超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

the band apart「Scent Of August」 全曲レビュー

2011-12-19 04:52:45 | 音楽(全曲レビュー)





どんどん続きますよ。今回はthe band apartの「Scent Of August」です。



このアルバムは、割りと今までのバンアパになかった要素を取り入れつつも
聴いた時の感触はきちんとバンアパ、っていう
中堅バンドの見本的作品と言いますか
ボリュームもたっぷりあるしで深く広く彼らの表現を楽しめるアルバムになっていると思います。
最早パンクメロコア系のカテゴリーから出てきたとは思えないくらい多彩な表情やアンサンブルは
ますますバンアパならではの記名性を強く高めていて好印象、
正に傑作という形容が相応しいアルバムでした。
何気に未だにヘビロテ中ですね。表情が豊かなアルバムは聴いてて楽しい。では以下。




1.Photograph

正にバンアパ節!とも言うべき王道のメロディーライン、バンドアンサンブル。
ファンなら納得
ご新規には新鮮、と言った感じの入り口にはふさわしいキラーチューンになってます。
疾走感こそないものの、メロの強さやサビの部分の絶妙なアクセント等
今までと違う角度からのキラーチューンといいますか
ベテランならではの味が光る一曲になってます。
ミドルテンポでもキャッチーさをアピール出来るのは進化を感じますね。



2.Game,Mom,Erase,Fuck,Sleep

ここでいつも通りのテンポのグッドメロディを投入、
「fool proof」を今風にブラッシュアップしました、って感じの
既存の曲を踏襲して作ってる感覚がまた昔からのファンとしてはニヤリとさせられる一曲。
適度に踊れて適度にアップテンポなのに
どこかカフェで流れてそうなオシャレさとの融合がやっぱりツボです。



3.AG(skit)

このアルバムは曲数が多いので間にインタールード的な曲が挟まれています。
でも単なるインタールードではなく
単体で聴いても結構気持ち良いんですよね。女性の声も彼らの音には往々にして似合いますね。


4.light in the city

これまで割とテクニシャンな曲が続いてましたが
ここでストレートな一発が届きました。
とはいっても
レーザーガンみたいにガンガン打ち抜くような激しいアンサンブルには
ストレートと一言では形容出来ない迫力を感じるのですが。
そういった意味で
真っ直ぐであり、捻じ曲がった部分もあり。そのさじ加減が絶妙に思える一曲です。

詞の内容は純粋無垢な欲求の歌で、その比例する感触もまた気持ち良い。



5.Azure

バンアパっぽくない神妙なテイストが癖になる一曲。
重ねた楽器の音色と
しとやかに歌われるボーカルにウットリしつつ
その実歌われているのは重いメッセージ・ソング。
衝突も不意に来る痛みも
伝わらない思いも
あるのが当然、大事なのはそれを踏まえてどう行動するか
闇に落ちるか光に当たるか。
シンプルではある言葉ですけど、そこに至るまでの過程が丁寧なので
素直に耳を傾ける事が出来る様な・・・そんな一曲でもあります。
珍しいタイプの楽曲ですね。



6.FUCK THEM ALL

攻撃的なタイトルと歌詞とは裏腹にメロディはポップでアレンジはミニマムで・・・
とその真逆の内容が実に面白い作りだなあ、と思う一曲。
でもこういうくたばれ、嫌いだみたいな感情は
誰にでもあるものだから
ある意味表立って言ってくれてるだけありがたい。

【君の声を聞くのはもう飽き飽きだってこと わからないのかな
 だけど君の無邪気なその笑顔を   羨ましくも思うんだ】

こういう感情は何気に良く分かる。
同時に誰かにもこういう思いをさせてたのかな、とも
ふと考えてしまったりもする今日この頃です。



7.Source K(skit)

これも前述の通りインタールード的なショートソング。
前作の「July」のエッセンスを含むメロディにここでもまたニヤリと。
こういう過去から地続きな感じがこのアルバムは優れてると思う。



8.Taipei 台北

タイトルが新境地ですね。
これもポップで可愛いメロディの曲になってるんですが
途中でまったく別の楽曲に変化する
そのプログレっぽさが実に面白い楽曲です。
口ずさみやすくもあるし
何気に今作の中でも最も聴きやすい曲かもしれない。



9.Bind

この曲は非常に格好良いですねえ。メロディが洗練されてるっていうか
歌謡曲ファンにも通用するんじゃないか、って思えるくらい
馴染みの良いムーディなサウンド
ドラマ主題歌にも使えそうなくらい独特の雰囲気が優れている楽曲です。シングル向けっていうか
多少妖艶な感じもしますし、これもまた今までにはなかったテイストの気がする。
ムーディ且つ格好良い系っていうか。そして踊れます。

【責めるべき相手はどこにもいない 最後まで続けなければならない】

これもまた真理のような気がします。
自分の中では。



10.Rays Of Gravity

変化球の多いアルバムなだけに、ちょうど来て欲しいところに直球が来た!というか
相変わらず聴き手を誘う手さばきの良さに感心しつつ(笑)。
前述の「light in the~」以上にストレートで分かりやすいメロディ、キッズも納得と言った感じの
バンド感、疾走感でカタルシスをたっぷり与える感じの即効性の高い楽曲に仕上がってます。
曲としては「light~」の方がオルタナ感あって優れてるとは思いますが
シンプルの良さもこれはこれで、ね。



11.Karma Picnic

何気にめちゃくちゃ好きな曲です。
この曲も完全なる変化球なんですが、メロディがヘロヘロなんですよ。
つかみ所がないといいますか
ヘンテコな感触のサビとコーラスワークなのに
その捻じ曲がった感触が異様に楽しい、っていう。こういう脱力系の良さ、みたいなのを
まさかバンアパで聴けるとは思わなかった。
詞の内容も鉄板で
きっと隠れた名曲ポジションの楽曲だろうな、って思います。


【ええと 最終的に信じられるものは何もなかったよ】

歌い出しからしてシンパシーが・・・。



12.WHITE

このアルバムにはバラッドがあんまりないんですが
唯一の?バラッドかな。
しかし、それも途中までで加速するアンサンブルの力強さに圧倒されつつ
結局は高速のパンクナンバーに変わってる、っていう
これはこれで不思議な曲ですね。
でもこういう途中から全然違う曲調に変わるってアイディアは割と好きだったりもする。



13.1000 light years

普通に爽やかで、聴きやすい一曲です。
改めて聴き返して思ってたんですが
このアルバムは何気に爽やかさよりもオルタナティヴ感やムーディな要素のが強いので
そこを補う為に作られた楽曲なんじゃないかな~って個人的には思ってます。



14.Stay Up Late

これまでアルバムの最後は割と短い時間の中でキッチリ聴かす曲が多かったように思えるのですが
この曲は、っていうか前作もそうですけど普通に尺のあるメロディアスな曲を配置するようになってますね。
前作はバラッドが目立つアルバムで
今作はバンアパ随一のボリュームのアルバムなので
最後をポップソングで締める、っていう方向性はアルバムに合わせてるようで好印象です。
このアルバムのテーマが悩みぬいて壁を越える、って
そんなテーマにも思えるので
そういうシリアスなアルバムの最後には相応しいポップ且つ意志の光る出色のナンバーという印象ですね。




当時の感想でも書きましたが
変り種の多いアルバムでもあるので
若干飲み込みは苦労したんですが
今はもう堂々と
新要素を飲み込んでものにして提示したバンアパの新境地、って個人的には断言出来ます。
独特のエッセンス漂うアルバムではあるんですが
その奥深さを理解出来たとき
このアルバムの価値はグッとその人の中で上がるんじゃないかなあ・・・と。
そんなある種の無敵感も含んだ現在進行形の成果がこれですね。
気付いたら好きな曲ばっかになってた、
そんなアルバムでもあります。





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