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悲しい夜の向こう側へ

曽我部恵一BAND「曽我部恵一BAND」全曲レビューその10「胸いっぱいの愛」

2013-10-06 22:28:45 | 音楽(全曲レビュー)





















10.胸いっぱいの愛


















DMBQとかモーサムの「GREEN&GOLD」を彷彿させるくらいにバンド演奏の暴れっぷりが半端じゃない曲
なのに、不思議と・・・歌がスルスル入ってくるんですよね
ロックの乱暴で粋な部分と
メッセージ性が上手く融合出来ているというか
音はもう終始ガンガン鳴っててノリノリな気分になれるんだけど
その一方で思ってる事や感じてる事を中々口に出せない、出しても通じない歯痒さを感じさせる歌で
だからこそ暴れ回ってるようなアンサンブルにはある種丁度良くもあるんだなとも思う
そういう組み合わせによるマジックが生まれている歌という印象ですね
きっと繊細且つ毎日「なんだかなあ」って気持ちで生きている人には完璧に通じる曲だと思います
個人的にも胸のモヤモヤを晴らしてくれるような感覚があって大好きな一曲ですね。


そもそも、口をつぐむ、とはどういう事かと言うと
世間に於ける多数派や通念に適応出来ずに自分の中だけで抱え込む、という事です
「みんな分かり合える」と言いつつ適応出来る人と出来ない人とでは明らかに壁があり
その差を埋める事は非常に困難で
下らない自意識もまた当人を悩ませるポイントになる
本当に思ってる事は、他者にとっては理解が出来ない事だったりすると益々内に広がる苦しみは止められない
理屈等では解決出来る問題でもなく、当人の中で容赦なく拡大して心を蝕んでいく

でも、ただ単に蝕まれていくだけの歌ではありません
そうやって白く濁ってしまった感情になる前の感情だったり
マイナスな方向ばかりに目を向けがちだけど確かにあった嬉しい記憶や温もりに溢れた言葉達
それらを抱いて、思い出して、忘れずに歩いていけばある種の救いにもなり得る
振り返ってみればそんなに苦しく痛いだけの人生でもなかったはず
それは気休めでなく、事実としてね。

「胸いっぱいの愛を」、
傷付いて失った分だけ胸いっぱいの愛の記憶を。
今ここにある優しさを。そういうものを必死に想起しながらクタクタのまんま歩き続ける
それは「選択」ではなく「妥協」ではありますが
いつか心から「妥協」でなく「選択」だと断言する事が出来れば。
そこに辿り着くまでのお守りに変わるような一曲ですね。これもまた恐ろしくロックンロールな一曲かと。











「ぼくらはいつも口をつぐんじゃって」

自分が自ら「口をつぐんでるんじゃないか?」ってふと感じた時にこの曲を思い出して欲しい。
自己批判によって現状を省みて、そこから勇気を出して一歩踏み出す為の歌だと思います。





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