超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

海北大輔という男(前編)

2009-03-13 22:04:53 | 音楽
スーパーカップのキャラメル味が出たんですけど
むちゃくちゃ美味いですね。
スーパーカップはチョコ、抹茶、ミント、いちごと
派生で出したテイストが全てオリジナルのバニラに勝ってる気がして
もうバニラは1年くらい買ってません。個人的にですけどね。



LOST IN TIMEの新作「明日が聞こえる」。
これを聴いて改めて思ったのは海北大輔の歌は
弱った心に有り得ないくらい染みる、ということでした。
別に弱ってない時でも、内省的な詞世界とみずみずしいサウンドで
いろいろと感受性を刺激してくれるんですよ。

今日はそんなロストの「詞」にフォーカスを当てて
これまでのロストの歩みを振り返って行きたいと思います。
ちなみに前後編に分けます。
まずは02年~05年の総括です。


私が初めてLOST IN TIMEを知ったのはNHK-FMから流れてきた「花」でした。
まずメロディが飛びぬけてよかったのと、
既にデビュー作の時点から海北大輔の声はやさしさと後悔を
十二分に感じさせる奥深いものだったと思うのです。
まあ荒削りといえば荒削りだし、音は良いとはいえませんが
曲自体が完成されているので今でも普通に聴けますね。



ではまず「冬空と君の手」から。


「笑ってたのはもう昨日の事 今の僕に明日は見えない」(花)

「昨日の事」っていうのは後にセカンドアルバムのタイトルになるんですが、
もう一曲目の時点から言い知れぬ後悔を聴き手にぶつけてきてるのが
素直というか、逆にひねくれてるとも思えるというか。
この曲、サビのメロディがすごい伸びやかで気持ち良い曲なんですよ。
歌詞が後ろ向きなのがギャップで更に好きになりました。


「気が付けば僕の体は 大人という名の鎖で縛られて
 あの日のように無邪気に笑うことが出来ない」(翼)

これがデビュー作2曲目の歌詞です。
ブックレットには風呂の中でうなだれる海北大輔。
Syrup16gですらデビュー作にポジティブな曲も入れてたのに・・・。
この畳み掛けは今聴いても異様だなあ。
ロストはバンド名からそうだけど、
最初からやりたいことが明確だったんですよね。
後悔による自己叱咤と、時間の移ろいによる心境変化を歌うバンド。


「誰もが口々に言う ‘お前が間違ってるんだ’ って
 
 わかってるんだよ
 わかってるんだよ
 
 それでも僕には何一つ変えられない」(失敗)

曲調的にはストレートでアップテンポなギターロックなんですけど
歌詞は相当に打ちのめされています。
「お前が間違ってるんだ」の部分は迫力があって
本当に責められているかのような気持ちになれます。


「君に何も言えないのは 汚れきった言葉しか知らないから
 
 僕が今も泣いているのは 濁りきった明日しか見えないから」(通り雨)

これまた凄い歌詞だなあ・・・。
本当にこの人、この後失踪でもしちゃうんじゃないかと思うくらい。
これが単なる嘆きに聴こえないのはやっぱり
海北独特の歌い方による賜物なんですよ。前に進むための内省、です。

このアルバムにはこういった自己否定的な歌詞が
フレッシュで力強いバンドサウンドによって縦横無尽に展開されています。
ちなみに「声」という曲は後々DVDの初回特典として
再レコーディングされてるんですが、
歌詞にテロ事件を髣髴させるワードが追加されてたのは印象的でした。


このアルバムの後、シングル「群青」をリリースします。
この「群青」に入っている「約束」という曲は
今でも彼らの代表曲になっています。アルバムには収録されていません。


「生まれた町の星空や光も 僕は忘れてしまうんだよ
 君が流した涙やその理由も いつか忘れてしまうんだよ」(約束)

これがまた極上のメロディで・・・。
ぶっちゃけ共感をさそうようなあざとい歌詞だったり
甘いラブソングにしとけば絶対に売れてたと思う。
そうしなかったのはLOST IN TIMEが表現欲求に素直なバンドだったからでしょう。


ここから時間が空いて、1枚だけシングルを切った後に
2年ぶりにアルバム「きのうのこと」をリリースしました。
これは彼らのアルバムの中では一番知名度のあるアルバムで
代表作といってもいい作品になってます。


「悲しい事が悲しい訳じゃなくて 悲しいと言えない事が悲しい」
(ココロノウタ)

これはよく言い当ててくれた!と当時感銘を受けた覚えがあります。
1人で立ち止まっている人の胸を射抜くような歌詞です。
曲自体はみずみずしいギターロック。イントロが凄くかっこいい。


「あの頃はよかったなんて言いたくはなかったのにな」(列車)

これは取り上げない訳にはいかないでしょう。
ファンの間では最も人気の高いフレーズなのではないでしょうか。
曲自体もどっしりとした重たい曲なので、益々ずしりと心に来ます。


「君の絶望を 僕は願ってしまったんだ」(悲しいうた)

他にも「いっそのこと僕が消えよか」ってフレーズがあったり
ロストの中では最も自暴自棄になった心情を表現してる曲だと思う。


「頑張り方を解らないまま 頑張っている君が好きで」(北風と太陽)

このアルバムのラストを飾る素朴なアコースティックソングなんですが
この冒頭の歌詞がいつ聴いても泣きそうになりますね。
なんというか、その光景がすぐにイメージできるいい歌詞です。


このアルバムから、希望と絶望を交差させた内容になっています。
ファーストのような絶望と失意の海で漂っているダウナーな音楽から
「ヒカリ」「やっといえた言葉」のような、
前に進む、というポジティブな意思表示が明確に見えてきて
バランス的にはこれが一番聴きやすい気がしますね。
サウンドの方向性も1番ポップです。

ただ「昨日の事」と「列車」はめちゃくちゃ重たい曲だけど。
この2曲は聴いてるとこみ上げてくるものが半端じゃないですね。
何気ない歌詞でも、声に凄まじい情念が籠もっていて圧巻。

「あなたは生きている」って曲ではコーラスに様々なバンドマンが
参加してるんですよ。元WRONG SCALEの野田剛とか
locofrankの面々とかHOLSTEINの3人、
BANDWAGONの池田啓介とか(一例)。豪華メンツだなあ。


この1年後に、大切な人との別れを歌った重要なシングル、「蛍」を発売。


「嘘みたいに無邪気だった頃 知らなかった想い
 今の僕はあの日描いた未来に 辿り着けただろうか」(蛍)

この曲、冒頭からシリアスな感じでサビでは
ゴスペル風のあたたかいメロディへと変化する曲なんですが
最後に「愛してる」って言葉が出てくるのがロストとしては新鮮です。
個人的にこの曲でストレートな言葉を堂々と歌った事で
意識的か無意識的に4枚目のアルバムに繋がった、と推測してます。
わかんないですけどね。多分。


この後、ロストの中では一番しっとりと洗練された「時計」に続きます。
で、この記事も明日に続きます。


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