超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ランクヘッド「[vivo]」 全曲レビュー

2011-12-18 19:55:42 | 音楽(全曲レビュー)






去年もそうだったのですが、年末に全曲レビュー集中させ過ぎな気がします。
あと2~3作品やってから今年のベストを選ぶ感じですかね。
10日ちょいで今年も終わりますけど
出来れば最後までよろしくお願いします!


今回はランクヘッドの「[vivo]」です。本当は一曲単位でやっても良かったんですが
当然の如く時期過ぎてる&今からやってたら終わる頃にはニューアルバム出てるという理由から
ここで一まとめにしてお送りすることにします。それでは以下。




1.狂った朝

一発目からインパクトの高いオルタナ・ソング。
ちょっとシンフォニックな響きも垣間見られるその神妙なサウンドは聴き心地が良いと同時に
残酷な現実をまざまざと思い知らされるような歌詞にもなってて
その対比が面白い曲で。
きれいなサウンドに醜い歌詞が重なり
そのコントラストがとても美しくも思える、そんな一曲でもある。
正に一曲目を飾るに相応しい曲調だと感じるので、スタートを切る一曲としても素晴らしい曲だと思います。
踏みにじられる側にも価値はある、と言いたげなフレーズが無性に優しく感じられます。



2.何も怖くなどなかった

先日ようやくライブで聴けました。
音源でもそうなんですが、イントロの部分が暴発し過ぎで色々と面白いです(笑)。
衝突事故でも起こったのかと思えるくらいの迫力から
一気に直線状に伸びるような真っ直ぐなギターロックのアンサンブルが
堪らなく気持ち良い、
疾走感溢れるという形容が非常に相応しいと思える一曲。
ただ、疾走感とはいっても爽やか、ってよりはむしろある種の攻撃的なエッセンスも含む
男らしい力強さが溢れているのがこの曲ならではの特徴ですね。過度にエネルギッシュな感覚が凄くて。
「誰も強くなどなかった」ってフレーズは聴いてると毎回グッと来ます。
アルバムを代表する一曲。



3.百日紅

これもまた半端なくエネルギッシュな一曲。
轟々と燃え上がる炎のような曲なんですけど
歌詞自体は結構にシリアスで
悲壮感も漂いつつ
でも最終的には悲しみや痛み、怒りを忘れずに連れ回して
その憤りを燃やして
自分の理想とする場所に辿り着ければいい、と強く願う切実な曲でもあります。
怒りや痛みに慣れないで、むしろそれを糧に生きていけ、と。
それで前に進めるのなら
それもまた正しい方法の一つなんだと思います。
怒りを原動力に
悲しみを肥やしに。
そのストレートなボーカルの熱量にもまた圧倒される曲ですね。



4.密室

誰にも気付かれず
誰にも気付いてもらう事も出来ず
ただ一人で終わっていく人間の歌です。
これは
メロディも極上だし演奏も良い線いってるんですが
それよりもなによりも
「密室」ってタイトルが最も秀逸だと思うんですよね。
誰も入ることの無い、
自分だけの部屋ならばそれはもう密室と同じ事だと。秀逸ですが切なくもある。
そんな何か出来るようで、何も出来ない気持ちを燃やし尽くすような激情のロック。

【誰にも言えない言葉が今日も この手を擦り抜けていく】



5.シンドローム

とてもユニークな詞であると同時に
すとんっていうのはSTONEとも掛けてると思うわけで
そんな簡単に落っこちて転がる人間の心情のメタファーとしては優れてるとも思うわけで。
ダンサブルで痛快に踊れる曲調でもあるんですが
同時に黒い感情、醜い感情、さっきまで笑ってたのにふとした事で一気に感情が落ちてしまう
そんな人間の脆弱さも歌われている曲なので、正に暗黒ディスコっていうか
シリアスに踊れる、って形容を地で行くような曲になっていると思います。
でも決して暗いだけの曲ではなくて
繋がりを必死に求める全体的な流れにもグッと来てしまうナンバーにもなっているかと。



6.誰も知らない

あの日悔しかった自分も
あの日泣いてしまった自分も
あの日嬉しくて笑った自分も
誰も知らない
自分の感情は自分でしか理解し得ない。
そこに寂しさを感じるのと同時に
それは絶対的なものでもあるわけで、
その感情は総て正しいんだよ、って。
誰にも知られなくても
誰にも伝わらなくても
確かにそこにあって、自分の中にあった感情たち。
に向けての餞のバラッド。
肯定するバラッド。

という風に自分は解釈してます。これもまたタイトルが秀逸ですなあ。



7.泥日

【無力なだけなら 白さなどこの手には要らない】

このフレーズが全てを物語っていますね。
生きる為には
きれいなことばっか
正しいことばっかでは生きていく事が出来ない
間違いを一度も犯さずに生きている人間などいない上に
間違いを本当に嫌って犯さない人間すらもいない
でも
それで守られてる命、感情、想いも確かに存在していて。

真っ白なままでは、無防備では生きていけないから
所々黒く染まった部分もあるけれど
それもまた致し方ない
それすらも認めて、自分の幸せの為、自分の光の為に前に進め、と。
自分の幸せを手放してまで笑えるような力がないのなら
どんな手を使ってでも守り生き抜け、と。
これもまた熱量の高い曲ですが
更にギターリフが凝ってて面白い曲でもありますね。差別化出来てる感じもします。



8.螺旋

本作の中でも随一にアッパーで激しい曲で
不協和音のようなサンサンブルノイズまみれの音楽の上で
縦横無尽に駆け抜ける歌、と
アグレッシヴにも程がある過度に暴力的なナンバーになっているんですが
そこに乗せられた言葉はただ「生きたい」と願うだけの、
それだけの事で。
それだけだから逆にグッと来てしまう。

【泣きたいくらいに私は知っている 誰もが生きたいと願っていた】



9.風の作り方を知っているか

で、この曲でそれまでの流れが極まった感じはしますね。
歌うというよりもがなって捲し立てるタイプの曲なんですが
途中からラウドロックみたいな音像になってきて
ここで一回果てて
最後に決着、みたいな。
男らしさのシンボルのような一曲。燃えます。



10.ゲノム

最後は壮大なバラッド。
ここに至るまでに痛み、苦しみ、悲しみ、迷い、怒り、その他諸々のペーソスを吐き出しつつも
それでも最終的には生きることを肯定する、
生きる為に生まれた事を肯定する。
する、っていうよりは
したい、って言葉の方が似合ってるか。
それでも生きたい、だからこそ生きたい、そんな生に対する強靭な執着心。が歌われていて
それまでの流れが徹底されているだけに感動も倍ってくらい
感情移入して聴ける一曲でもあります。
轟音ロックが多いアルバムだからこそ、最後はバラッドで一本締めみたいな感覚が個人的に好きですね。





このアルバムは、とても強烈なインパクトを残すアルバムであると同時に
前作「AT0M」の延長線上のような作品でもある訳で
普通延長線上って新しい事何もやってない訳だから、評価は前作よりも落ちるじゃないですか?
でもこのアルバムの凄い所は、延長線上なのに前作と同じレベルの感動があるっていう。
これは正直ビックリしましたね。
サウンドのタフさも作品を重ねる毎にグングン上がってて
今やイースタンやブッチャーズと並んでも違和感ないくらいの激情バンドになってきた感覚もします。
ポップなシングルを実験的に連発していた時期はどこへやら、
ようやく真髄を連発出来る季節になったんだなあ、と
古くからのリスナーとしても嬉しかった、そんな情熱滾る一作になっています。
ネガティヴな感情を燃やしてポジティヴに進む、って方法論は自分向けだなあとつくづく感じますね。傑作です。

「AT0M」全曲レビュー




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