超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

おとぎ話「FAIRYTALE」 全曲レビュー

2010-03-30 02:11:34 | 音楽(全曲レビュー)


去年ブログ活動の一環として全曲レビューを始めて、一応コンスタント・・・ってほどでもないけど、
それでもコツコツとたま~に更新はしてまして。計10作品かな。
それを今年もやって行こうと思います。
今年もやって行こうというか、去年間に合わなかった分を既に今年いくつかやってるけどね(笑)。
 この企画は書くのにえらい時間が掛かりますが、やっぱりやってて楽しいので。

んで、今年の作品初の全曲レビューはおとぎ話の「FAIRYTALE」です。
この作品でようやくおとぎ話ってバンド名のイメージに近づいた、もしくはそれそのもののような、
そういう段階に到達したような手ごたえがあって
かつてのゴツゴツとした感触はなくなったものの
これはこれでバンドのパブリックイメージをキレイに再現しているようで、個人的にはとても好きなアルバムです。
聴いてると、なんだか素直になりたくなるような、そういうアルバムです。
そういう音楽です。
では以下。



1.WHITE SONG

リードトラック。PVも制作。

これはおとぎ話の中でも、非常にスタンダード感の強いナンバーで
CMソングとか何かのドラマのタイアップとか付けても全然いけるような
バンド史上最も開かれているような強力なポップ・チューンです。
ロックバンドっぽさはあんまりないんですが、その分ピュアでクリアで、純度の高いメロディが存分に聴けるので
そういう意味ではロックに頼ってない、裸一貫の曲、とも形容できるかも。

なんだか子供の頃に聴いた事があるのでは?とか思うような懐かしさたっぷりの歌とメロディ、
それのせいでどことなく黄昏時のセンチメンタルな気持ちをふと呼び起こされるような
情景とか記憶の中の風景をフラッシュバックさせてくれるような
そういう力を持った楽曲である、とも思います。
ザラついた気持ちを浄化してくれてるかのような有馬和樹の歌は、やっぱり絶品。
ということを改めて思い知らせてくれる一曲。



2.ファンファーレ

このアルバムってファンシーなテイストが増えたのと、若干童謡の要素も組み込んでいると感じるので
そこまでオルタナ、って雰囲気でもなくなってると思うんですが
そんな中でこの曲は正にオルタナ!って感じの、今までの要素を引き継いでいるような感覚のある曲です。
 とはいえ、メロディは本当に親しみやすくて、すぐ覚えられてすぐ歌う事が出来ると思います。
短い曲なので、流れを作るために用意された曲、という感じもする。
それにしてはとても良い曲ですね。



3.妖精

実質タイトルチューンであると同時に、アルバム随一のキラーチューン。
メロディがもの凄くポップなんですけど
サウンドは逆にロック、オルタナ色が強くて
そう考えるとおとぎ話の古今が垣間見れる曲という印象で
更に言うとこれまでの総まとめ的な感触も受けたりする曲です。

初期から考えると若干信じがたいんですが
この曲って凄く美しいというか、神々しいというか、めちゃめちゃ煌びやかに輝いていて。
その雰囲気に触れるだけでも私的にはとても堪らない曲。
こういう曲が出来るようになったのは、確実に進化の一つだと思います。



4.E.T.M

メロディがおとぎ話にしては新鮮な感じだなー、と思って聴いていたら
サビの部分で思いっきりおとぎ話っぽくなる、
そんなちょっと不思議な曲。
そういえば曲の構成もかなり独特だ。
サビが一回しかないところとか。 ちなみに、歌詞カード読めばタイトルの由来が分かります。


「間違いだらけの答え 僕に見せてくれないかい?」 ってフレーズが何か泣けてくるのも不思議。



5.コトバとコトバ

何というか、こういう曲を子供たちに聴かせてあげたいよね(笑)。
もう信じられないレベルの純粋さ。
というか、正直さ。
でも、歌ってる本人からすると多分こうなりたい!って理想を歌ってる感じだと思うし
その理想を歌ってる感じが非常に様になっているというか。
素敵な曲です。


「ぼくらの時代がくだらないことなんて とっくにわかってるさ」

そんな中で、知った風に嘆いてんじゃねえ!ってシニカルなメッセージも含まれていると感じて
そう感じれる部分も個人的には好きだったり。
ただ夢を歌ってるだけじゃないんだよ、っていう。



6,I LIKE SPORTS

これ途中まで何を歌ってるのかちょっと分からなかったんですが
要は自分だけの世界に閉じこもってないで
もう少し外の世界を見てみろ、ってことですよね。多分。
いきなり現実を突き付けられた感じで、こういう容赦のなさも好きだったり。

「ここに神はいないぜ!」

自分だけの都合の良い、傷付かない世界に閉じこもっていると、逆に内側からダメになっていくんですよね。
尚且つ「何回間違えても 失敗が今の僕達さ」と、
立ち向かう勇気を与えてくれるようなフレーズもあったりして。
負けを認めることも、また重要なんだなと。

ライブでは「世界がお前を~」の部分をコール&レスポンスしていて、ライブ向きの楽曲とも言えるのかも。



7.泣きだしそう

タイトルのまんまの曲。
ストレートになることを恐れてないような感覚がありますね。
それと同時に、
「泣きそうな景色を見るまでは死ねないや」
とある種の決意表明にも取れるような、メランコリックな曲調でありながら
実は胸の奥に秘めた強い意志を垣間見る事が出来る、そういう曲だと思います。



8.Superstar

これは逆にタイトルとはイメージが違っていて
人気者になったり、みんなにちやほやされていくのが怖い、不安を感じる、っていう
何一つ称える要素のない楽曲で
こういう切り口もあるのかー、と個人的に少々驚いた曲。
サビもいきなりガッとくるので、そういった意味でもインパクトの強い楽曲ですね。

感覚が麻痺していくのを恐れているというか
だからこそ「膝をすりむいた時 痛くて少しホッとした」って歌詞が出てくるのかと。
このまま自分が変わって行ってしまうのでは、っていう細かい感情も伝わってきて
アルバムの中で随一に感情的な浮き沈みが激しい、そういう曲だと思います。
ライブで聴いた時はもっと激しかったような気がする。



9.ハートのうた

この歌も子供たちに聴かせなくちゃ!(笑)
と、同時に純真さを忘れた大人たちにも聴かせたい楽曲ですね。

何かもう、メロディとアレンジだけでもすっごく素敵でウルウルきちゃうような曲なんですけど
歌詞読んだり歌聴いたりしてると凄く「頑張れ!」って言いたくなる曲というか
初々しいカップルの行方が描かれている曲なんですが
主に女性目線で、時々男性目線の歌詞が出てきて女性を励ます構図が個人的にツボ過ぎます。
なんかこういう気持ちが本来あるべきなんだよな・・・
とか、そういうことを言いたくなる曲です。
それは大人から見れば滑稽な事なのかもしれませんが。



10.こどものブギー

これもまた一つのタイトルチューンといっても良さそうですね。
歌詞の世界観がめちゃくちゃ夢見がち!!
 とはいえ現実を知らしめるような曲もちゃんと入ってるので
これはこれでアリかな、って思うのと
これも曲の構成が一風変わったものになっていて、
スタンダードを目指しつつもひねくれた部分も相変わらず持っているな、と
そう感じた曲でもあります。
今作の中では少々パンチが弱いので、単体で聴くよりも流れの中で聴いた方が良さそうな曲。



11.BOY'S BEAT

ちょっと久々のストレートなギターロック。
前作で言うところの「ファンクラブ」みたいな。でもそれよりもメロディ重視な感じ。

そう、このアルバムってどれも基本的にメロディとフワッとした雰囲気を重視してるような部分があって
勢いって部分は結構抑えていたりするんですけど
だからこそここでこういう曲が来るのは貴重というか、ライブでも重宝しそうな楽曲だなあ、と。
それでも、前述の通り勢いまかせにはせずに最低限のメロディラインの良さを尊重してる印象で
そう考えるとこの曲も「ファンファーレ」と同じく今までを引継ぎつつ、今作ならではの魅力がある感じです。

「遠回りしてきた僕らの近道を君に見せたいのだ」 って詞が何気に凄い素敵だと思う。



12.ロードムービー

とてもゆったりしたスローバラッド。
そしてスロウダンス出来るような、そこはかとないリズム感が漂っている曲でもある。
LOST IN TIMEの「サンカク」にも通じる雰囲気があるような。

「さびしい歌も かなしい夜も 抱きしめたから君と出逢った」って歌詞は
聴き手を励ますような力があると同時に
押し付けがましい形容詞からも完全に外れていて
上手いところ突くなあ、って思ったり。
多分本当の気持ちが反映されているんでしょうね。それが伝わる歌です。
 何となくボートを漕いでるイメージとかもあったり。



13.青春(naked)

去年のシングルから唯一収録された曲。
シングルよりもファンシー色強め、そして合唱のドリーミーさも増していたりと
シングル時よりも完全にアルバムに合わせて来たという印象で
キラキラさとかはこっちの方が往々にして強めであります。
「キーンコーンカーンコーン」の音色も終わり際には相応しい感じ。

この曲は昭和歌謡をそのまんまおとぎ話に取り込んだ印象で
でもまんまって訳ではなく
きちんとおとぎ話のフィルターに通していると思えるところがとても好きです。
 ただ、正直私はあのシングルだと「GALAXY」の方が好きだったんですけど
しかしこのアルバムには確かに「青春」の方が似合ってるな、って思うので
そういった意味じゃこの曲の収録と配置には納得しています。
 終着点としては、やっぱりこの曲がふさわしいかなと。





一曲一曲がすっごくポップに磨かれていて、
ロックバンドを賛辞する言葉としては不適切かもしれませんがキュートな要素も感じてたりして、
聴き終えた後、もしくは聴いてる最中であっても胸の奥が温かくなるような
誰かを大切にしたくなるような、
そういった聴き手に対して夢とか勇気とか希望とか、
そういうものを正しく託しているような、決して口だけの言葉で無いような、これらの要素が固まって
一つの作品としてまとまったような
とっても志の高い一枚として出来上がったな、と個人的には思います。
 このアルバムで遂におとぎ話だけのサウンドを確立した感じも受けているので
ここからどういう風に成長や進化を遂げていくのかも非常に楽しみだったり。

こういう聴き手に対して純粋な感情をもたらす音楽って、実はそんなに多くないと思うし
真っ直ぐに前を向けるようなアルバムになっていると思うから
このまま埋もれずにどんどんと受け入れられていって欲しいものです。
 演奏も随分シャキッとするようになったな、と。
ライブで聴く「ハートのうた」とかは、更に胸にキュンと来そうで今から期待ですね。



という訳で全曲レビューを終わります。
今年こそはコンスタントにやって行こうと思います!出来れば。





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