超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

Syrup16g全曲レビューその39「実弾」

2011-11-24 21:53:30 | Syrup16g全曲レビュー





Syrup16g全曲レビューその39は「実弾」です。これで一応第3部終了、って区切りを付けます。





実弾           アルバム「Mouth to Mouse」収録





「やっかいなことばっかりさ
 やる気は失せていくばっかりさ
 それでいい
 そのままでいい
 苦しまぎれで進もう
 他にやることないじゃん」

悲しいくらい身も蓋もない歌詞ですね。
ありのまんまのリアルと、ありのまんまの感情。
そこには楽観も達観も、都合の良い解釈も存在せず、ただただ感じた事の全てが放り込まれています。
フェイクやドラマ性は皆無ですが、その分現実をしっかり生きよう、
ボロボロのまんまで歩いていこう、と。
そんな風に決意させるような言葉が並んでいて
やはり選ぶならこういう嘘のない表現だよな、って思わせられる内容で。

同時にこの曲は、一種のドラッグ感があるといいますか
ちょっとトチ狂ったようなテンションなんですよね。残念無念を極めて
逆に面白くなってきてしまった状態っていうか
ここまでネガティヴで
神経がヘコんでると
むしろ笑えてきちゃう、っていうか、ここから挽回してやろうじゃねえか、と。
そんなある種の開き直り感と共に
鳴らされるのは歌詞の内容と比例して、ゴージャス感のあるピカピカのロックンロール。
磨かれたメロディに
ベースサウンドの格好良さ、
小気味良いアンサンブルと正にそんな一周回って元気になった時にはうってつけの、サウンドに関しても
徹底的に開かれたものになっていて
歌詞の為の音、音の為の歌詞と両者の合致感が半端ではない後期の名曲の一つです。
そこはかとなく漂うダークなエッセンスもまた個人的には好みで。


「大切なものは悲しい程モロい
 失えばなんだって美しい」

大事に大事に握り締めたものほど
一瞬にして失ってしまう
それを人間は無用に美化してしまう生き物。だけど、客観的に考えてみると
そこに美しさや儚さなんてものはなく
ただただ愚かなだけ
無力だった己の悔しさ、悲しみしか残らない。そればっかが気付けば降り積もっていく。
そんな現状にうんざりしつつも、

「泣いてやろうぜ この不確かさに」

と、そんな失った形へ向けての餞の言葉を贈る。
本当にはっきりした物事や
輪郭なんて
絶対に存在しないと断言しても良い、常に出口のないトンネルを彷徨ってるみたいなものですけど
じゃあそこで頑張れ負けるなとむやみやたらに後ろから押すのではなく
そんな頑張って失くした日々に対して
まずは、
この世界の残酷さを確認して、そんな辛さを認めてあげる、と。こういう音楽ってあるようで、あまりない。
誰もが見ない振りばっかしてるように思えるけど、この世界はそんなに素晴らしくは出来てない。
でも、だからこそ

【退屈な毎日に殺されていく やられる前にやれ】

そんな現状を認めた上で、
そんな世界に殺されるな、と発破の声を掛ける。
日々の繰り返し
感情の繰り返しに
いつしか苛まれて、同じ地点をずっとぐるぐる、そんな己の心、感情に
取り付かれて動けなくなる前に
自分から動け
自分から行動を起こす必要がある。

「実弾 にぎりしめてちゃ撃てない」

妄想や願ってるだけなら誰にでも出来る。そこで気分が良くなっても所詮はまやかしに過ぎない、
そうじゃなくて、その手に握り締めている何かを
その地点から
バーッと放って、少しでも意義のある抵抗をしよう、と。ここまでは個人的に歌詞読んでて感じた事ですが
人によってはこれを五十嵐隆自身の事柄を歌ってるようにも聴こえると思います。
でもだからこそ
個人のリアルな心情を歌ってるからこそ
逆にウソがなくて生々しく、ダイレクトに響く感覚はきっとあると思います。
なまじ人の為に、って思ってないからこそ
説得力はその分増してますよね。
そんなシロップの中での最上級のアジテーション・ソング。最低の寝起きに聴くのが私的なオススメです。


【達成感なんているかそんなもの
 俺は死んだら完成なんだ   】

すぐに結果や変化を求めても仕方が無い、
分からないものは
きっと分からないままで全然良い
時間が経てば経験を積めば、きっと分かってくる事もあるんじゃない?
不完全でも
未完成でも
そのまんま、ありのまんまにもがき苦しむからこそ人間は人間らしい。
いつか精根尽き果ててくたばったとしても
そうやってあがけばあがいた数だけ、その人の人生が浮き彫りになるような・・・
そんな気もしています。
死して、何かをやってきた数だけ、その人の人生がそこで決まる。最終結果を生きている者から渡される。
だとしたら
実弾は多いほうが得ですよね?
何もやってなきゃ、結果すら出ない、っていうね。そんな歌だと思っています。





長くなりましたが、これで第3フェーズも終了です。もう2年以上やってる企画ですが、
ようやく39曲まで来る事が出来ました。
これも皆さんのお陰です。
という訳で、そんな曲たちを並べてみる。

第1
1.イマジン
2.Everything is Wonderful
3.途中の行方
4.Good-bye myself
5.もういいって
6.I.N.M
7.I (can't) change the world
8.さくら
9.Your eyes closed
10.手首
11.君を壊すのは
12.ハミングバード
13.You Say ‘No’

第2
14.もったいない
15.Sonic Disorder
16.Scene Through
17.Hell-see
18.負け犬
19.根ぐされ
20.ハピネス
21.ラファータ
22.前頭葉
23.パレード
24.キミのかほり
25.My Song

第3
26.パープルムカデ
27.これで終わり
28.バリで死す
29.I'm 劣性
30.不眠症
31.天才
32.タクシードライバー・ブラインドネス
33.I Hate Music
34.ローラーメット
35.吐く血
36.センチメンタル
37.エビセン
38.バナナの皮
39.実弾



こんな所です。アルバムなら3枚分って感じで、次からはいよいよゴールに向かっていく段階ですかね。
まあ、シロップは私の青春そのものと言っても過言ではないので
ライフワーク的に
何かを書き続けていくとは思いますけど・・・引き続き、興味のある方はよろしくお願いします。
ここまで一度でも見て下さった方、どうもありがとうございました。

ちなみに「実弾」は歌詞カードに「Nothing's gonna syrup us now」って言う副題が添えられてます。
その意味も含めて改めて聴いてみるとまた面白いかもしれません。




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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-11-27 23:19:59
毎回読んでますよー! これからも楽しく読ませていただきますー!
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それはありがたいですね (西京BOY)
2011-11-28 19:15:49
このレビューは毎回選曲含めて苦労して、でも楽しんでも書いてるので
それが読み手の方の楽しみに繋がるならば、とても光栄ですね。
これからも精進します。
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