(1)オミクロン変異株対策で岸田首相はいち早く外国人の「原則」入国禁止措置をとり、空港検疫でアフリカの外交官から国内初めてのオミクロン感染株が確認された。外国人の原則入国禁止に高官、外交官など公職者の入国特権が適用されれば、水際対策に漏れが出ることが懸念されて外国人の「一律」入国禁止とすべきだと書いたが、この「一律」入国禁止が日本人にも適用されることになって出張などで国外滞在の日本人が帰国できない騒ぎになって、政府はあわてて国際線予約の「一律」停止を急きょ撤回して日本人の帰国に配慮するとした。
(2)これには続きがあり、今度は帰国希望者が昨年12月に政府が感染対策のために取り決めた1日当たりの入国者総数の上限を超えることになり、政府はその日のうちに今度は再び日本人の帰国に待ったをかけるという二転三転のドタバタ混乱の対応となった。最後は岸田首相がその日の夜になって日本人の帰国需要に十分配慮することを国土交通省に指示をして落着した。
(3)感染症対策の厳格な水際対策は「原則」ではなく「一律」が基本で、特別、特例をどうするかの問題だ。政府の水際対策で外国人と日本人の対応への準備が十分に検討されないうちに国土交通省が独断で外国人も日本人も一律入国禁止(予約停止)という強い水際対策を空港、航空各社に指示したとされる。
(4)国土交通省が気をまわして原則、一律論の基本に沿ったのか真偽のほどはわからないが、政府が打ち出したのは外国人の原則入国禁止であり、さすがに日本人の帰国をシャットアウトするとなると年末、新年を控えて日本人の国外留め置きとなり、外国人と同様に考える必要はなかった。
(5)来年2月の北京冬季五輪、パラを控えてのオミクロン変異株の水際対策は五輪選考会を兼ねた大会の中止が相次いで、競技、選手によっては決められた五輪代表資格基準をクリアーできないことが現実的になり、関係者からは落胆も強い。
しかし、オミクロン変異株のこれまでより強い感染力の脅威が指摘されてやむを得ない水際対策の強化であり、時期が重なっての五輪代表選考基準の見直しなど対応するしかない。オミクロン株感染状況、動向によっては北京冬季五輪の開催も不透明になることが考えられる。
(6)いろいろ事情、都合は出てくるだろうが、オミクロン変異株はこれまでのコロナウイルスに比べて感染粒子スパイクが多く、感染力が強く、ワクチン効果を下げるともいわれて、国内感染を事前に阻止する警戒感を強めることは必要で、当面の不自由、規制、拘束は考えなければならない。
(7)政府は危機管理に当たっては指揮命令系統を明確にして、正しい情報(原則、一律論)、措置、対策、協力をわかりやすく伝えて、政府の使命である国民の安全を確保しなければならない。