ローズ・オニールという女性のかいたキューピーのお話。キューピーの生みの親である彼女はイラストレーター。若いうちに才能を見出され都会で活躍したのち、30代半ばで両親の住む田舎に移り住んで仕事を続けます。そのころに生まれたのがキューピー。1909年のことです。
この絵本には、何人ものキューピーが人間にいたずらを仕掛けたり、人間の真似をしたり、貧しい人にプレゼントしたり。とにかくいろんな人間が登場し~ホームレスもでてきます~、人間の社会に小さな波紋を起こします。
春のこと。花が咲いて鳥のさえずるいい季節なのに、一軒だけまるで冬のような家があります。お化けのでるうわさがあって、そこには誰も引っ越してこないのです。お化けはキューピーたちに愚痴ります。
「「おばけでいるってのはほんとにゆううつなことなんだけど、みんながわしの存在を信じているからしかたない」キューピーたちがなぐさめようとすると、「いいや、やめておきな。とにかくわしはみんなの予想通りおそろしくなくちゃいけないんだから」といいます。そしてほんとうにおそろしげなかっこうをして見せました。」
キューピーたちが彼に言いました。「ぼくたちは信じないよ!」。するとおばけは、「ああ、らくになった」と、つぶやいて消えていきました。こうしてこの家は生き返ります。
「家はすっかりみちがえるようになり、だれでも住みたくなるような明るい家になりました。みなさんのうちもあたたかでありますように」
わかりやすい簡単な文なのですが、含蓄があります。「みんなが信じるからおばけはいる」という合理的な考えを、アメリカの子供たちは幼いときからさりげなく聞かされるのでしょう。最後の一文がなかなかいい。第12章まであるのですが、いつも最後は作者の一言が添えられています。お母さんが子供に読んできかせたあと、一言いいたくなったといのための一文、という感じです。
1900年代初頭は「若草物語」の作られたちょっと後のころのようですが、あの小説で描かれるアメリカの中産階級の雰囲気がよく出ています。ほんわかする絵本でした。