけど
これってアニメでは丸々違う話になってるんですね。
っていうのを約1年前アニメの感想を書いてた時に指摘された訳ですが(笑)。
これは、はっきりいって面白かったです。
あのキャラがああいう事すんのかー、とか
構造とか目的は同じで
全然違う事やってる訳だから、色々と器用なもんだな、とも感じた訳なんですけど。
これに関してはね、
やっぱりフェイトさんが悪いと言わざるを得ない。だってそれは盗作って事実以上に
それより先のお話を書く能力がないって時点で
更に自分の身を削るって事実に気付いてない。気付いてたとしても
やっぱり刹那的な一時逃れに過ぎないですよね。他人のふんどしで相撲とっても面白くないっていうか
金目当てとか愉快犯じゃなくて、今まで10年も真剣に頑張ってきたからこそ
それまでの自分の頑張りを無駄にすべきじゃない―
そんな話の流れになったのは感心しました。
第一それで嬉しい気分になるかってのも微妙ですよね。だって自分がやった事でもないし
本来自分が書きたかった事でもなんでもない
金目当て愉快犯とは違って、本当に真剣に頑張ってる人な訳ですから。
って考えるとこの出来事って何気にフェイトさん自身も道を誤らずに済んだ、って事で
黒猫さんも京介くんも本当に頑張って掴んだ結末なんだな、って思って嬉しくなる。
それで感謝されないってのは当然の話で
何しろ口に出してないですからね。
この部分、もし事実が伝わってたならどうなってたんだろう・・・?って想像する部分も大きいんですが
結局のところ感謝とか褒めてもらうとか、そういう事よりも
自分の本当の気持ちを確認出来た、っていう事実が彼彼女らにとっては重要だったんでしょうね。
これをきっかけに黒猫さんもまた京介の持つ魅力に気付いてしまったようですが。
この要素もまた今後の展開に於いては重要ですよね。素顔を見せた黒猫さんは確かに魅力的で
ここでもまた気持ちがグラつかされました(笑)。
って事で続きは4巻の感想で。






しっかし、書くことが多すぎて、非常に長いですね。毎回毎回。
小説だと内容詰め込んであるので
これぐらいの分量でないと、書きたい事が書ききれません。でもいっぱい考える事あって
その点では本当に面白い作品ですね。
何より誰よりも必死に頑張ってる桐乃というヒロインの存在感がやはりピカイチです。
そしてマスケラのDVDジャケットの男が京介に激似なのが裏表紙を見る度に気になりました(笑)。
しかしこうして見ると京介ってやっぱ格好良いですね。
という事も中身含めて改めて感じた一冊でした。

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